第五十二話 決戦! 五条霊大橋
「酒呑童子よ。いつかは、お前とやり合う日が来るとわかっていた。嬉しく思うぞ」
「我輩も、貴様らをズタズタにする日を、どんなに待ち望んだことか」
「その言葉……そっくり返してやるぜ! バトルフォース展開! 輪入道よ、出番だ」
「ご指名頂き、嬉しきかな」
オレは輪入道を具現化し、バトルフォースを展開した。真琴に託したい所だが、少しは休ませてあげたい。それにここに来るまで、輪入道だって力をつけた。十分やりあえる筈だ。
輪入道 LV17 ランクC 特性 連続攻撃 炎に強い
HP225 MP45
攻撃力25
素早さ40
1 灼熱の炎
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 踏みつけ
6 怨念
「某もお手伝い申す」
阿吽の呼吸で義経も、輪入道に負けじと前へ出る。
義経 LV21 ランクB 特性 円明流
HP215 MP65
攻撃力53
素早さ62
スキル 『剣術』『弓術』『回復術』
「じいさん、酒呑童子のステータスを頼む」
「待っておれ。ほれ、頼んだぞ。ワシらは下がっとるからな」
「あぁ、任せておけ」
酒呑童子 LV20 ランクA 特性 ぶん取る
HP300 MP50
攻撃力60
素早さ20
スキル 『ぶん取る』
スキルに表示された"ぶん取る"が気掛かりだが、大したことない。九尾の狐と五分五分と言った所か。
「酒呑童子よ、それくらいの能力で、オレ達に勝てるとでも?」
「はぁぁ? 九尾の狐ごときに苦戦した分際で何を言う」
コイツ、イカれてやがる。いつまでもオレ達が、あの時のままの能力だと思ってんのか? デカイだけの能無し、出会った直後ビビった自分が情けない。
「義経よ、どうやらコイツは大したことないようだ。とっとと片付けるぞ!」
「そのようですね。それでは某から参ります」
義経は、いの一番に苔の生えた五条霊大橋を駆け抜け、聳え立つ酒呑童子の正面に詰め寄った。
「な、何だ!」
酒呑童子は、刀を抜かない義経に恐れをなし、状態を反らした。それを見た義経は、ニヤリと笑い姿を消した。実際の所、消えてはいない。後方に回り込んでいたのだ。
しかし、酒呑童子の十五の瞳にはそれが映らず、辺りをキョロキョロ見渡している。
「酒呑童子、ここだ!」
義経はそう言うと、鯉口をパンと叩くと、一瞬にして酒呑童子の脹ら脛を切り裂き72のダメージを与えた。――HP225/300――
膝丸の刃先さえ、肉眼で捉えることが出来ない早業。その抜刀術は更に磨きが掛かっていた。
「うぉぉ――っ! 何をしたと言うんだ!」
「済まない、あまりに無防備だったもので、脹ら脛を斬らせてもらった」
義経が酒呑童子にそう返すと、ワンテンポ遅れて傷口から血が吹き飛んだ。
「やれやれ……輪入道よ、お前も酒呑童子に恐怖を与えてやれ」
オレは待ち望んだ酒呑童子とのバトルに、ガッカリしながらDDを振った。出た目は1の灼熱の炎。
輪入道は体内に宿した炎を口から吐き出し、それを身に纏いながら増幅させた。狙うは十五の瞳。
輪入道は車輪で苔を蹴散らしながら、空へ飛び立つと、十五の瞳に灼熱の炎を撒き散らし65のダメージを与えた。――HP160/300――
「つぁぁ……己れ……己れ……我輩は黄泉の酒呑童子だ。こんな訳のわからん輩に負ける筈がない」
「能書きはいい……さっさと掛かって来い!」
義経がそう挑発すると、酒呑童子は腐り掛けた橋の手すりをもぎ取り、角材で義経を殴り付け60のダメージを与えた。――HP155/215――
「くっ……やれば出来るではないか。では、再び此方から参る」
義経は背中の弓を左手に持ち、空高く舞い上がると、空中で弦を引き絞り太股に向け矢を放った。矢は太股に深く突き刺さり、67のダメージを与えた。――HP93/300――
間髪置かずオレは、DDを振った。出た目は5の踏みつけ。
輪入道は、太股に刺さった矢を抜こうと中腰になっていた酒呑童子の背中に、全体重を掛けのし掛かった。酒呑童子に58のダメージを与えた。――HP35/300――
圧倒的な猛攻だ。次の酒呑童子の攻撃を喰らったとして、義経の攻撃で確実に仕留めることが出来る。
「ま、待ってくれ。我輩の負けだ。これからは心をいれかえよう」
「酒呑童子ともあろう者が、この期に及んで命乞いか? お前には恥も外聞もないのか?」
「…………」
酒呑童子はその巨体を前に倒し、オレ達にひれ伏した。何とも情けない画だ。
「どうする? 義経……」
「命乞いをする者に、止めを刺す趣味はありません」
「だとよ……とっとと失せろ!」
「ありがたい……ありがたい……お前達の甘さにな」
酒呑童子は突然立ち上がり、無防備な義経から薬草を奪いながら、角材で義経を殴り付け60のダメージを与えた。――HP95/215――
「呆れた……オレはお前のような奴が一番キライだ……」
「何とでも言え!」
もはや、倒す価値すらない。そう思った瞬間、橋の向こうから甲高い足駄の音が鳴り響いた。
やがてその足駄の主は、オレ達の目の前までやって来ると足を止めた。
酒呑童子程ではないが、身の丈六尺四寸(二メール近く)はあり、 白い五条袈裟を纏い、行人包で頭巾を被った大男だ。
「酒呑童子! ここから消えろ――っ!」
突然、その大男は声を張り上げた。酒呑童子は不敵な笑みを浮かべながら、去っていった。
「義経よ、久しぶりだな」
その言葉に驚きオレは、
「義経、知り合いか?」
と、尋ねた。すると義経は口角を上げながら、
「コイツが某の捜していた、西塔武蔵坊弁慶です」
と、述べた。
義経はオレに答えると、弁慶に近付いた。
「弁慶、無事だったのだな」
「義経、お前も無事で何よりだ」
「弁慶、それより酒呑童子を知っていたかのようだったが……」
義経がそう尋ねると、弁慶は一瞬険しい表情をした後、低い声で答えた。
「まあな。それより俺も連れてってくれよ」
「タクマ殿、弁慶がこう言っておりますが……」
「義経の知り合いだ。断る理由はない」
口ではそう答えたが、オレはこの弁慶と言う男を疑っていた。




