第四十九話 恐るべき邪魅の反撃
「お兄ちゃん! 邪魅の奴、攻撃を仕掛けて来ないよ」
「そのようだな。あれほどダメージを喰らって怒り狂ってるのに、妙だな……」
はっきり言って、気持ち悪い。こんな敵と出会ったのは始めてた。
「攻撃を仕掛けて来ないなんて、好都合ですな。さすれば某が、更に攻撃を仕掛けるまで」
義経は、意気揚々と邪魅に詰め寄る。邪魅は怒り狂いながらも、ただ義経の動きを目で追った。
義経は鯉口をなぞると、膝丸を鞘から引き抜いた。その間、僅かコンマ何秒かだ。
「邪魅、某はここに居るぞ」
義経は邪魅の胸元目掛け跳躍すると、強靭な肉体を斬り付け50のダメージを与えた。――HP585/860――
またしても飛び散る邪魅の肉片。腐敗した肉のような異臭を放ち、鼻につく。
「くっ……何て臭さだ。邪魅そのものが腐敗してるのか?」
「お兄ちゃん、何言ってるの? 全然臭くないし……」
「何だと?」
オレの嗅覚が可笑しいのか? いや、そんな筈はない。確かにヘドが出る程の異臭だ。
義経はというと……こっちも涼しい顔をしてやがる。一体どうなってんだ。
「お兄ちゃん、ご采配を。時間切れになっちゃう」
「そうだったな」
邪魅が何を企んでいるかわからないが、ダメージを与えるチャンスに違いはない。
オレは取り敢えずDDを振った。出た目は3の通常攻撃。
真琴は邪魅の股下を潜り抜け、背後から背骨に頭突きをした。見た目に華やかさはないが、48のダメージを与えた。――HP537/860――
「うが――っ! うが――っ! 小癪な……うぉぉぉ」
邪魅はまたもや怒号をあげるだけで、攻撃を仕掛けてこない。何故だ……何故仕掛けて来ない?
「まさか! 力を溜めているのか?」
「うが――っ! ようやく気付いたか。次の攻撃がお前達の最期だ。確実に死へのセレモニーは始まっている」
やはりそう言うことだったか。
「邪魅! 某は逃げも隠れもしない。殺られる前にやるだけ。いざ、尋常に!」
さすが義経だ。この程度の逆境では、ビクともしない。剣豪……いや、戦士の鑑だ。
義経は弓を手にし、邪魅の動きを伺う。力を溜めている所為か、動きは鈍い。
狙いは心臓。オレが見る限りではそう見えた。
ギリリと軋む弦は、限界付近まで到達すると矢を邪魅の心臓へと飛んで行く。空を切り裂き轟音を立て、やがてグサリと生々しい音を奏で左胸に突き刺さった。65のダメージ。――HP472/860――
「心臓(急所)は外したが、まずまずであろう」
「うごぉ…………何てな。残念だったな。心臓を狙ったようだが、ワシに心臓などない。何せ、朽ち果てた亡者共の、怨念の集合体だからのう」
成る程。早い話が死体の寄せ鍋みたいなもんだな。食材が腐ってんだ……どうりで臭い筈だ。
だから真琴は、臭いって思わなかったんだな。鉄鼠とかも、お雪と平気で喰ってたしな。
さて、半分近くはHPを削ったが、邪魅の奴何を仕掛けてくるかわからない。ここで徹底的に叩く必要がある。
オレはDDを振り、運命を委ねた。出た目は2の長い髪。
真琴は青い髪を上下に揺らすと、二本の曲刀を作り上げた。するとその二本の曲刀は邪魅の胴体を挟む込むように切り裂き、65のダメージを与えた。――HP407/860――
返り血を浴びた真琴の青い髪は、色が混ざり合い紫色にも見えた。
「うっぐ……待たせたな。ワシの力を存分に味わうがよい」
邪魅は両手を天に掲げ、蓄積された妖気を一気に解放した。大地は震え、空気は歪んだ。
「お前達はここで朽ち果て、ワシの一部になるのだ――っ!」
邪魅はとてつもない衝撃波を放つと、その剛毛な両腕を力任せに振り上げ真琴と義経を殴り付けた。
「うっ…………ぐっ」
一瞬、呼吸が止まる程の衝撃。真琴と義経は軽々と吹き飛び、地獄岩の断片に叩き付けられた。それぞれ110ものダメージを受けた。――HP100/210――HP55/200――
何という馬鹿力。今回は耐えたが、あんなもの二度くらったらお陀仏だ。
「チッ! 思ったよりしぶとい奴等よ」
そう言い放ちながら、余裕の笑みを浮かべる邪魅。しかし、義経も負けてはいない。
「今のが全力なら、ガッカリですな」
「何っ!」
依然として強気な態度の上、邪魅に挑発までしやがる。義経……一体コイツは何者なんだ。
「義経よ、だいぶ傷付いてるが、大丈夫なのか?」
「タクマ殿、ご安心を。某には回復術がある」
そうだった。義経には真琴が持たない回復術があるんだった。それに川姫に貰った薬草もあるしな。何とかなる……かな。
義経は何やら呪文のようなものを唱え、瞑想した。すると、傷付いた体がみるみるうちに回復していった。義経は40回復した。――HP95/200――
そして、MPを20消費した。――MP40/60――
とは言え、このHPでは邪魅の攻撃に耐えるには心許ない。出来れば、もう少し回復したい所だ。
「さぁタクマ殿、DDを。攻撃こそ最大の防御ですぞ」
義経のその言葉には、深い意味があるとオレは感じた。つまり、通常攻撃にセットした薬草の目が出ても、回復は不要という意味だ。オレはそう受け取った。
「よし、真琴。準備はいいか?」
「いつでもオッケーだよ」
振ったDDは、3の通常攻撃を示した。
「お兄ちゃん、義経さんを回復するの?」
「いや、真琴にはそのまま攻撃を仕掛けてもらう」
「だってこのままじゃ……ボクも義経さんも……」
「真琴、冷静になれ。邪魅は強力な攻撃をするのにタメが必要だ。それまでに叩く……それがオレと義経の考えだ。なぁ、義経」
「そう言うことです」
「わかった。信じるよ」
真琴はそう返事すると邪魅に体当たりを喰らわせ、48のダメージを与えた。――HP359/860――
「雑魚共が――っ! いい作戦だ。だが、ワシを見くびるなよ」
邪魅は、拳を千切れんばかりに握り締めた。




