第四十六話 義経の剣術
義経の深紅の甲冑が、鮮やかに煌めく。そして呼吸を整えると、鞘の差表をさらりと撫でた。たったそれだけの仕草でも、剣術に長けていることがわかる。
「真琴、義経は妖怪じゃなく妖魔だ。何が起きるかわからない。心して掛かれ」
「承知……」
ラクシャサ(真琴) LV17 ランクB 特性 遊び上手 ものまね
HP210 MP51
攻撃力48
素早さ54
1 貫通パンチ
2 長い髪
3 通常攻撃
4 ミス
5 遊び
6 ものまね
真琴の奴……べリアルとの融合で、劇的に強くなってやがる。ランクも一気にBになり、輪入道を越えたようだ。
対する義経はと言うと……。
源義経 LV20 ランクB 特性???
HP??? MP???
攻撃力???
素早さ???
スキル 『剣術』『弓術』『回復術』
「しまった! じいさんが居ないから、ステータスがわからないんだ」
となると、真琴が有利か不利かさえもわからないってわけか。戦闘の中で確認するか。
最初に動きを見せたのは義経だ。どうやら素早さは、義経に分があるようだ。
義経は鯉口に手を掛けると、鞘から刀を引き抜いた。美しく光り輝くその刀に思わず見とれていると、一本だたらが言い添えた。
「あの刀は確か、膝丸。後に薄緑と呼ばれた名刀だ。膝丸はその名の通り、膝下まで斬り落とす程の破壊力持ったことから、名付けられたと言う」
さすが、鍛冶屋としても名高い一本だたらだ。しかし、どれ程の切れ味か興味深い。真琴には悪いがな。
「いざ、参る。受けてみよ。膝丸の切れ味を」
義経は摺り足で真琴ににじりより、鮫皮を張り巻きされた柄を握り締めた。そして、鍔に書かれた文字を正面に向けると、素早い動きで真琴の胸元を斬りつけ50ものダメージを与えた。――HP160/210――
真琴の胸元は抉れ、象徴とも言うべき青い髪が宙を舞った。一本だたらが言うだけのことはある。
しかし、こちらも負けてはいられない。真琴だって強くなっているしな。
オレは久々の真琴との連携に胸を踊らせ、DDを振った。出た目は2の長い髪だ。
早速、真琴の新しい技が見れるとはオレもツイてる。
「真琴、お前の方が強いってことを証明してやれ」
「勿論だよ。義経さん、いくよ」
あれ程のダメージを喰らいながらも、真琴は地面を颯爽と駆け抜け義経に狙いを定める。義経に斬られた青い髪は再生し、とぐろを巻きながら鋭い剣のような形になった。すると真琴は、その剣に見立てた青い髪をしならせ、義経を足元を斬りつけ65ものダメージを与えた。――HP???/???――
義経の膝丸を上回る攻撃力。これが西洋妖怪の力なのか?
しかし残念なことに、残りHPがわからない。これだけのダメージだ。相当減っているには違いない筈だが。
「西洋妖怪の真琴殿。そなた中々やるではないか。某はそなたを甘くみていた。ご無礼致す」
義経は戦闘中にも拘わらず、真琴に深々と頭を下げ言葉を続けた。
「しかし、戦は力だけではまかり通らぬ」
義経は膝丸を鞘に収め、素早いステップで真琴に間を詰める。
「主よ、これは恐らく抜刀術。所謂、"居合い"。柳生流かと」
「抜刀術?」
「ほう、その妖怪詳しいな。しかし、残念ながら某の流派は柳生流ではない。義盛どのから受け継いだ円明流だ」
義経は白い歯を見せると、真琴の目の前で鍔に手を掛けた。驚くことに、その時点で真琴の肩から吹き出していたのだ。つまり、義経の攻撃は既に終わっていたということだ。肉眼では捉えることのできない素早い攻撃。何と真琴に70ものダメージ与えたのだ。――HP90/210――
「これが抜刀術……これが円明流……」
呆気に取られ、言葉にならない。あれほどパワーアップした真琴が、あっという間に追い込まれてやがる。
「お兄ちゃん、勝負はまだわからないよ。抜刀術は過去に喰らってるから平気だよ」
真琴は微笑みながら言う。
そうか、カラス天狗……つまり、義経に円明流を伝授した師匠である伊勢三郎義盛と、真琴と融合したべリアルは一戦交えた時に"抜刀術"を喰らってるってことか。
でも、なまはげが戦った時にカラス天狗が見せた剣術は、五月雨斬り……つまり、カラス天狗は本気を出してなかった……。
「お兄ちゃん、ご采配を」
「そ、そうだったな」
オレは次の一手を探るべく、DDを振った。出た目は6。ものまね。またしても、真琴が新たに習得した技だ。
真琴は青い髪をうねらせ、摺り足をしながら義経との間を一気に詰める。その動きは義経そのものだ。
「ものまね……まさか、抜刀術をそのまま返すのか?」
「正解!」
真琴も義経同様に白い歯を見せると、バックステップで後退した。
その瞬間、義経の深紅の甲冑は弾け飛び、甲冑より色濃い血が吹き出した。義経は70のダメージを受けた。――HP???/???――
「へへん、見た? ボクの抜刀術」
「うぐぐ……偽者に抜刀術を喰らうとは……しかし、所詮偽者は偽者。いざ、尋常に」
義経は鞘から刀を引き抜き、目を細めた。
――義経よ、その者を斬ってはならぬ――
「その声は?」
何処からともなく聞こえた声に義経は反応し、天を仰いだ。




