第三十七話 交差する強敵
その全貌を現した九尾の狐。黄金に光り輝く尻尾は、見とれてしまう程美しい。
「お前も、酒飲童子の仲間か?」
オレがそう言うと、九尾の狐は眉をピクリと動かし返した。
「酒飲童子が仲間? 奴はマロの部下でおじゃるよ」
「ほう、なら酒飲童子より強いって訳だ」
「当たり前でおじゃる。部下より弱い訳がないでおじゃるよ」
オレは思った。コイツを倒せれば、酒飲童子も容易いと。ある意味、絶好の機会だ。
「成る程。そいつはいい話を聞いた。九尾の狐よ、悪いがオレ達は急いでるんだ。そこを退いてもらうぞ」
「小癪な……」
オレは輪入道を具現化し、バトルフォースを展開した。
輪入道 LV14 ランクC 特性 連続攻撃 炎に強い
HP170 MP35
攻撃力20
素早さ30
1 灼熱の炎
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 踏みつけ
6 怨念
「川姫! 真琴で援護を頼む」
「オッケー。バトルフォース展開!」
座敷殿(真琴) LV12 ランクD 特性 遊び上手
HP110 MP45
攻撃力17
素早さ44
1.2 貫通パンチ
3 ミス
4.5 遊び
6 通常攻撃
「ふぉふぉふぉ。ワシの出番じゃな?」
「あぁ、じいさん頼む」
妖怪大翁は妖怪百科事典の時の要領で、九尾の狐のステータスを見抜いた。
九尾の狐 LV15 ランクB 特性 炎に強い
HP320 MP100
攻撃力28
素早さ50
スキル『灼熱の炎』『九本の尻尾』
――九尾の狐……元来、人間界にある中国に住んでいた妖怪だが、鬼骨王に命を受け遥々黄泉へとやって来た。黄金に輝く九本の尻尾の攻撃は、一目置かれている――
幸か不幸か、輪入道と同じく"灼熱の炎"のスキルを持っていやがる。同時に炎に強い。それはつまり、お互い灼熱の炎が効かないってことだ。だとすれば、輪入道の踏みつけと真琴の貫通パンチで攻めるしかない。
「マロの恐ろしさを味わうがいいでおじゃる」
先手を取ったのは、九尾の狐。九尾の狐は深く息を吸い込み、切れ長の鋭い目で輪入道を睨み付けた。
「喰らえ――っ! 灼熱の炎――っ!」
輪入道はピクリとも動かず、口を最大限に開く。九尾の狐が放った灼熱の炎は、その口へと誘われ輪入道の胃袋へと収まった。
「マ、マロの灼熱の炎が……吸い込まれた……」
慌てふためく九尾の狐を、輪入道がペロリと舌を巻きニヤリと笑う。
「ご馳走さん……」
これこそが特性の"炎に強い"という能力だ。しかし、手放しでは喜べない。逆もまたあるってことだ。
「ざまぁみあがれ。一ターン無駄にしたな」
「くっ……」
屈辱を受けた九尾の狐は、渋々後退した。ここからは、こちらの攻撃だ。
川姫は、ファーストアタックを狙うべくDDを振った。出た目は1。貫通パンチだ。
死を乗り越えた真琴の貫通パンチは、鋭く九尾の狐の肉体を抉り38のダメージを与えた。――HP282/320――
九尾の狐は早くも流血し、悔しそうな表情を浮かべ患部を抑えていた。
思ったより大したことない。大天狗の方がよっぽど強敵だった。
「九尾の狐よ、口ほどにもないな。輪入道、お前の力を見せてやれ」
「御意」
オレが振ったDDは、3を示した。5の踏みつけを出して、"弾み"を付けたかったが、文句は言えない。灼熱の炎やミスが出なかっただけ、よしとしよう。
輪入道は空を駆け抜け、九尾の狐目掛けて体当たりし20のダメージを与えた。更に旋回し、追い打ちを掛ける。体当たりしたと同時に、九尾の狐の黄金の尻尾が車輪に巻き込まれ、空気中にそのしなやかな"毛"が舞った。20ダメージ。合計40ダメージ。――HP242/320――
輪入道は清々しい表情で、オレの元に戻って来た。それと対照的に九尾の狐の表情は曇る一方だ。
「マロが……マロがこんな何処の馬の骨ともわからん奴等に……」
その鋭い目付きは、更につり上がった。
◇◇◇◇◇◇
一方その頃、タクマ達を狙うべく刺客が地獄谷に到着した。
「酒飲童子よ、見付けた……アイツが勾玉を奪ったタクマだ。さぁ、行くぞ」
「待て、なまはげよ。面白いことになっている」
「何がだ?」
「見てみろ……」
頑強な岩の隙間からなまはげがそっと身を乗り出すと、タクマ達と九本の尻尾を持った妖怪が戦闘を繰り広げていた。
「こ、これは?」
「あのテイマーと戦ってる奴は、ここ地獄谷の主……九尾の狐。我輩が最も気に入らない妖怪だ」
「それじゃ、纏めて……」
「なまはげよ。よく考えろ。これは絶好の機会だ。奴等は勝手に戦い、必ずどちらかが死ぬ」
「成る程、どちらか残った方を、我々が叩く……」
「そういうことだ」
酒飲童子はそう言うと、そこに腰を降ろし酒盛りを始めた。
◇◇◇◇◇◇
戦闘に夢中になっていたオレ達は、その存在に気付かずにいた。




