第三十二話 真琴の生きざま
川姫の振ったDDは、回転しながら1を示した。先制攻撃としては十分な、貫通パンチだ。
「貫通パンチだね。ボクに任せて」
真琴は素早く大天狗の足元に回り込み、その鳩尾に向け貫通パンチを繰り出し35ものダメージを与えた。――HP425/460――
大天狗は肉片を晒し、ピチャピチャと血飛沫を飛ばしながらも、不敵な笑みを浮かべている。
「痒い、痒い……まるで蚊に刺されたようだ。攻撃とはこうするのだ」
大天狗はゆっくりと真琴に近付き、巨大な拳を降り下ろした。その拳は真琴の頬を掠め、地面にめり込んだ。
「おっと、外してしまったか?」
いや、外れたんじゃない。外したんだ。巨体の割に正確性のあるパンチ。
オレの目は節穴じゃない。コイツ、遊んでやがる。
「次は外さないぞ」
忘れていた。大天狗はAI二回行動……今の一撃は、恐怖を与える為のウォーミングアップだったのだ。
大天狗は地面にめり込んだ拳の泥をペロリと舐め、真琴を見据える。そして、目にも止まらぬ速さで今度は真琴を捉え、32のダメージを与えた。――HP67/99――
ウェイトのない真琴は吹き飛び、青々と育った竹に体をぶつけた。
「真琴、大丈夫?」
「お姉ちゃん……これくらい平気だよ」
「真琴、よく耐えた」
ここまでは作戦通りだ。川姫が真琴を操っているお陰で、オレは輪入道に専念出来る。
オレは反撃するべく、DDを振った。出た目は5。踏みつけだ。
輪入道はDDを見届けると、大天狗を上回る程空に舞い上がり、その車輪を額に押し付けるようにのし掛かかり、45ものダメージを与えた。――HP380/460――
「ん…………今のは結構効いたぞ。コワッパが……」
輪入道……凄い攻撃力だ。あの大天狗に、脳震盪を起こさせたのだ。しかし、大天狗を激怒させた一撃でもある。
「次は川姫だ」
「オッケー」
真琴は傷付いた体を庇いながらも、大地に立っている。座敷わらしから進化して少しは大人になったが、オレから見ると所詮まだ子供……そうまでして戦わなくてはいけないことに心が痛む。
川姫はそんなこと気にせずDDを振る。出た目は6。通常攻撃だ。
真琴は大天狗の毛深い足に噛み付いた。
「んぎぁぁ」
噛み付き自体に威力はないが、大天狗は体勢を崩し"ドシン"と音を立て、頭から竹林に倒れ込んだ。結果的に14のダメージを与えた。――HP366/460――
しかし、まだまだ足りない。今まで戦ってきた敵より相当タフだ。
問題は大天狗の攻撃にどれだけ耐えれるか。DFDがあるとは言え、使用出来るのは一回のみ。使いどころを見極めなくてはならない。
「随分、楽しい攻撃をしてくれたな。チビスケ。今殺してやるぞ」
大天狗は真琴に標的を絞り、左右交互にパンチを繰り出した。32ダメージ、32ダメージ。――HP3/99――
「うぐぐぐ……」
真琴は綺麗な顔立ちの原型を留めない程、顔を腫らしている。瀕死になりながらも必死で立ち上がろとした。
「真琴――っ!」
オレと川姫が声を揃えてそう叫ぶも、真琴は笑顔で答える。
「へへっ……まだやられちゃいないよ……」
よろめきながらも、必死に立ち上がろうとする真琴。
「もういい……お前は十分戦った」
「……何言ってるのお兄ちゃん……ボクはまだ戦えるよ。止めたって無駄だからね……」
真琴……中々の根性だ。オレが魔王のままだったら、是非とも右腕に迎えたかった。
「真琴……もう止めない。心行くまで戦え!」
「御意」
「川姫! 真琴を頼んだぞ」
「オッケー」
真琴の奴……この戦闘で死ぬつもりだ……でもな。オレにもプライドがある。簡単には死なせはしない。
オレはDDを握り締め、転がした。出た目は5。またもや踏みつけだ。ツイてる……ツイてやがる……。
「輪入道! 思い切りやってこい」
「御意」
輪入道は有り余る力を剥き出しにし、再び空に舞い上がる。やがて狙いを大天狗の後頭部に定めると、急降下した。大天狗に45のダメージ。――HP321/460――
「いつつ……舐めやがって……」
大天狗は頭を抱え、オレ達を見下ろす。完全に頭に血が昇ったのか、顔全体……いや、特に長い鼻から湯気が立ち昇る。
「真琴、行けるわよね?」
「……うん……いけるよ」
最期になるかも知れない真琴の攻撃。川姫は、あえていつもと変わらず接する。そして、真琴もそれを望んでいた。
「それ――っ!」
川姫は、勢いよくDDを放り投げた。




