第三十一話 恐るべし大天狗!
ざわめく竹林に、怒号を上げる大天狗。その大きさは、首を最大限に曲げなくてはいけないくらいデカイ。
「さぁ、血祭りにしてやろう。何処からでも掛かって来い!」
大天狗はそう言いながら巨大な下駄を鳴らし、天狗の葉っぱを振りかざす。売られた喧嘩は買うのがオレの主義。しかし、今回ばかりは流石のオレも多少なりビビっていた。その理由は、妖怪百科事典に記載されたステータスを見てしまったからだ。
大天狗 LV15 ランクB 特性 AI二回行動 風に強い
HP460 MP85
攻撃力32
素早さ36
スキル 『風神の術』
――大天狗……天狗の中で一番の長。その存在は圧倒的。しかし、伝説と囁かれており、今までその姿を見た者はいない。突然変異とも言われている――
はっきり言って、今までの敵の比じゃない。こちらは輪入道と真琴……なまはげの死が悔やまれる。
「タクマさん、私も戦うわ」
悩むオレに、川姫がオレにそう述べる。気持ちはありがたいが、川姫まで死なせる訳にはいかない。
「主よ、真琴を川姫に託してはどうだ?」
そうオレに問い掛けるのは、輪入道だ。確かにその方法は効果的だ。
オレは輪入道に専念し、川姫は真琴に専念する。真琴の攻撃力は未知数だが、現時点では最も効果的な作戦だ。
「真琴、座敷殿になってから初めての戦闘だが、行けるか?」
「ボクを見くびらないでよ。いつだって行けるよ」
「その言葉……信じるぞ。川姫、そういうことだ。真琴を頼む」
「わかったわ。任しておいて」
川姫の承諾を得ると、オレは輪入道と真琴を具現化した。
そして、オレは大天狗に近付き言った。
「大天狗よ、お望み通り相手になってやる。だが、その前に気を失ったお雪を返してくれ」
「ん? 何だ? ひょっとして、ここに転がってるゴミのことか?」
大天狗は気を失ったお雪の体を、足蹴にしながら言った。
「やめろ――っ!」
「そう、ムキになるな。今返してやるぞ。ほ~らよ」
大天狗は下駄の底面で、お雪を蹴り飛ばした。
「かはっ……」
お雪は白い体を血に染めながら、オレの目の前に転がった。
「お雪――っ! 大丈夫か?」
「タ……ク……マ……私は……大丈夫……あいつを……倒して……かはっ」
「言われなくったってやってやるさ。さっさと倒してやるから、ここで休んでろ」
オレはお雪を抱え上げ、竹林の陰にそっと置いた。致命的なダメージはないものの、激しい痛みがあるのは間違いない。
込み上げる熱い血潮……奥歯を噛み締め、拳を強く握る。
「貴様……オレを怒らせたな。オレはお前を許さない……」
「たかが人間無勢が、我を倒すだと? 言っておくが、我はカラス天狗様のように甘くはないぞ」
「へっ、ウザいんだよ。念仏でも唱えやがれ! バトルフォース展開!」
輪入道 LV13 ランクC 特性 連続攻撃 炎に強い
HP151 MP31
攻撃力17
素早さ28
1 灼熱の炎
2.3 通常攻撃
4 ミス
5 踏みつけ
6 怨念
「輪入道よ、頼んだぞ」
「御意」
一方で、川姫もバトルフォースを展開した。
「バトルフォース展開! 真琴、はっきり言って自信ないけど、頼んだわよ」
「自信があるバトルは楽しくないよ。ボクなりに頑張るよ」
「それ、フォローのつもり?」
真琴は元テイマー。それに座敷わらしから、座敷殿に進化してる。決して弱くはない筈だ。
座敷殿真琴 LV11 ランクD 特性 遊び上手
HP99 MP40
攻撃力14
素早さ40
1.2 貫通パンチ
3 ミス
4.5 遊び
6 通常攻撃
思ってたより、強くはない。しかし、鬼童子に止めを刺したあの一撃……あれはただ者ではない。あとは川姫次第ってとこだ。
「さぁ、役者は揃った。大天狗! お前を冥土に送ってやるぜ!」
「ふっ……吠え面かくなよ」
大天狗はその長い鼻を撫でながら、オレ達を見下ろす。その姿は三体だった頃の、天狗三兄弟の面影は全くない。
「返り討ちにしてやるぜ!」
不思議と恐怖心が和らぐ。それは心強い仲間のお陰だと、オレは気付いていなかった。
「真琴、頑張ってね」
先手は真琴……川姫は何かの終わりと始まりを告げるべく、DDを振った。




