第二十二話 震震の奥の手
早いとこ一本だたらを仕留めて、震震を倒したいところだ。
「……」
震震は標的を見越し入道に絞ったのか、その前でスゥっと消えた。何度見ても気持ちが悪い。まるで、幽霊を見ているかのようだ。
「見越し入道! 震震はお前をターゲットにしたぞ」
「御意」
見越し入道は精神を研ぎ澄まし、震震のステルス攻撃に備える。
「ぐはっ……」
しかし、悲鳴を上げたのは、居着きの雷だった。
居着きの雷は背中から鮮血を撒き散らし、12のダメージを受け膝間付いた。無惨に飛び散る肉片――オレが余計な口出しをしたばっかりに、震震は標的を居着きの雷に変えたのだ。――HP6/81――
「すまない……居着きの雷」
「主……戦いに情けは無用……」
居着きの雷はオレにそう返すと、再び立ち上がった。
情けは無用――確かに命を賭けたデスバトル。オレとしたことが、すっかり人間の感情になっていた。
「見越し入道! 次はお前の番だ」
オレは迷いを打ち消し、DDを振った。出た目は5。ツキはまだ残っていた。5……すなわち踏みつけ。見越し入道の取って置きだ。
標的は勿論、一本だたら。これで止めが刺せる。
見越し入道は巨体を宙に浮かせ、一本だたらの頭上に体を置いた。踏みつけるというよりは、のし掛かると言った方が適切だ。
落下地点にいる一本だたらは、体を地面に倒し巨大な足を天に向けた。
「悪く思うな。止めだ」
「踏みつけには、踏みつけで返す」
見越し入道が落下したと同時に、凄まじい砂埃が舞い上がった。打ち消しあったのか互いに18のダメージを受けた。――HP63/93――HP1/110――
「まさか相討ち?」
砂埃が収まり視界が開けると、見越し入道と一本だたらが地面に倒れていた。
「大丈夫か? 見越し入道」
「…………主、問題ない。しかし、仕留め損なったようだ」
「何――っ!」
数秒遅れて、一本だたらが立ち上がった。瀕死の状態でまだやると言うのか?
「参った……降参だ。そなたを主としたい。テイムしろ」
それは予想外の言葉だった。命令口調に多少腹が立ったが、オレは言った。
「一本だたらよ。宜しく頼む」
オレは望み通り両手を突き出し、一本だたらをテイムした。嬉しい誤算だ。
「主よ。我は戦わずに武器を提供したい。勿論、それなりのクリスタルは頂くがな」
「武器を提供?」
「うむ。我の鍛えた武器を主が使用すれば、更なる攻撃が期待出来る。悪い話ではあるまい」
「成る程……報酬が欲しいって訳か。わかった。それじゃ、頼んだぞ」
「御意」
一本だたらはそう言うとカード化し、オレの手に収まった。
「己れ――っ! 一本だたらめ、裏切りおって……」
「子泣きのじいさんよ、どうする? そっちは震震だけになっちまったぜ」
「勝負はまだわからん。震震よ、お前だけでも戦うさね」
「……」
相手は震震一体。断然こちらが有利だ。
「行け! 居着きの雷よ」
オレは気を取り直し、DDを放り投げた。出た目は6……やっちまった……ミスだ。ここに来て痛恨のミス。
「ふふふ……」
今まで微かな声しか聞こえなかった震震が、不気味に笑う。こんな幽霊もどきに舐められとあっちゃ、テイマーとしての名折れだ。
「震震、ぜってぇ倒してやるからな」
「ふふふ……」
ムカつく奴だ。完全にオレを馬鹿にしている。
「来るなら来い!」
「ふふふ……それじゃ、遠慮なく」
はっきりとした口調。その声は低音で、ヘタな獣の声より迫力があった。
「どうせ、またステルス攻撃だろ?」
半ば強引に挑発すると、震震はキッとオレを睨み姿を消した。
「ほらな、やっぱりステルス攻撃だ。逃げながらしか攻撃が出来ねぇんだよ、コイツは!」
「あ、あ、主……お助けを……」
刹那――、居着きの雷が苦しみ出した。顔が青白くなり、呼吸さえままならない。
「人間よ、聞こえるか?」
「その声は震震。何処にいるんだ?」
「鈍感だね。目の前だよ」
目の前というと、苦しんでいる居着きの雷しか視界に入らない。
「まだ気付かないのかい? この体に憑依してやったのさ」
「居着きの雷……本当か?」
「……うっぐ……」
居着きの雷は、何か言おうと必死に努力するが、言葉は出て来なかった。
「う~ん。久々の憑依だわ。何か弱そうだけどね」
嬉しい誤算の後に、本当の誤算だ。オレは震震が憑依した居着きの雷と、見越し入道とのバトルをするはめになった。つまり、これは仲間同士の殺し合いだ。
バトルシステムは、より進化していきます。
お楽しみに。




