第十四話 病田の霊VS一つ目兄弟
二口女は再び魔方陣に祈りを捧げた。すると目の前に、二体の妖怪が姿を現した。一体は巨大な目を持った小坊主。もう一体は、額にも目がある小坊主。人間の年齢で言うと、小学生……高学年といった所だ。
「二口女! まさかその二体が相手って訳じゃないだろうな?」
「ご名答~。この『一つ目小僧』と『三つ目小僧』が二回戦の相手よ」
「何だと? 二体相手なんて、卑怯じゃねぇか!」
「あら、ごめんなさい。でもね、この子達は兄弟で、二人で一つなの」
「主、一体だろうと二体だろうと問題ない」
「そうか。お前がそう言うなら、任せる」
「話は決まったようね。一つ目、三つ目! 思い切り暴れて来なさい」
「は~い。やっちゃいます」
まだ声変わりもしない甲高い声で、一つ目が元気に返事をする。こちらも負けてはいられない。オレはバトルフォースを展開した。
病田の霊 LV10 ランクD 特性 AI二回行動
HP60 MP20
攻撃力10
素早さ22
1.2 祟り
3.4.5 通常攻撃
6 怨念
病田の霊は、手の目との戦闘時よりレベルが上がっている。味方になると心強い。
対する一つ目小僧と三つ目小僧だが……。妖怪百科事典が開く……。
一つ目小僧 LV10 ランクD 特性 合体技
HP48 MP15
攻撃力8
素早さ16
スキル 合体技
三つ目小僧 LV10 ランクD 特性 合体技
HP51 MP10
攻撃力5
素早さ25
スキル 合体技
――一つ目小僧……眼力があり、見た目より力がある。非常にイタズラ好きで、驚かすのが得意。弟の三つ目小僧のことを大事に思う一面もある――
――三つ目小僧……一つ目小僧の弟で、兄の一つ目小僧を尊敬している。兄の一つ目小僧とは対照的で、真面目な一面を持つ――
合体技? また新たな技を使ってきやがるのか? しかし、病田の霊はAI二回行動。総合的にはこっちが上だ。
「病田の霊! 行けるな? 叩きのめしてやれ。但し、合体技には注意しろ」
「御意」
「叩きのめせだと? 三つ目! お前の方が素早さは上だ。やっちまえ!」
「はいよ。兄者!」
三つ目は一つ目にそう言うと、下駄を鳴らしながら先制攻撃を仕掛けて来た。さすがに言うだけのことはある。まだ体勢の整ってない病田の霊のあばら骨に、下駄の底で蹴りあげた。病田の霊は5のダメージを受けた。――HP55/60――
「痛くも痒くもないわ。主、ご采配を」
「わかった。行くぞ」
DDが示した目は、3。病田の霊は、あばら骨をへし折り、三つ目小僧に投げつけ10のダメージを与えた。――HP41/51――
更に病田の霊は、三つ目小僧に攻撃を重ねる。投げつけたあばら骨を拾い上げ殴打し10のダメージを与えた。――HP31/51――
ここまでは順調だ。病田の霊……味方になると心強い。AI二回行動が効いている。
「なかなかやるね。ケダモノのクセに。今度はボクの番だよ」
一つ目小僧は手術台に踏み台にし、三つ目小僧と同様に底面で蹴りつけて来た。病田の霊のあばら骨が数本折れ、臓器が飛び散る。病田の霊は8のダメージを喰らった。――HP47/60――
よろめく病田の霊に、今度は三つ目小僧が襲い掛かる。晒された内臓に、これでもかと蹴りつける。
「かはっ……」
真紅の血が、オペ室の床に滴り落ちる。病田の霊は5のダメージを受けた。――HP42/60――
「病田の霊! 大丈夫か?」
「心配ご無用。元々、朽ち果てた体ゆえ……。さぁ、ご采配を」
見た所、あばら骨は折れ、臓物が晒された状態。通常なら瀕死に陥るが、病田の霊は不気味に笑う。
オレは早くケリを着けたいと願い、DDを振った。出た目は5。またも通常攻撃だ。スキル発動を願いたい場面だったが、贅沢は言えない。病田の霊はそれに従うしかないのだ。
「御意」
病田の霊は血糊を舐めながら、三つ目小僧の鳩尾目掛けパンチを繰り出し10のダメージを与えた。――HP21/51――
更に攻撃を続ける病田の霊の前に、一つ目小僧が立ち塞がる。
「どけ――っ!」
病田の霊は、立ち塞がる一つ目小僧だけでなく、三つ目小僧までもなぎ倒した。これはラッキーな展開。二体共に10のダメージを与えたのだ。――HP38/48――HP11/51――
「一つ目、大丈夫か?」
「痛いよ、兄者……」
「クソ……こうなったら"アレ"をやるしかないな」
「うん、兄者」
「何をモタモタしてる。早くかかって来い!」
病田の霊は、一つ目兄弟を挑発した。絶対的自信……それが悲劇を招いた。
「そう言っていられるのも、今のうちだ。行くぞ、三つ目! 修羅の目だ!」
「うん」
一つ目小僧と三つ目小僧は、それぞれの目を青く光らせ、その目から青白い塊を作り出した。やがてそれは熱を帯び始め、オペ室の1/4を埋め尽くす程の巨大な塊になった。
「兄者! 準備はいいよ」
「よし。病田の霊! 待たせたな! これがボク達の合体技……"修羅の目"だ。死ね――っ!」
「こんなチンケな技、受け止めてやる!」
「病田の霊! 逃げるんだ。この技は半端じゃない!」
「ぐぉほぁ……」
まともに受けた病田の霊は、40のダメージを受けた。――HP7/60――
辛うじて病田の霊は耐えたが、無惨にも右腕が引きちぎられた。ヘドロのような濃厚な血を撒き散らしながら、床に転がる腕。それは正に地獄絵図だった。