第十三話 小豆洗いVSカラ傘
「なぁ、二口女。オレは逃げも隠れもしない。術を解いてくれねぇか?」
「そうね。フェアじゃないしね」
術が解け体がスゥっと軽くなる。なかなか話のわかる奴だ。根は悪い奴じゃないのかもな。
「小豆洗い! お前とは初めてだが、オレは川姫みたいにいかないぞ。覚悟しておけ」
「主こそ、オイラに恥をかかせるなよ」
「言いやがる。行け! 小豆洗いよ、バトルフォース展開!」
小豆洗い LV6 ランクなし
HP21 MP2
攻撃力8
素早さ10
1.2 ミス
3.4.5 通常攻撃
6 小豆つぶて
ヘラヘラしていた小豆洗いの顔が真剣になる。ステータスを見る限り期待は出来ないが、やはりコイツも妖怪。プライドだけはあるんだろうな。
対するカラ傘はと言うと……妖怪百科事典がパラパラと捲れる。
カラ傘 LV4 ランクなし
HP16 MP1
攻撃力8
素早さ9
スキル???
――カラ傘……放置されたカラ傘に、怨念がこもった妖怪。その長い舌は、ゴムのように伸び縮みする――
カラ傘のステータスも大したことない。これなら小豆洗いでも、無難にやりあえる。ただ、スキルに記された『???』は気になるが……。
「さぁ、そろそろ始めましょう。全力で行くのよ。カラ傘!」
「ケケケッ」
話すことができない? ていうことは、知能は低めだな?
「小豆洗い! そんなガラクタぶっ飛ばしちまえ!」
「主、心配すんなって。オイラに任せな」
お気楽なものだ。自分が強い妖怪だと思っていやがる。
先手は小豆洗い。オレは運命をDDに委ねた。出た目は3。
小豆洗いは小豆を撒き散らしながら、ワッパをカラ傘に叩き付ける。ボロい傘が一段とボロくなる。カラ傘に8のダメージを与えた。――HP8/16――
「弱い……弱すぎるぞ。あと一撃でオイラの勝ちだな」
「小豆洗い! 油断はするな」
「大丈夫、大丈夫。ちょちょいのちょいで、終わらせらぁ」
カラ傘はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、小豆洗いに体当たりした。小豆洗いはそれを正面から喰らい、同じく8のダメージを受けた。――HP13/21――
ここまでは小豆洗いが優勢。しかし、勝負はまだわからない。オレは再度DDを振った。出た目は1。やってしまった……恐れていたミス。
小豆洗いがキッとオレを睨む。悪気はない。それをサラッと受け流す。勿論、これくらいのことでオレは謝らない。これは想定出来る問題なのだ。
「ケケケッ」
カラ傘はチャンスとばかりに、再び体当たりを小豆洗いに喰らわす。小豆洗いは8のダメージを受けた。――HP5/21――
次がラストチャンスだ。1.2以外が出れば小豆洗いの勝利。もし、再びミスが出たら……いやいや、ネガティブな考えはやめよう。オレは無心になりDDを振った。出た目は6。
「よっしゃ、もらった。小豆洗い! 小豆つぶてを見せてやれ!」
「承知!」
小豆洗いはワッパに入った小豆を鷲掴みにし、カラ傘に向かって連打した。2ダメージ……3ダメージ……3ダメージ……2ダメージ。
少ないダメージだが、連打で補う必殺技。合計10ダメージを与えた。見事な技だ。
「オイラの力を見たか?」
小豆洗いがそう言った後、オレは異変に気付いた。
「小豆洗い! 逃げろ!」
「へっ? 何が? うぐぐぐっ……」
「ケケケッ。ワシを馬鹿にして油断したな? 道連れじゃ――っ!」
なんと、カラ傘は話すことが出来たのだ。それもこれも、小豆洗いとオレの目を欺く為。
カラ傘のゴムのような舌は、小豆洗いをどんどん締め上げていく。助けたいのは山々だが、テイマーのオレには何も出来ない。
「く、苦しい……息ができない……」
「ケケケッ。苦しめ……もっと苦しめ……」
小豆洗いの体は、引きちぎられそうな程、締め上げられた。
「小豆洗い……すまない。オレには何も出来ない……」
「おや、降参かい? カラ傘! 遊びは終わりよ。やっておしまい」
「ケケケッ。御意!」
カラ傘の体は、光を帯ながら朽ち果てていく。
そして……。
小豆洗いとカラ傘は、線香花火の最後ようにポツリと消えていった。
「じ、自爆……」
オレがそう言うと、妖怪百科事典に記されていた『???』が『自爆』に変化した。
「くそ……オレがもっと気を付けていれば……川姫になんて言ったらいいんだ」
「う~ん。いい死にっぷり。ブラボー、ブラボー」
なんだこの女。仲間の死を何とも思わないのか? サモナーもテイマーも、戦う妖怪とは一心同体。それを鼻で笑ってやがる。
「コ、コイツは冷酷な女だ。魔王だった頃のオレでさえ、仲間の死には嘆いたものだ。それをこの女は……」
「何、一人でごちゃごちゃ言ってんの? さっさと二回戦行くよ」
許さねぇ……コイツだけは許さねぇ。小豆洗いの為にも、絶対負けない。
「病田の霊! 行けるか? 次はお前に任せる。小豆洗いの仇を取ってくれ!」
「御意」
病田の霊は、全身を震わせた。




