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第百十六話 生か死か

 生か死か……答えはこの草薙の剣にかかっている。

 体の三分の二が崩壊したガシャドクロを前に、オレは柄をギュっと握り締めた。


「貫いてやるぜ――っ!」


 たとえ無力でも、オレにはやらなけばならないことが現在(ここ)にある。

 顰(しか)めっ面したガシャドクロは、朽ち果てようともその存在は巨大――頼れるのは己の精神のみだ。


「抜刀術……」


 素早く鞘から抜き取られた草薙の剣は、思い描いた通りの線を辿った。

 手のひらに伝わる骨の硬さ……それはガシャドクロの大腿骨へと震動が広がった。


「はぁ……はぁ……どうだ?」


 血糊の付着した草薙の剣を振り払い、鞘に収めガシャドクロの様子を伺う。


「うががが……貴様……貴様――っ!」


 ガシャドクロは下半身を失いながらも、悲痛な叫びをあげた。

 ガシャドクロに600のダメージを与えた。――HP493/3000――

 さすが草薙の剣……凄まじい破壊力だが、ガシャドクロはまだ息をしている。


「タクマ! すげぇぞ!」


 甘寧がオレの一撃を讃えたが、それに答える気力はない。

 やはり、生身の体では負担が大きかったのだろう。全身に剣山を刺されたような激痛が走る。


「タクマ……タクマ? どうした?」


「悪い……体が思うように動かない……」


 絞り出した答えはそれだけ……目眩と共に吐き気を催す。


「タクマさんが頑張ったんだもの。後は私達に任せて!」


 耳鳴りが始まったオレの聴覚は、川姫の声が二重に感じる。


「か、川姫……た、頼む」


 川姫は力強く頷くと、DDを転がした。出た目は5のダイヤの爪。

 自我を失いそうになる中、必死に栄螺鬼の攻撃を見守った。

 栄螺鬼も相当なダメージを受けている。だが、最後の力を振り絞りガシャドクロに立ち向かった。

 ダイヤの爪は肋骨をへし折り、原型がわからないまでのダメージを与えた。

 ガシャドクロに157のダメージを与えた。――HP336/3000――MP10消費68/88――栄螺鬼は30ポイント回復した。――HP118/498――


「俺様も続くぜ! くたばれ、ガシャドクロ!」


 熱り立った甘寧が、更に追い打ちをかける。

 歯こぼれが始まった青龍刀を補うように、強引に右腕を斬り付けた。

 凌統が叶わなかった右腕を見事に切り落としたのだ。

 ガシャドクロに101のダメージを与えた。――HP235/3000――


「ふぉぉぉ……」


 下半身、そして両腕を失い無惨な姿のガシャドクロ……同情をしてやりたい気持ちさえ芽生える。


「テイマー……我輩の番だ」


「あぁ、わかってる」


 そうは言ったものの、全身を襲う痛みと痺れ……関節を動かしただけで激しい痛みが伴う。


「うぐっ……」


 DDを振ったというより、手から離れた……いや、その感覚さえ真実なのか疑問だ。


「命(めい)を受けた……」


 目が霞み、出た目さえ確認できない。しかし、酒呑童子が薙刀を抱えたということはミスではないようだ。


「退け――っ!」


 ボーン乱舞を浴び、血だらけになった酒呑童子とて瀕死の重傷。真琴に負けず劣らずの気力だ。

 酒呑童子は薙刀を空高く掲げ、頭蓋骨へと振り下ろした。鈍い音と共に飛び散る血飛沫……ガシャドクロに170のダメージを与えた。――HP65/3000――


 後退すらままならい酒呑童子。精根尽きたように、大地に転がった。


「ぬぉぉぉ! 私をここまでおちょくるとは……せめて、道連れにしてやるわ!」


 崩れた上半身と、半分に割れた頭蓋骨……しかし、ガシャドクロはまだ生きている。


「くそ……ここまでか」


「諦めろ……今、MPを回復してここに生きているモノ全てを根絶やしにしてやるわ――っ!」


 震える大地……ガシャドクロに凄まじい妖気が溢れだした。


「さぁ、準備は整った……これで貴様らは終わり……かはっ! き、貴様! 何故、生きて……」


 目を疑う光景……そこには死んだ筈の凌統が、方天戟でガシャドクロを真っ二つにした光景だった。


「はぁ……はぁ……タクマ、やったぞ」


 凌統はガシャドクロに98のダメージを与えた。――HP0/3000――


「私を倒したところで、鬼骨王様には勝てまい……何故ならば……ぐぁぁぁ!」


 ガシャドクロは何かを言い掛け、悲痛な断末魔をあげた。

 やがて煙と化し、巨大なクリスタルと三種の神器である鏡をそこへ残した。


「はぁ……はぁ……凌統、生きていたのか?」


「いや……確かに俺は死んだ筈だ。だが、カラス天狗なる者に出会い、再びこの地に舞い降りた」


 カラス天狗……いや、伊勢三郎義盛(いせのさぶろうよしもり)。生き返られる魂(チャンス)を凌統に与えたというのか?


「おい、タクマ! 魔合肥に夜明けが来たぞ!」


「甘寧……光が眩しいな」


 恐らくガシャドクロが倒れたことで、魔合肥は闇から開放されたのだろう。

 久し振りに見る日差しは、傷付いたオレ達の体を癒していった。


「これで三種の神器も揃った。残るは鬼骨王のみだ!」


 念願の究極進化……それを遂げれば奴を倒せる。


「ところでタクマ。ガシャドクロが言っていたが、“無力な人間になった貴様に”ってどういう意味だ?」


 もう黙っているワケにはいかない……妖怪達はオレの素性を知っているが、とうとうその時が来たようだ。


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