第百十二話 命の尊さ
異様な雰囲気に包まれる魔合肥新城――
オレ達の思いがガシャドクロにぶつけられる。
川姫が先陣を切りDDを振り上げると、その目は5のダイヤの爪を示した。
栄螺鬼は好機と言わんばかりに、一本だたらの肉片が絡み付いた爪のメンテナンスに追われるガシャドクロの懐に飛び込んだ。
そのダイヤの爪は、防御力が優れているガシャドクロにも有効だ。その骨は犇めきながら、ダイヤの爪に刈り取られていった。
ガシャドクロに157のダメージを与えた。――HP2843/3000――MP10消費78/88――
そして、先に受けたダメージが30ポイント回復した。――HP378/498――
この自己修復が栄螺鬼の強みだ。
「妖怪になんか負けてられないぜ! 呉に甘寧ありってな」
栄螺鬼の攻撃が終わるや否や、甘寧は青龍刀を引っ提げ鈴を鳴らす。
好戦的な甘寧とって、今は絶好の見せ場――暗闇にでも映える羽飾りは、残像するかのようにガシャドクロの前で優雅な時を過ごした。
「妖魔ごときが!」
「黙りやがれ、骨野郎――っ!」
両腕を交差さえ防御に徹するガシャドクロ――しかし、甘寧は瞬時に体を反転させ、青龍刀ではなく鎖鎌で応戦した。鎖鎌は強靭な骨に絡み付き、まるでノコギリのように削り付けた。
ガシャドクロに101のダメージを与えた。――HP2742/3000――
こうなると、オレも酒呑童子も負けてはいられない。
「酒呑童子、甘寧達に遅れを取るな!」
「テイマーよ、愚問だな。我輩、妖魔に劣っているとは思わない」
「だな……」
味方であるが故の、ライバル心。それはオレも酒呑童子も同じ気持ちだ。
「暴れて来い!」
示したDDは、6の薙刀無双――
酒呑童子は左手を大きく伸ばし、右手で薙刀を振り回す。隙がないと言えば嘘になるが、気迫だけなら十分だ。
「酒呑童子! 推参!」
甘寧とは違う正面からの攻撃。先程の攻防での軍配はガシャドクロにあったが、力が劣っているワケではない。
「来るか? 裏切り者め!」
「退け――ぃ!」
酒呑童子の薙刀を、両手を突き出し受け止めようとするガシャドクロ――しかし、酒呑童子は強引にそれを払いのけ薙刀で空高く打ち上げた。更に落下してくるガシャドクロを、横一線に切り裂いた。
ガシャドクロに170のダメージを与えた。――HP2572/3000――MP15消費58/73――
「ぐぁぁぁ……雑魚が……雑魚が――っ!」
酒呑童子の凄まじい一撃で、ガシャドクロは怒りを露にした。
だが、オレ達の攻撃はこれでは終わらない。続く凌統は、怒りで冷静さを失ったガシャドクロの背後に回る。
「何処を見てやがる!」
唸る凌統の方天戟――酒呑童子の攻撃から立ち直ったばかりのガシャドクロに、手痛い一撃を喰らわせた。
ガシャドクロに98のダメージを与えた。――HP2474/3000――
一通り攻撃を与えたが、ガシャドクロのHPは半分以上残っている。底知れぬ体力に打ち拉がれていると、孫権が長刀を掲げた。
「弓兵部隊、矢を放て――っ!」
予想外の孫権の援護。孫権の指示で
妖魔が放った弓矢は、ガシャドクロが逃げ場を失う程に激しく降り注いだ。
ガシャドクロに250のダメージを与えた。――HP2224/3000――
ここまでは良かった。だが、孫権は次の号令を上げた。
「歩兵部隊! 行け――っ!」
「孫権! 無茶だ! 一般の妖魔では……」
「タクマ殿、言った筈だ。恩義は返すと……」
ガシャドクロに雪崩れ込むように槍を向ける二百近くの妖魔達――隊長とも言うべき妖魔が先陣を切り、槍を振るう。
「何だ貴様らは! ゴミは大人しくしていろ! 死ね、ボーン乱舞!」
奮起したガシャドクロは肋骨を幾つか外すと、それを手に取り妖魔達を一網打尽にした。
二百近くいた妖魔達の部隊は150ものダメージを受け、一瞬のうちにその大半が屍となり、大地は削り取られるようにクレーターが出来ていた。
ガシャドクロはMPを30消費した。――MP120/150――
「こ、これは……何という力だ……」
「孫権……お前の気持ちは嬉しいが、これがガシャドクロの力だ。頼む……ここから先はオレ達に任せてくれ」
孫権は突き付けられた現実に、言葉を失った。恐らくやっと力の差を感じたのだろう。
「ゴミごときが!」
ガシャドクロは容赦なく、生き残った妖魔達にも怒りの鉄槌を向けた。
「孫権、退かせるんだ。じゃないと、皆やられるぞ!」
「そ、そうだな。皆の者、退け――っ!」
「逃がすか!」
ガシャドクロは逃げ遅れた一人の妖魔の首根っこを掴み上げた。
「ひぃぃ……助けてくれ!」
「ダメだ。死ね!」
ガシャドクロは妖魔の言葉を聞き入れず、無惨にもその首をはねた。
孫権の前に転がる妖魔の骸――
「私は何という事を……」
「孫権、誰しも過ちはある。援護してくれるのはありがたいが、命は粗末にしてはならない。後はオレ達が何とかする。妖魔達の手当てを!」
肩を落とす孫権に、オレは労いの言葉を掛けた。
死んだ妖魔達は、勾玉で生き返らせられる。だが、安易にそれは伝えなかった。
「川姫、行くぞ!」
「えぇ……」
死んでいった妖魔達の命は無駄にしない。決して――




