第百十一話 生きてこそ
「ん? 雑魚どもが揃いも揃ってノコノコと……。そうか、この磯女が死ぬのがそんなに見たいか。ならば見せしめに殺してやる――」
ガシャドクロは虫の息になった真琴を地面に起き、鋭く尖った爪をゆっくりと空高く掲げた。
真琴との距離――然程ではないが、どうしても前に足が出ない。
「死ね――っ!」
まるで公開処刑のように、繰り広げられようとしている惨劇――
「主……ご免!」
「い、一本だたら!」
懐に身を寄せていた一本だたらが、自らの意思で具現化する。そして、真琴に駆け寄ると覆い被さるように重なった。
それと同時にガシャドクロの爪は、一本だたらの強靭な肉体を貫いた。
「何だ、貴様は? 離せ!」
問い掛けるガシャドクロに、一本だたらは不敵な笑みを浮かべオレに言う。
「あ……主……。早く真琴を」
一本だたらを貫いた爪は依然として突き刺さったまま――いや、むしろそれが抜け落ちないように腹まで達した爪を押さえ付けている。
「タクマ、今のうちよ。一本だたらの優しさを無駄にしない為にも」
「お雪……わかってる」
戦闘に参加しない一本だたらが、命を張って真琴を助けた。恐らく奴も、これが非常事態だと肌で感じていたのだろう。
オレは一本だたらに突き刺さった爪を引き抜こうと苦戦しているガシャドクロを横目に、傷付いた真琴を抱き抱え後退した。
「お雪、真琴を頼む。まだ死んではいない」
「任せておいて」
オレは真琴をお雪に託すと共に、バトルフォースを解いた。
そして、代わりに酒呑童子を具現化した。
「酒呑童子よ、出番だ。いいな?」
「テイマーよ、我輩待ちくたびれた。次は一本だたらを救出する」
「頼む」
DDを握り締め、バトルフォースを展開しようとするオレに川姫が言う。
「私も栄螺鬼で戦うわ!」
頼もしい川姫の言葉。草薙の剣を奪われた今、川姫の援護は何より力強い。
「タクマ、抜け駆けはナシだ。俺様も戦うぜ!」
「甘寧……」
「そういうことだ。仲間が死ぬのは見たくない」
「凌統……」
「タクマ殿。我々を助けてくれた恩義……今こそ!」
「孫権まで……」
魔王だったその昔、信じれるのは自分自身だけだった。仲間といっても、それはオレに取っては捨てゴマ。人間の感情と実に豊かなものだ。
「皆――っ! 敵はガシャドクロ。絶対に死ぬなよ! バトルフォース展開!」
魔合肥新城にこだまするオレの声に、孫権の部下達である妖魔も集まり槍を天に掲げた。
酒呑童子 LV33 ランクS 特性 炎無効 庇う
HP525 MP73
攻撃力160
素早さ83
1 ミス
2.3.4 通常攻撃
5 灼熱烈破(20)
6 薙刀無双(15)
「バトルフォース展開!」
川姫もオレに続き、栄螺鬼のバトルフォースを展開する。
栄螺鬼 LV36 ランクS 特性 水吸収 自己修復
HP498 MP88
攻撃力148
素早さ99
1 クリティカル
2,3 通常攻撃
4 ミス
5 ダイヤの爪(10)
6 迸る水晶(12)
「凌統――っ! 俺様達も続くぜ!」
甘寧 LV30 ランクA 特性 一騎当千
HP390 MP29
攻撃力101
素早さ85
スキル『一騎当千』
凌統 LV30 ランクA
HP380 MP180
攻撃力98
素早さ80
スキル『鼓舞』
「ヘドが……ヘドが出るぞ!」
ガシャドクロはようやく一本だたらを引き抜き、声を荒げる。
一本だたらは、石壁に叩き付けられ気を失っているようだが息はある。
「一本だたら……真琴をよく守ってくれた」
「お、おぅ」
オレはお雪に真琴同様手当てを頼むと、ガシャドクロに睨みを利かせた。
「さぁ、これからが本番だ。草薙の剣を返してもらうぞ!」
一本だたらがこうなってしまっては、村正は使えない。仲間の力だけが頼りってワケだ。
素早さに長けているガシャドクロは、草薙の剣を手に取り凌統に狙いを定める。
「貴様が一番の雑魚だな?」
凌統が方天戟を構える前に詰め寄るガシャドクロ――それを見た酒呑童子は、その前に立ちはだかった。
「貴様は我輩が許さん!」
「退け――っ!」
酒呑童子が薙刀で草薙の剣を受け止めるも、その力は止まることを知らず150のダメージを受けた。――HP375/525――
「ぐわぁ……」
酒呑童子の象徴とも言うべき、五本の角が全てへし折られた。
茨木童子との融合で修復されたと言うのに、見るに耐えない。
「酒呑童子……俺の為に」
「勘違いするな、凌統。我輩、コイツが許せないだけだ」
酒呑童子に取っては不運とも言うべき事態だが、そんな奴の心意気をオレは嬉しく思った。
「情けない……角がない貴様はマヌケだな」
ガシャドクロは酒呑童子を罵倒すると、川姫の前に身構える栄螺鬼に鋭利な骨を飛ばした。
栄螺鬼は川姫を庇うように、全身でそれを受けとめ150のダメージを受けた。――HP348/498――
「栄螺鬼……ありがとう」
「問題ない。今の主は川姫だからな」
栄螺鬼も体を張って川姫を守る。それぞれがそれぞれの役割を果たす為に戦っているのだ。
今こそ力を一つにする時――
「皆、反撃だ――っ!」




