第百十話 圧倒的力のガシャドクロ
傍にいるは真琴だけ。それでもこうなった以上、ガシャドクロと戦わなくてはならない。
「お兄ちゃん……ボクが居るじゃない」
「真琴……」
そうだ――オレは一人じゃない。酒呑童子が居なくても真琴がいる。
「真琴……辛い戦いになるが覚悟はあるか?」
「愚問だよ。ボクは皆の為……黄泉の為に戦うよ」
真琴の奴……本当に強くなった。もはや、気持ちの面では誰よりも――
「じいさん、姿を変えたガシャドクロのステータスを頼む」
「あぁ、わかっとる。じゃが、タクマよ……これは負け戦じゃ。逃げる勇気も必要じゃぞ」
確かにそれもアリかもしれない。だが、たとえ逃げたとして、探し出されるのは時間の問題だ。
「じいさん……」
「わかっとる。戦うというんじゃろ?」
「すまない……オレには逃げるなんてことは出来ない」
「じゃろうな。ならば、行け! 最強のテイマーになる為に!」
真・ガシャドクロ LV45 ランクS 特性 AI二回行動 炎半減 水半減 雷半減
HP3000 MP150
攻撃力150
素早さ150
スキル 『ボーン乱舞』(30)
――真・ガシャドクロ……通常の姿は仮の姿。全てをさらけ出したこの姿は、鬼骨王のみしか知らない。その圧倒的攻撃力で、黄泉のナンバー2に登君臨した――
「こ、これがガシャドクロ?」
確かに強い……以前の姿が可愛く見える程だ。
ガシャドクロはペロリと舌を巻くと、強靭な拳を櫓に放った。
「おっと……何と脆い。触れただけでこの有り様だ」
悪いジョークだ。この櫓は、かなり頑丈に出来ている。それをたった一撃で粉々にするとは、まさに規格外――
「どうした? 掛かって来ぬのか? それとも真の私の姿を見て怖じ気付いたか?」
「貴様に怖じ気付く? 冗談も休み休み言え!」
そうは言ったものの、打開策などまるでない。
強気に出るオレに怒り心頭に発したのか、ガシャドクロはオレから奪い取った草薙の剣で真琴に襲い掛かった。
「速い!」
真琴はガシャドクロとの距離をある程度保っていた筈だ。それが、瞬きする間に正面に立っていたのだ。
「磯女! 貴様はここで朽ち果てろ!」
草薙の剣を振り上げたと思いきや、それは既に真琴の斬り付けた後だった。
「うぐっっっ」
真琴の自慢の長い髪は無惨に暗黒に舞い散り、同時に夥しい出血を伴った。真琴は150のダメージを受けた。――HP270/440――
しかし、ガシャドクロの攻撃はこれで終わらない。
ショートカットになった真琴の頭を鷲掴みにすると、魔合肥新城の正門まで跳躍し、その頑強な壁に叩き付けた。真琴は150のダメージを受けた。――HP120/440――
「真琴――っ!」
そう叫ぶも、距離があり届かない。こうなってしまっては、真琴に指示すら与えられない。
あまりに卑劣なガシャドクロの策略――奴には正攻法は効かない。
「じいさん……どうすれば?」
「う~む……」
肝心な時に役に立たない――迷っている間に、オレは瓦礫と化した魔合肥新城を駆け抜けていた。
当然、人間であるオレの足で直ぐに駆け付けられる筈もない。だが、オレは走るのをやめなかった。
「テイマーよ」
カード化した酒呑童子が、懐から呼び掛ける。
「何だ?」
「真琴を戻せ! 我輩が戦う」
「成る程……そうすれば真琴はカード化し、攻撃を受けなくて済むってワケか」
新たな可能性を感じていると、妖怪大翁が水を差す。
「甘い……甘いぞ、二人とも。確かにカード化すれば真琴は助かる。じゃが、回収しなければ酒呑童子のバトルフォースは展開できんぞ!」
「手詰まったか……」
やがて、諦めにも似た感情が芽生え、足は駆け足から早足に、早足から歩みに変わった。
「真琴……すまない。不甲斐ないオレを許してくれ!」
諦めたくはないが、これが現実――
――――
「タクマ――っ! 水臭ぇぞ!」
遠くに聞こえる甘寧の声――物見櫓の下の方――
「タクマ! 俺を忘れんな!」
この声は凌統――
「タクマ……諦めるなんて、アンタらしくないわよ」
お雪まで――
「タクマさん、私だって戦えるわ!」
川姫の声――
「タクマ殿!」
孫権……それに孫策、孫尚香まで――
「みんな……ありがとう……オレにはこんなに頼もしい仲間がいる! やられない……こんな奴に好き勝手にさせない!」
オレは再び正門に向かって走り続けた。
「はぁ……はぁ……」
どうやら間に合ったようだ。息を切らし顔を上げると、そこには甘寧達も駆け付けていた。
「タクマ! 草薙の剣はどうした?」
「悪い……奴に、ガシャドクロに奪われた」
「何だと?」
息巻く甘寧は草薙の剣を奪われたことより、目の前のガシャドクロに目を奪われた。
「コイツは! 孫権!」
「あぁ、間違いない。我々を陥れた妖怪……多少、姿が変わっているが、間違いない」
甘寧達はガシャドクロを見て、怒りを露にした。




