第百九話 ガシャドクロの狙い
ガシャドクロは、掛かって来いと言わんばかりに関節を鳴らし挑発してくる。余程の自信があるらしい。
「酒呑童子、真琴、頼んだぞ! バトルフォース展開!」
酒呑童子 LV33 ランクS 特性 炎無効 庇う
HP525 MP73
攻撃力160
素早さ83
1 ミス
2.3.4 通常攻撃
5 灼熱烈破(20)
6 薙刀無双(15)
磯女真琴 レベル32 ランクS 特性 理力攻撃 AI二回行動
HP440 MP88
攻撃力126
素早さ89
1.2 通常攻撃
3 ミス
4 長い髪(8)
5 吸血(10)
6 恵みの雨(12)
「成る程……磯女を出してきたか。戯れにヘドが出るわ!」
バトルフォースを展開するのを待っていたかのように、ガシャドクロは先制攻撃を仕掛けてきた。
広げたその手は、身長を凌駕する程に長く、それだけで威圧感が増す。
「くたばれ!」
言葉少なに怒号を上げると、巨大な鋏のように交差させた。退避する余地も与えない見事な全体攻撃――酒呑童子と真琴は、返しの付いた両腕の餌食になり120のダメージを受けた。――HP405/525――HP320/440――
「どうだ? 私の攻撃……気に入ってくれたか?」
「ほざいていろ! 貴様など相手にしてる暇はない。オレが目指すべき敵は鬼骨王のみだ!」
まずは真琴の攻撃――DDは1の通常攻撃を示した。
真琴はガシャドクロの死角である足元に回り込み、髪を巻き付けた。
図体の割りに軽々と持ち上げられたガシャドクロは、石壁に頭蓋骨を打させた。地味ながら意表を突いた真琴の頭脳プレイだ。ガシャドクロに、126のダメージを与えた。――HP624/750――
更に真琴は髪を針金のように変化させ、臓物を晒した肋骨へと突き刺した。ガシャドクロに126のダメージを与えた。――HP498/750――
「へへん、どんなもんだい!」
真琴の素晴らしい連続攻撃に、ガシャドクロは手も足も出ない。
ところが体勢を起こすと、不気味な笑みを浮かべた。その笑みに何が隠されているかはわからないが、此方が優勢なのに変わりはない。
「真琴にばかりいい思いはさせられない。テイマーよ、ご采配を」
強烈な真琴の攻撃で火がついたのか、酒呑童子は既に薙刀を構えている。
「酒呑童子よ、自分の力で過去を払拭するのだ!」
かつてガシャドクロにいいように利用されていたのに違いない。
“酒呑童子……今は自分の意思で生きたいように生きろ”
オレは言葉にすることなく、心にそう描きながら、DDを振った。DDは6の薙刀無双を示した。
「テイマー……ありがたい」
酒呑童子は再度薙刀を握り締めると、ガシャドクロに飛び掛かった。酒呑童子としても、“技”ではなく“薙刀”で勝負を仕掛けたかったのだろう。だからこそ、呟いた“ありがたい”。
「好きにはさせん!」
「我輩は……もう、自由だ!」
身構えるガシャドクロの腕を掻い潜り、酒呑童子の薙刀は横一線に引き抜かれた。肉が殆どない分、手応えはないように思えるが、薙刀は確実にガシャドクロの骨格を痛め付けたていた。ガシャドクロに167のダメージを与えた。――HP331/750――
「観念しろ! ガシャドクロ……」
「己れ、酒呑童子! 恩を仇で返すとは……ん?」
酒呑童子の攻撃を受けたガシャドクロは、オレに視線を向ける。
「主にはもう手を出すな!」
その視線に気付き、酒呑童子がオレの前に出る。オレの力が及ばないのは、さっきの惨劇で実証済み。それ故に、酒呑童子はオレを庇ってくれたのだ。
「手出しはしない。そいつを倒すと戦闘の楽しみが減るからな」
ガシャドクロは意味深な言葉を含みながら、再び両手を晒すと酒呑童子と真琴に攻撃を仕掛けてきた。
単調な攻撃……真琴は跳躍しながら躱し、酒呑童子は薙刀でガシャドクロの腕を弾き返した。
「可笑しい……。奴の力がこの程度の筈がないんじゃが……」
「じいさん、オレもそれは思っていた。明らかにされていないスキルが、どうも怪しい」
妖怪大翁も薄々と感じる、ガシャドクロの奥の手……。
兎に角、今は攻撃あるのみ。オレは真琴に対するDDを振り上げた。示した目は、5の吸血。
真琴はガシャドクロの右腕の骨にしゃぶりつき、腐蝕した関節から微量な血液を吸い上げた。ガシャドクロに100のダメージを与えると共に、100ポイント回復した。――HP231/750――HP420/440――MP10消費78/88――
「ぐぉぉぉ!」
ガシャドクロがその痛みを露にすると、関節から右腕が外れ床へと転がった。
更に真琴は、反対側の左腕にも追い打ちを掛ける。恐れを知らない真琴は、左腕にしがみつきながら拳を振り上げた。ガシャドクロに126のダメージを与えた。――HP105/750――
すると右腕同様に、関節から外れ床へと転がった。
「愉快だ! 実に愉快だ! この私をここまで楽しませるとは! どうやら、お前達は本気でこの私を怒らせたいようだな? ならば、見せてやろう……私の真の姿を!」
両腕を失ったガシャドクロは鋭い眼光を見せると再び骨を集結させ、闇を漆黒のマントに変えた。漆黒のマントを羽織ったその姿は、まるで死神のようだ。
翻したマントの隙間からは、最後の三種の神器である“鏡”がちらつく。
――刹那。
「これは頂く!」
呆気に取られているオレにガシャドクロは凄まじい勢いで接近し、鞘から草薙の剣を抜き取った。
「しまった!」
草薙の剣を奪われたことで、酒呑童子のバトルフォースの効力が消滅した。
「うぅむ。これが三種の神器の一つ、草薙の剣か。朽ち果てたと思っていたが、ここまで復活しているとは。さて、諸君……死ぬ準備は出来たかな?」
鏡を奪うどころか、草薙の剣まで奪われてしまった。しかも、草薙の剣がなければ酒呑童子のバトルフォースは展開出来ない。
「畜生……オレとしたことが油断した」
史上最悪の展開……真の姿を現したガシャドクロを相手に真琴だけで戦う事態になってしまった。




