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第百七話 憤慨の捨てゴマ

 魔合肥新城――物見櫓に色濃く漂う霧。もうすぐ夜明けだというのに、朝日が射し込む気配は全くと言っていい程ない。


「皆が起きる前にやらねば。バトルフォース展開……」


 バックベアードが倒れたことに歓喜をあげていた甘寧や孫権の仲間達――それなのにガシャドクロが姿を現したことを知ったら、それは嘆きに変わるだろう。

 事を荒立てない為にも、迅速に対応する必要がある。


栄螺鬼 LV35 ランクS 特性 水吸収 自己修復


HP490 MP85

攻撃力145

素早さ98


1 クリティカル

2,3 通常攻撃

4 ミス

5 ダイヤの爪(10)

6 迸る水晶(12)


 着実に力を付ける栄螺鬼。まだまだ伸びしろはありそうだ。

 一方の酒呑童子だが、茨木童子と融合した所為もあり、期待感は倍増だ。


酒呑童子 LV32 ランクS 特性 炎無効 庇う


HP510 MP70

攻撃力158

素早さ80


1 ミス

2.3.4 通常攻撃

5 灼熱烈破(20)

6 薙刀無双(15)


 今までの酒呑童子とは雲泥の差だ。バトルフォースこそシンプルだが、強力なスキルを備えている。しかも、ランクもAからSにアップしている。


「酒呑童子よ、見違えたな」


「主。お世辞は抜きだ。これに満足出来る我輩ではない」


 劇的な進化を遂げながらも謙虚に振る舞う酒呑童子を見て、ガシャドクロは目を見開いた。


「これは驚いた。九尾の狐と互角だった貴様がここまで成長するとは……だが、所詮力だけの鬼一族――」


 言いたい奴には言わせておけばいい……最後に笑うのはオレ達だ。


「じいさん、三つ目蜘蛛のステータスを頼む」


「わかっとる。ほれ!」


 ガシャドクロに不快な液体を浴びた所為か、やたら対応が早い。どうせなら、いつもこうあって欲しいものだ。


三(み)つ目蜘蛛(めぐも) LV30 ランクA 特性 AI二回行動


HP485 MP60

攻撃力120

素早さ90


スキル 『蜘蛛の糸』


――三つ目蜘蛛……普段は鉱山などの洞穴に住んでいるが、獲物を見付けると尻から出す強力な糸を搦めてくる。その蜘蛛の糸は、全てを燃やし尽くす程の火力がない限り断ち切れない――


 ステータス自体は大したことないが、蜘蛛の糸は注意が必要のようだ。

 だが、過去にもこう言った妖怪とは遭遇している。目目連(もくもくれん)が苦戦を強いられた絡新婦(じょろうぐも)だ。

 恐らく酒呑童子の灼熱烈破が、攻略のカギを握ってくるだろう。


「フハハハッ! 三つ目蜘蛛の糸は強力だぞ! 見事、脱出してみせよ!」


 ガシャドクロ――自分は手を汚さず高みの見物。

 酒呑童子の時もそうだったが、まるでゲームを楽しむような様だ。気に入らない――


「栄螺鬼! こんなドクロ野郎は放っておいて、オレ達は目の前の敵を撃破するんだ」


 先制攻撃は栄螺鬼。オレはDDを指先から離した。出た目は、6の迸る水晶……栄螺鬼の最高の攻撃だ。

 栄螺鬼は強固な鱗を擦り合わせ、気を一点に集中させる。背中からは湯気が立ち上ぼり、鈍い光を放つ水晶が完成した。

 以前のように素材(・・・)がなくても水晶の構築は可能のようだ。要は、透明感があるかないかの違いだ。


「はぁぁぁ――っ!」


 栄螺鬼が腹の底から唸ると、鋭く尖る水晶は剣山のような集合体となり、矢のように順次に飛び交った。

 避ける隙を与えない水晶は、その殆んどが三つ目蜘蛛の肉体を捉えた。

 水晶に抉られ剥き出しになった肉体は、見るも無惨な光景だ。三つ目蜘蛛に170のダメージを与えた。――HP315/485――MP12消費73/85――


「くそぉぉ! こんな、こんな筈じゃ!」


「三つ目蜘蛛! 冷静になれ。貴様には蜘蛛の糸があるだろう?」


「申し訳ございません、ガシャドクロ様……」


 三つ目蜘蛛はガシャドクロに叱咤されると、直ぐ様此方に向け切り返した。


「小僧! 痛い目をみないとわからないようだな。見せてやろう……蜘蛛の糸を!」


 警戒していた“蜘蛛の糸”。ある意味、これを回避出来れば三つ目蜘蛛など倒したも同然だ。

 三つ目蜘蛛は前屈みになると、その身を震わせ極太の糸を放出した。その見た目だけでも絡新婦の糸とは比較にならないことがわかる。


「ふしゅぅぅ……喰らえ、蜘蛛の糸!」


 まるで水柱が迸るように迫り来る蜘蛛の糸――それは後退する栄螺鬼へと向けられた。


「栄螺鬼! 逃げろ――っ!」


「御意!」


 栄螺鬼は持ち前の素早さを活かし、瞬時に方向転換をした。しかし、蜘蛛の糸は栄螺鬼に吸い込まれるようにみるみると巻き付いていった。


「ぐはっっ……息が……あ、主」


 栄螺鬼の悲痛な叫び――ダメージこそないが、纏わりつく糸は全身を圧迫し、ミイラ男のように仕立て上げた。


「何て言うことだ……このままでは窒息死してしまう」


 オレが真情を吐露する間に、三つ目蜘蛛は次なる攻撃を仕掛けた。


「死ね!」


 三つ目蜘蛛は無抵抗の栄螺鬼に飛び掛かり馬乗りになると、その頭に備えた一本の角で何度も腹部に向け突き刺した。

 やがて、栄螺鬼を包んでいた白濁した糸は、鮮やかな紅に染まった。栄螺鬼は、120のダメージを受けた。――HP370/490――

 身動きが取れない為、自己修復さえ発動しない。


「ざっとこんなものだ」


 三つ目蜘蛛は、さも勝ち誇ったような面持ちで勝鬨を上げた。


「主……栄螺鬼は早々にはくたばらない。ここは我輩に任せるのだ」


 項垂れるオレに、酒呑童子は耳打ちをした。

 酒呑童子に主(あるじ)と言われると、何処か擽(くすぐ)ったい。


「酒呑童子、主という呼び名はやめてくれ。兎に角、お前の言う通り、ここは任せる。思いきり暴れて来い!」


「御意!」


 オレは酒呑童子に全てを託し、DDを振り上げた。


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