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第百話 狂戦士と化した甘寧

 狂戦士バーサーカーへと変貌を遂げた甘寧――。


「うぐぐっ……」


 己の理性と戦っているのか、オレ達とバックベアードに青龍刀が交互に向けられる。


「甘寧――っ! 敵はあっちだ!」


 思わずそう述べた凌統に甘寧は気付き、睨み付ける。


「凌統……本当は俺様を憎んでいるんだろ?」


「過ぎたことだ……」


「嘘をつけ! 顔に書いてある。さぁ、剣を持て!」


「今更お前を殺しても、父上は帰ってはこない……まして、理性を失ったお前と剣を交えるなんて俺には出来ない……」


「ほほう……。その口振り……俺様に勝てるとでも?」


「勝てるかどうかなんて言っている場合じゃない……俺達の敵はバックベアードだ。思い出せ、甘寧。共に戦ってきた日々を……共に過ごしたあの日々を……」


「やめろ……やめろ――っ! 頭が割れそうだ!」


 会話の内容からすると、甘寧は理性を失っている。だが、本来の甘寧も心の中に共存しているのは間違いない。

 この理性を失った状況――見覚えがある。そう……オレが村正に魂を喰われかけたあの時と――。


「一本だたらよ、村正はあるか?」


 こうなれば答えは一つ。村正で甘寧の悪しき心を叩き斬るしか方法はない。


「主よ……準備は整っている。だが、草薙の剣の加護で真琴と水虎を具現化しているのだ。上手く扱うにはリクスが伴う……この状況、震震ぶるぶる居着いつきかみなりに憑依した時とはワケが違う。それに主が、村正の呪縛から解放されたのはなまはげのお陰だ。そこを勘違いするな……」


 確かに一本だたらの言う通りだ。だが、悪しき心を切り離すには村正しかないのだ。


「一か八かに賭けるしかないんだよ。これも全てオレの責任だから……」


 魂の定着化――オレがもっと早く気付いていれば、こんなことには……。

 オレは一本だたらから村正を奪い取ると、鞘から抜き取り甘寧に剣先を向けた。


「タクマ……俺様に剣を向けるか? 面白い……テイマーがどれ程の実力か見極めてやるぜ!」


「甘寧、少々痛いが我慢しろよ!」


「戯れ事を……」


 オレと甘寧が剣を交えようとしたその後方で、バックベアードがにじり寄るのを感じた。


「仲間割れか? これは傑作だ」


 バックベアードはこちらの隙を見て、攻撃に転じようとした。


「貴様の相手はこの俺だ!」


 凌統はオレ達の前に方天戟を構え、迫り来るその両腕を斬り付けた。バックベアードに90のダメージを与えた。――HP661/2100――


「己れ――っ! 邪魔立てするな!」


 バックベアードは直ぐ様体勢を整え、カウンターに出る。

 バックベアードもかなりのダメージを受けている。その証拠に両腕からは、溢れんばかりの鮮血が流れ始めていた。


「二度もくらうかよ!」


 凌統は方天戟を水平に構え、血飛沫を浴びながらもカウンターを防いだ。

 それを見届けたオレは、甘寧の胸元に村正で斬り付けた。


「甘寧――っ! 戻って来い!」


「甘い!」


 さすがに素早さに長けた甘寧だ。村正は空を切り、床へと突き刺さった。

 そう易々と魂を斬らしてくれそうにもなさそうだ。


「チッ……早く何とかしないと、水虎へのDDが振れない」


「タクマ、やっぱりお前に剣は相応しくないな。死ね――っ!」


 甘寧の青龍刀が、目の前に迫る。


――万事休す。


 思わず瞼を閉じると、痛みはない。恐る恐る瞼を開けると、血塗れになった水虎がオレを覆っていた。

 水虎は99のダメージを受けた。――HP138/397――


「主は我が守る……」


「水虎――っ! お前って奴は!」


 甘寧は水虎に突き刺さった青龍刀を抜き取ると、地べたに身を伏せた。


「お、俺様は何てことを……」


 どうやら水虎への一撃で、少しばかり理性が戻ったらしい。


「タクマよ、やるなら今じゃ」


 妖怪大翁はそれを見て、声を荒げる。


「あぁ、わかってる。……甘寧、ちょっとばかり我慢しろよ! ふぬぅ!」


 オレは身を伏せた甘寧に向け、村正で斬り付けた。


「うぎぁぁ――っ!」


 甘寧は断末魔に似た叫びを上げると、スクッと立ち上がった。


「タクマ……効いたぜ。へへっ、どうやら、荒療治だが魂も定着化したようだ。皆、心配掛けたな」


 甘寧と凌統は、血塗れになった手と手を合わせた。


「これで憂いは消えたようじゃな。それよりタクマ、水虎の様子が……」


 甘寧の一撃を喰らった水虎が、脱皮のような動きを見せる。


「水虎、まさかお前……」


「主よ……この窮地のお陰で“進化”が我を味方した。ふぬぅぁぁぁ!」


 刺々しい甲殻を背負い、しなやかに蠢く肉体には鮮やかな鱗。

 その風貌は、差し詰め神話に登場するような龍と言ったところだ。


「水虎……お前、本当に水虎なのか?」


「主よ、もはや水虎ではない。水虎改め、栄螺鬼さざえおにだ。以後、お見知り置きを」


 窮地に追い込まれたことで、栄螺鬼へと劇的な進化を遂げた水虎。

 オレは、バックベアードへの最後の反撃に出ようとしていた。









 

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