渡さない
これは選択肢の答えです。第九十六話を読んでないなら、そちらからどうぞ。
「勾玉は渡さない! お雪も助ける……そして、貴様を倒す!」
「欲張りな奴め。でも嫌いじゃないぞ……その好戦的な態度。――いいだろう……とことん相手になってやる! その後で勾玉は奪ってやる」
バックベアードのことだ、たとえ勾玉を渡しても約束を守るとは思えない。ならば、自力で救出するのみだ。
「凌統! バックベアードへの攻撃を頼む!」
「おぉ。任せてくれ!」
凌統はオレの意思を確認すると、方天戟を抱えバックベアードの懐に飛び込んだ。
そして、オレはお雪を見上げた。
「タクマさん……」
「わかってる」
オレは持てる力を振り絞り、出来るだけお雪に向かって跳躍した。しかし、人間であるオレに届く筈もなく、お雪に触れることなく落下していった。
「テイマーよ、何をグズグズしている。吾輩に任せろ!」
「酒呑童子! な、何をするつもりだ?」
「いいから吾輩に任せておけ! うおりゃ――っ!」
酒呑童子はオレを抱えたかと思うと、お雪に向け放り投げた。
「お雪――っ!」
「タクマ…タクマ」
オレが空中でお雪を抱き締めると、繋いでいた鎖は耳障りな金属音を鳴らし千切れた。
「ふっ。ナイスキャッチってとこか……」
「タクマ……ありがとう」
「礼を言うなら酒呑童子に言ってくれ!」
「酒呑童子……ありがとう」
「ふん……それより、いつまでイチャついてるのだ?」
酒呑童子に言われ赤面したオレは、傷付いたお雪を川姫に託した。
「やったようだな? これで俺も全力でいけるぜ!」
凌統はバックベアードの腸を抉るように、方天戟でかっさばいた。バックベアードに90のダメージを与えた。――HP1659/2100――
「さぁ、憂いはなくなった。あとは孫権達を救出するだけだ。オレ達も凌統に続くぞ!」
オレ達は反撃の狼煙を上げた。
体勢の崩れたバックベアードは壁にもたれ掛かり、カウンターさえ出来ない。
「今度は吾輩の番だ! 異国妖怪の恐ろしさ受け止めろ!」
凌統に続けと言わんばかりに酒呑童子は薙刀を振り回した。
凌統の攻撃に気を取られていたバックベアードは、避ける間もなく薙刀の餌食になった。バックベアードに90のダメージを与えた。――HP1569/2100――
「己れ――っ!」
バックベアードは腹の底から怒号を上げる。壁に手を着きながら、酒呑童子にカウンターである衝撃波を放つ。酒呑童子は避けようとするが、攻撃範囲の広い衝撃波から逃れることは出来なかった。酒呑童子は130のダメージを受けた。――HP300/430――
しかし、そんなことは構っていられない。
オレは直ぐ様DDを転がした。出た目は5の黄金の爪。
「水虎よ、お前も暴れて来い!」
「御意!」
酒呑童子へのカウンターに夢中になったバックベアードの足元に駆け出す水虎。その可憐な爪さばきは、もはや芸術モノだ。
焦点の合わないバックベアードは、水虎を視界に捉えられずにいた。
水虎の放った黄金の爪は、バックベアードの背面を床に着かせた。バックベアードに115のダメージを与えた。――HP1454/2100――
「そこか――っ!」
バックベアードは倒れたままの体勢で衝撃波を放った。水虎もまたカウンターの餌食になってしまった。――HP267/397――
ここまでは何とか五分五分に持ち込んでいる。だが、バックベアードは“石化睨み”のスキルを切り札として持っている。
お雪を救出したものの、油断出来ない状況は続いていく。




