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第九十四話 仲間の有り難み

 弔合戦ではないが、少なくともそれくらいの怒りは芽生えている。これ以上犠牲者は出したくないものだ。


「水虎……そして真琴よ。オレが言わなくても言いたいことはわかるな? コイツは生きていてはダメな存在……」


 正当な言葉は通じない……オレが魔王のままだとしても、コイツだけは兵隊にさえしなかったであろう。

 オレと似てるから? いや、いくらなんでもここまで卑劣な手は使わない。オレは曲がったことが嫌いだ。それは人間になった今も変わりはしない。


「バトルフォース展開……」


 静かにその目を閉じる。鬼骨王との決戦はまだだが、これはその前哨戦と言っても過言ではない。それだけバックベアードは、唯一無二の強敵なのだ。


水虎 LV29 ランクA 特性 水吸収


HP397 MP70

攻撃力88

素早さ70


1 クリティカル

2.3 通常攻撃

4 ミス

5 黄金の爪

6 津波


磯女いそおんな真琴 レベル31 ランクS 特性 理力攻撃 AI二回行動


HP425 MP85

攻撃力123

素早さ87


1.2 通常攻撃

3 ミス

4 長い髪(8)

5 吸血(10)

6 恵みの雨(12)


 戦力としては申し分ないが、バックベアードを倒すには心許ない。怒りと不安が入り交じった状態――


「じいさん……バックベアードのステータスを頼む!」


 全てを背負い込み妖怪大翁にそう切り出すと、甘寧と凌統がそれを遮った。


「おい、タクマ……。まさかお前一人で戦おうなんて思っちゃいないだろうな?」


 甘寧の申し出――オレは内心嬉しかった。だが、甘寧も凌統も件との戦いで一度死んでいる。つまり、勾玉の力を持ってしても生き返らせることは出来ないのだ。


「甘寧……気持ちは嬉しいが、お前達は一度死んでいる……」


「何が言いたい? 俺達が二度死ぬとでも?」


 否定したい所だが、今のオレにはそんな演技をする程の余裕はなかった。


「そう言うことだ……」


「タクマさん! 甘寧さん達の気持ちもわかってあげて! 死ぬと決め付けるのはあんまりよ。それに生きて帰ろうって言ったじゃない?」


 それまで沈黙を守ってきた川姫までもが声を荒げる。そう……何も出来ない――何もしてやれないという心境の川姫が一番悔しいのだ。


「川姫……でもな」


「私達をもっと信じてよ……仲間じゃない」


 そうだ。オレが今まで一番大切にしてきた言葉。――仲間。あの酒呑童子でさえ口では憎まれ口を叩いているが、必死で自分の役割を果たしている。


「甘寧……凌統……さっきの言葉を撤回する。改めて言おう……バックベアードを倒して生きて帰るぞ!」


「そう来なくっちゃ! 目一杯暴れてやるぜ! なぁ、甘寧?」


「あぁ……」


 四人の絆が深まったのを見届けると、妖怪大翁が言葉を挟む。その表情は勝利を示唆するかのように穏やかだ。


「うむ……うむ……お主らまた一段と逞しくなったのう。未来は悪くないようじゃな。ほれ、これがバックベアードのステータスじゃ」


バックベアード レベル45 ランクS 特性 AI二回行動


HP2100 MP95

攻撃力130

素早さ85


スキル『カウンター』『石化睨み』


――バックベアード……西洋妖怪の頂点に立つ西洋の悪魔。そのルビーのような赤く光る目に睨まれた者は石になってしまうという。しかし、その目が弱点だとも囁かれている。鬼骨王を倒し、黄泉を我が物にしようと企んでいるらしい――


 弱点はその大きな目。鬼骨王を良く思っていないのは同調できるが、黄泉を狙っているのは納得がいかない。やはり、排除すべき相手だ。


「さぁ、タクマ。出陣だ」


「あぁ、甘寧。宜しく頼む!」


甘寧 LV29 ランクA 特性 一騎当千


HP380 MP25

攻撃力99

素早さ78

スキル『一騎当千』


凌統 LV29 ランクA


HP365 MP175

攻撃力90

素早さ74

スキル『鼓舞』


「ぐわははっ!」


 戦闘態勢に入ろうとした途端、バックベアードが下品な笑い声を上げる。


「何が可笑しい?」


「それで我に勝てるつもりか?」


「自信はない……でもな、オレ達には信頼のおける“仲間”がいるんだよ!」


「仲間? そんなもの死語だな……ぐわははっ! 面白い奴だ。よし、まずは小手調べさせてもらうぞ! ミノタウロス、ミノタウロスはいるか?」


 ミノタウロスは酒呑童子と戦っている。ここに来る筈などない……。今度はオレが口角を上げた。


「ん? 何が可笑しい?」


「残念だが、そのミノタウロスって奴はここには来ないぜっ!」


「何?」


 その瞬間、背後に位置する扉が重苦しく開かれた。


「ハッタリを……来たではないか? 何をしているミノタウロス!」


 逆光の中、無言で迫り来る足音……。


「へへっ。残念だったな……。ミノタウロスは我輩が片付けた」


「酒呑童子――っ! 生きていたか?」


「当たり前だ。テイマーよ、コイツがバックベアードか?」


「あぁ……」


「確かにコイツはヤバそうだ。どれ、我輩も加勢させてもらうぞ!」


 酒呑童子は自らに気合いを入れると薙刀を構えた。


酒呑童子 LV27 ランクA 特性 盗む


HP430 MP63

攻撃力90

素早さ71

スキル『盗む』『薙刀無双』



「バックベアードよ。これが貴様が否定していた仲間というものだ。悪いが死んでもらうぞ!」


「己れ――っ! 己れ――っ! 纏めて八つ裂きにしてくれるわ!」


 逆上したバックベアードは、その巨体を壁に打ち付けながら熱り立った。

 

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