第九十五話 激越した鼓動
横目で酒呑童子を伺うと、オレを見ながら口角を上げている。間違いない――コイツはもう鬼骨王に戻らないだろう。
「真琴! まずはお前だ。妖怪の恐ろしさを教えてやれ!」
オレの手から離れたDDは、1の通常攻撃を示した。他のスキルも試したい所だが、ファーストアタックとしは十分だ。
真琴はバックベアードの冷血な瞳に警戒しながらフワリと宙に浮くと、弱点であるその瞳に向け衝撃波を放った。しかし、バックベアードは瞳を閉じそれをやり過ごした。バックベアードに123のダメージを与えた。――HP1977/2100――
「くっ……簡単にはいかないね。でも、まだだよ」
更に真琴は落下しながら衝撃波を放つ。今度は額に向けてだ。
バックベアードは予知していたかのように、その巨体を僅かに反らした。だが、攻撃範囲の広い真琴の衝撃波は的確に捉えていた。致命的なダメージではないが、破壊力は抜群だ。バックベアードに123のダメージを与えた。――HP1854/2100――
「まずはこんなものだろう」
オレは腕組みをしながら真琴の攻撃を称賛した。
「へへっ。ボクにだってこのくらい」
真琴がそう返すと、バックベアードは不審な動きを見せた。
「……真琴! 後ろだ――っ!」
「えっ? うぐわっ……」
それはバックベアードのカウンターだった。ファーストアタックが決まったことによる油断――真琴は地面に叩き付けられ130のダメージを受けた。――HP295/425――
「真琴――っ! しっかりしろ!」
「へ、平気だよ。コイツ……ボクを怒らせちゃったみたい」
真琴はバックベアードを睨み付け、敵意を剥き出しにした。今までの真琴では考えなれない仕草だ。
「怒らせただと? 低級妖怪が何を言う。どうやら西洋の悪魔の恐ろしさを知らないようだな! 教えてやろう……この素晴らしい力をな」
カウンターを仕掛けた上に更なる攻撃――確かに今までの妖怪達とは馬力が違う。
バックベアードは両手を床に付き、その巨体ごと真琴に頭突きした。ウェイトのない真琴は簡単に吹き飛ばされ、130のダメージを受けた。――HP165/425――
「痛てて……」
石壁に叩き付けられた真琴は、ひきつった笑顔を見せる。
「真琴、立てるか?」
「何とか……」
バックベアードは真琴が立ち上がるのを見届けると、またもや真琴を標的にした。
「まだ死なんか? ならば、これで終わりにしてやる」
その瞳を見開くと体全体でのし掛かる。えげつない攻撃の連続だ。
「さて……上手くプレス出来たかな?」
「かはっ……」
真琴は血ヘドを吐きながらも、その連続攻撃を耐え抜いた。しかし、早くも瀕死の状態だ。真琴は130のダメージを受けた。――HP35/425――
「おい、バックベアード! 真琴ばっかり狙ってんじゃねぇよ! この甘寧様が相手だ!」
「ほう……威勢がいいな。掛かって来い!」
「上等だ!」
甘寧は真琴に手を貸し避難させると、羽飾りを揺らしながら跳躍した。狙うはその瞳――。
青龍刀が横一線に振り抜かれる――が、しかし、これは甘寧のフェイントだ。直ぐ様柄を持ち直し、開かれた瞳を斬り付けた。バックベアードに105のダメージを与えた。――HP1749/2100――
「くそ……何故だ! 弱点の瞳にダメージを与えたってのに……」
「甘寧、十分だ。それより来るぞ! カウンターだ」
「わかってらぁ!」
バックベアードのカウンター。地面に着地した甘寧に繰り出された頭突き――しかし、甘寧はバックステップすることでそれを回避した。
「危ねぇ、危ねぇ……」
「まさか避けるとはな……気に入った。我の仲間にならないか?」
「断る……誰がお前みたいな怪物」
「口だけは達者だな。ますます気に入った」
「こりゃ、どうも」
オレ達はこのやり取りに気を取られ、気付いていなかった……。天井に吊るされたお雪の鎖が千切れようとしているのを――。
◇◇◇◇◇◇
一方、その様子を物陰から固唾を飲んで見守る者がいた。
――その名を“ガシャドクロ”。
「鬼骨王様……聞こえますか? こちらガシャドクロ。手筈通りテイマー共は戦闘を始めました」
――うむ……上手くいったようだな。ガシャドクロよ……。
「鬼骨王様……一つ気になることが」
――何だ? 言ってみろ!
「はっ。酒呑童子の奴……どうやらテイマー側に降ったようです」
――何だと?
「抹殺しますか?」
――いや、いい。泳がしておこう。我に考えがある。
「わ、わかりました」
――うむ。では、引き続き監視を頼んだぞ!
「ははっ!」
タクマは巨大な力が動き始めているとは知らず、目の前の敵に全力を注いでいた。




