↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
108/155

第九十二話 魔合肥新城を突破せよ!

「さぁ、件。オレ達に力を貸してくれ

」


「小生でいいなら喜んで」


 件は差し出したオレの手に、滑りのある手をそっと添えた。件をテイムすることに成功したのだ。


「さぁ、件よ。お雪を返してもらおうか?」


「主殿……残念ながらお雪という雪女、バックベアードの生け贄にするように部下である妖魔に頼んでしまいました……」


「き、貴様!」


「ひぃ――っ!」


「タクマさん、落ち着いて!」


 草薙の剣を引き抜こうとしたオレを川姫が止める。確かにここで件を責めても意味がない。戦闘に夢中になり、お雪の存在をお座なりにしていたオレも悪いのだ。


「何れにせよ、バックベアードは倒すべき相手のようだな。いいだろう……オレの強さを思い知らせてやる」


「そうそう、主殿……確か孫権とかいう妖魔が、バックベアードに石化する呪いを掛けられていましたよ」


「なんだと?」


 オレは頬に滴るイヤな汗を拭った。お雪が生け贄にされただけでも厄介なのに、孫権達が石化の呪いを掛けられているとなれば戦況はまたも不利だ。

 仮にバックベアードの元へ辿り着いたとして、こちらも石化されたらなす術はない。


「じいさん、どうしたらいいんだ? 頼む、少しでいい……知恵を貸してくれ!」


「う~む。迂闊に飛び込んでも、返り討ちにされるのが関の山じゃな。そうじゃ、件に捕らわれたことにしてみてはどうじゃ? そうすれば、容易にバックベアードに近付くことが出来る」


「成る程、いい作戦だ。油断したバックベアードを一気に叩くというワケか……件? 出来るか?」


「小生に出来るかわかりませんが、やってみましょう」


「話は決まったな。その前に甘寧と凌統を生き返らせてやらないとな。皆、甘寧達の体を集めるのを手伝ってくれ!」


「御意」


 オレ達はバラバラになった甘寧達の体を集めた。そして、勾玉に祈りを捧げ生き返らせた。


「タクマ、恩に着るぜっ! って、何で件といるんだ? そいつは敵だぞ」


 生き返ると同時に、凌統は件に向け方天戟を向けた。


「やめろ、凌統! コイツはバックベアードに操られていた被害者なんだ。今はテイムして、オレ達に降った」


「そういう事です。旦那達、済まないことをしました……」


「ふん、気に入らないな」


「甘寧……気持ちはわかる。だがな、孫権救出にコイツは必要不可欠なんだ。川姫、説明してやれ」


 オレがそう言うと二人を宥めるように川姫が間に入り、孫権達が石化してること、お雪が生け贄にされていること、そして、これからの作戦を述べた。オレが二人に説明しても良かったのだが、件の事で感情的になる恐れもある。それを避ける為に、敢えて川姫の口から言ってもらったのだ。

 甘寧と凌統は納得がいかない様子だったが、取り敢えずはオレ達の意見に賛成した。


「よし、件よ。魔合肥新城の中を案内してくれ」


「わかりました。では、小生についてくるのです」


 件はそう言うと、錆び付いた鉄の表門を開いた。

 中庭に入ると多数の妖魔が弓を引き絞り、此方に向けていた。皆、生気は感じられない魂の脱け殻のようだ。


「主殿、前方にバックベアードの右腕であるミノタウロスが見えます。悟られぬように……」


「ミノタウロス?」


 遠目でもわかる……上半身が牛の化け物だ。コイツも凄まじい妖気を感じるが、バックベアードはもっと凄いのだろう。


「おう、件。なんだって旨そうな奴等を捕まえてきたんだな」


「ミノタウロス、コイツらはバックベアード様に捧げる生け贄です。つまみ食いは許されませんよ」


「わ、わかってるよ」


「ところで、ミノタウロス。先ほど雪女を生け贄に送ったのですが、どうなりました?」


「雪女? あぁ、確かバックベアード様がデザートにするとかで、地下牢に閉じ込めたって話だ」


「そうですか……」


「そんなこと聞いてどうするんだ?」


「いえ、ただ気になったものですから。バックベアード様は謁見の間にいらっしゃいますか?」


「あぁ、さっきまで留守にしていたが、戻って来てる筈だ」


「ミノタウロス、忝ない」


 ミノタウロスは疑いもせず、大股で城門の方へ歩いていった。しかし、件の演技力は脱帽モノだ。此処で作戦がバレれば、オレ達に命はない。


「さぁ、この先にバックベアードがいます。気を引き締めてください」


 十数段の階段を駆け登ると、身体中の筋肉が硬直する程の妖気に襲われた。扉越しでもこの妖気……これまでの相手とは格が違う。

 件が開いた扉の向こうには、怪しげな霧に包まれた物の怪が存在していた。はっきりと姿は確認出来ないが、コイツがバックベアードのようだ。


「おぉ、件か? また生け贄を持ってきてくれたのだな?」


「はい、バックベアード様。今度のはバラエティーに飛んでおります」


「うむ、ご苦労だったな。では、あとでゆっくりと頂くとしよう……。お前もな!」


「な、何を仰います。ご冗談を……」


「件……我の目は節穴ではないぞ! 貴様らの浅知恵くらい見破れん我ではないわ! 皆の衆、子奴等を引っ捕らえ地下牢に閉じ込めよ」


「くっ……万事休すか」


「タクマ、ここは一旦大人しくするべきだな……」


 甘寧の言う通りだ。ここで暴れても状況は不利……ならばここは、大人しく捕まり態勢を整えるのが吉だ。

 これからの反撃を考慮し、抵抗もせず縄に繋がれた。妖魔に案内されたのは、バックベアードも言っていた地下牢。


「さぁ、この中に入っていろ!」


 オレ達はカビ臭い地下牢の中に、閉じ込められた。光も射さない分厚い壁――若干錆び付いてはいるがびくともしない極太な鉄格子。

 オレはやれやれと、薄汚れた石畳の床に腰を降ろし深い溜め息をついた。


「ん? その気配……テイマーか?」


 聞き覚えのある声……オレは溜め息を飲み込み、再び立ち上がった。




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。