↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/99

89.最終決戦への覚悟

 騒ぎを聞きつけて部屋を出ると、そこにはシオウが待機していた。


「シオウ! 魔王が現れたって……」


「はい、大壁の向こうに、空間の歪みが突如現れたとのことです」


「……行こう!」


 屋敷を出ると、大壁の方向に、その高さを余裕で超える大きさの黒竜の姿が見えた。まだ、村は被害が出ていないようだけど……走って間に合うだろうか?


「ゆうな、いたっ! ……乗るか?」


「うんっ。ありがとう!」


 少し走って村に近付いたところで、銀ちゃんに会った。獣姿に変わると、わたしを乗せてくれる。


「悪いけど1人乗りだ。シオウは走って来れるな?」


「問題ありません」


 銀ちゃんが一気に加速すると、一瞬で大壁の前についた。近付いてみると……王都を襲撃したときと同じように、黒い雲が立ち込めている。そして、そこからたくさんの魔物が湧いてきている。

 その場の皆が、黒い雲から出てきた魔物達と戦っていた。アレクスがみんなの先頭に立ち、エンクにまたがって魔物達をばっさばっさと倒している。やっぱり、尋常じゃないくらい強い……。

 これまた先についていたノアが、わたし達の姿を確認すると、急いで作戦を伝えてきた。


「黒竜は空間の歪からまだ完全に出てきていない。今のうちにあの黒い雲の中に押し戻して、俺達も一緒にあの中に入るぞ」


「わかった! ……でも、どうやって?」


「前みたいに、全力で光魔法を放っても、黒竜の体は全部こっちに出ているわけでもないし、大した効果がないまま、俺達の魔力が削られるだけだな」


「おれが殴り倒してやろうか?」


 ……なんだかうきうきした様子の銀ちゃんの提案は、却下された。


「確実な方法で行こう。ロイド、俺を乗せて跳べるか? けっこう細かく指示出すけど、その通り動いてほしい」


「わかりました」


 ロイドが変身する瞬間、銀ちゃんに向かって、ふっとバカにするような笑顔を向ける。銀ちゃんは不満そうに何か愚痴っていたけど、ロイドに乗ったノアはぐんぐん飛んでいった。「次は右! 真上に2メートル!」と細かい指示を出しながら、杖で何か描いていくノア。次第にその軌道は光りはじめ、大きな魔法陣のような不思議な模様になっていった……



「くそ! あと一部分で完成なのに、黒竜に狙われて近付けない」


 しばらく飛び回っていたノア達が、あと少しというところで、急に動きが鈍くなった。その間にも、黒竜が口を開き、ノアとロイドに向けて攻撃の準備を始めていた。


「うわ! 先生、さすがにあれは避けきれないですってば」


「……これは、死ぬな」


 その時、クレアの放った矢が、黒竜の顔を掠めた。一瞬にしてターゲットをクレアに変えた黒竜が、黒い光のブレスを放つ。


「……ノア様! 今のうちに!!」


「クレア! 危ない!!」


 避けきれない! わたしが瞬間的に祈ると、クレアのいたところに光の傘のようなものが現れ、黒竜の攻撃から身を守った。……でも、破られる!!

 ……と思った瞬間、スタークがクレアを抱えて、別な場所に避難していた。


「うわっ! 危ないですよ、まったく。無茶しすぎですってば」


「スターク! 私は別に助けてもらわなくても大丈夫よ」


「はいはい、素直じゃないところも可愛いですよ」


「……はぁ!?」


 無事で……よかった。クレアとスタークは何だかもめているようだけど、今は放っておこう。


「完成した!」


 わたし達がばたばたしている間に、ノアの大きな魔法陣が出来上がり、光を放ち始める。その光は直視できないほど眩しく、辺りは昼間のように明るくなった。


「あ……網!?」


 その光は……黒竜をすっぽりと包み込むような、大きな網……ネットのような形になっていた。黒い雲から半分体を出していた黒竜は、その網に絡まるようにしてひとしきり暴れた。でも、動けば動くほど絡まり、ついに諦めたのか再び黒い雲の中にゆっくりと戻っていった。


「ノア、すごい! なにその魔法!?」


「動きは封じられるけど、別にダメージを与えられるわけじゃないからな。黒竜が完全に戻ってしまえば、あの雲も消える。すぐに、追いかけるぞ」


「よしっ! 予定より早まったけど、行くか!」


 わたしが黒竜に気を取られているうちに、近くにいるほとんどの魔物を倒していたアレクスが近寄ってきた。


「アレクス、これから先はその幻獣は置いていけ」


「う……エンクは……だめか。ごめんな、良い子で待ってろよ」


 アレクスがエンクと別れを惜しんでいる間に、ロイドとノアは、動き出した。そのままためらいもなく雲の中へ飛び込んでいって、あっという間にその姿が見えなくなった。


「聖女様! 先に行っています」


 いつの間にか到着していて、魔物を切り倒していたらしいシオウも、大壁からジャンプして雲の中に飛び込んでいった。


「よっしゃ! みんな、村のことは任せた! 命は大切にな!」


 その場の皆に大声で挨拶をしたアレクスも、その後に続いた。



 これから……魔王との戦いが始まる……


「ゆうな、大丈夫か?」


 不安そうに銀ちゃんがわたしの顔を覗き込んできた。


「……うん、銀ちゃん、ありがとう。行こう!!」



 勇気を出して……わたしはついに、魔界へと踏み入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。