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85.作戦と決意とお土産

 「ちょっと散歩に行ってくるね」感覚で出かけた後、ぼろぼろになって帰ってきたわたしとノアの姿に、城の中は一時騒然となった。

 更に、ルドウェアにケンカを売ってきたと聞くと、みんな頭を抱えていた。ノア曰く、ルドウェアとの交流はここ数年ほとんどないし、攻撃をしかけてくるほど戦力も覚悟もあるわけでもないので、全然問題ないとのことだった。……今まで召喚した女性達への仕打ちを考えると、わたしもルドウェアとの交流がなくなってよかったと思う。



 数日後、ノアがみなさんを集め、ルドウェア訪問の報告を兼ねて、魔王討伐についての会議が行われた。


「この間ルドウェアに行ってきて、この杖を手に入れた……というか壊れてたのを、直して強力にしてきた」


 そういえば、杖の先端についている宝石は、初めて見た時は赤かった気がするけど……今は深い青色に変化している。ノアは強力にしたというけれど……?


「ユーナの増幅魔法は強力だけど、いちいち触れないと発動できないのが不便だ。だから、ユーナの力を、離れていてもこの杖が吸収して、そのままいつでも発動できるように魔力を組み替えた」 


「え? 聞いてないんだけど」


「もともとこの杖の力は、先端の宝石の魔力に依存していた。相当魔力の強い宝石だけど、限界はあった……でもちょっといろいろいじって、ルドウェアの中心部のエネルギーとユーナの魔力を取り入れられるようにしたから、まあ、実質魔力無制限使い放題状態になったということ」  


 まるでケータイプランみたいな気軽な物言い!!……そもそも、ルドウェアにわたしが連れていかれた理由が今一つわからなかった。でも、あの時……ノアが何か杖の性能を変えるために、わたしと一緒にルドウェアの動力源に触れたのだとしたら……この話も理解できる。ノアはどこまで計算してやっているんだろう? 


「もともと魔王討伐にはユーナの力が重要だったんだ。いちいち俺のそばにいなくても力だけ借りることができるようになったんだから、いいこと尽くめだろ」


 そうかもしれないけど……! そんな大事なことは先に説明してほしいよね。


「魔王を打ち倒すことのできそうな伝説の武器が、ここまで同時期に同じ場所にそろっていることは珍しいですね。シオウも先日、ユーナさまといっしょに剣を手に入れたということですよね?」


 レイヴァル様がシオウに聞いた。


「はい、名を業風といい、暴風を巻き起こす双剣です。周囲への影響も大きいので普段使いできる武器ではなく、持ち歩いてはいませんが……一度『魔王』をこの手で仕留めたことがありますので、性能に関しては問題ありません」


 え!? 故郷がなくなった話は聞いたけど、まさかシオウって魔王を倒した経験があるの? 部屋にいたみんなも言葉を失っている。まさかのシオウジョークでは決してないだろうし。いつも思うけど、シオウは重大発言をさらっと言いすぎだよね……


「そして、今は村に戻っているが、アレクスの手元にはレーヴァテインもある、と」


「アレクスの剣は、レイヴァル様が王家に伝わるものを授けたんだよね。やっぱり、相当強いの?」


「相当扱いが難しい、すべてを焼き尽くす威力を持つという炎の剣だな。まあ、あいつにはぴったりの武器だろ」


 ノアが教えてくれた。


 これなら……魔王退治も行けそうだよね。


「俺もついて行きますよ、当然。魔王を倒すために、ここまでがんばってきたんです」


 そう言ったのはロイド。黒竜との戦いで獣の姿に変わってからというものの、誰の前でもフードをかぶらず、ケモ耳を隠す様子もなくなった。


「……純粋な魔力は俺よりも強いし、戦力としては十分だろう、ロイドは」


「先生にそう言ってもらえると嬉しいです!!」


 ロイドは、ノアの言葉に嬉しそうに耳をピンと立てた。その時……


「ゆうな! 戻ったぞ!! ん? みんな集まってなんか真面目な話か?」


 バーンと扉を派手に開いて登場したのは、銀ちゃん。木彫りの人形やタペストリーなど、明らかなお土産品を抱えている。そういえば、国中を旅行してたんだっけ。ちょっと忘れかけていたとは絶対に言えない。……わたしは銀ちゃんもわかるように、簡単に説明した。


「つまり、魔王をぶっとばしに行くと。おれも付いてくぞ! ゆうなの魂の行く末を見届けにきたんだから、それ以外の選択肢はない」


「銀ちゃん……いきなり帰ってきてそんな決断、大丈夫?」


「このバカ犬は連れていっても戦力にならないと思いますけど」


「誰に向かって口きいてるんだ!? 今すぐてめぇの魂引きずり出して天に送ってやろうか!?」


「ちょっと、二人とも! けんかしてる場合じゃないって。わたしは銀ちゃんを頼りにしてるよ?」


 勝ち誇ったような顔でロイドを見下す銀ちゃん。……もう、二人とも別のところでやってほしい。


「……わかりました、ユーナ様が言うなら。ほんとは嫌だけど……んで、問題は、次に黒竜がどこに現れるかですね。王都に現れた時は、空間の歪みがたまたまそこにできただけで、また同じ場所に出てくるとは限らないと思うんです」


「おれ、ぐるっと国を巡って見てきたけど、今のところどこにも大きな異変はなさそうだったな。魔王が現れるくらいだから、周辺の魔力にも異変があってもおかしくないんだけど、全然そんな気配はなかった。そうそう、はい、旅行土産」


 銀ちゃんがその場のみんなに温泉まんじゅうみたいなお菓子を配り歩いた。数が微妙に足りず、ロイドには渡さなかったところで、二人の空気がまたぴりっと張りつめた気がした。……もう、放っておこう。


「現在、再び魔界との歪が生じる可能性が高い場所には、兵士を多めに配置して対応しています。幻獣騎士団は分散させない方がいいかと判断し、現在は王都の守備を任せているところです。そして、聖女様の力を借りている魔導士達については、連絡員としても戦闘員としても……かなり頼りとしています。皆さんも、何かあったらすぐに駆け付けられるように、準備をしておいてください」


 ウォーレン様の一言で、その場は解散となった。 

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