↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/99

74.日常……?

 ん……。


 アラームが鳴ってる。わたしは半ば寝ぼけてスマホを手に取った。今日は……うう、まだ火曜日だっけ。……もう少し、ごろごろしてようかな。


 ……って、そんなことしてたら、仕事に遅れる!


 勢いをつけて布団から飛び出したわたしは、身支度を整え、簡単な朝食を済ませた。いつもの朝のニュース。占いは……9位か。うん、微妙。


 その時、ふと思考に引っかかりを感じた。うーん、何かを忘れている気がするんだけど……仕事のことだったかな? いろいろと記憶を探ってみても、これという答えは見つからない。いまいち頭がすっきりしないまま、わたしは仕事へ向かった。


「おはようございまーす!」


「おはよう。あれ、月代なんか疲れてる?」


 会社の先輩からも気付かれるくらい、顔に現れちゃってるのかな?


「いえ、ちゃんと睡眠時間はとったはずなんですけど……なんだか寝つきが悪くって」


「最近うちの会社も忙しいからね。今度落ち着いたら、パーっとおごってあげる」


「やったーっ! これで、今日もがんばれます」


「月代さん、この資料……悪いけど2日後までにまとめてくれる?」


 別の方向からも声がかかる。


「はい、わかりました」


 半ば強引に気持ちを奮い立たせて、わたしはその日一日を過ごした。

 


 ・・・・・・


「つ、疲れた……」


 今日は金曜日の夜――。やっと……やっと! 週末だ!! 帰り道、ふと見上げた空には、明るい星が一つ、輝いていた。


 ……なんだろう? 誰かと一緒にきれいな夜空を見上げた記憶があるような。昔、キャンプに行った時の思い出? ……うーん、わからない。 


 家に着くころには完全に体力と気力がなくなり、ぐったりとしていた。今週は、なんだか特に長く感じたな。さっきの夜空もそうだったけど、ずっと頭の奥に引っかかるものがあって、それが事あるごとに思い出されて心が落ち着かない。どうしても仕事に集中できなかったし、そのせいにしてはだめだけど、小さなミスもいくつかしてしまったし……。


 お風呂に入った後、そのまま寝てしまってもいいかと思ったけど、何となく、実家に電話しようと思い立ってスマホを手に取る。


『……どうしたの? 仕事の後に電話してくるなんて最近あんまりなかったじゃない』


「うん、お母さんと話すの、なんだか久しぶりな気がして……」


『久しぶりって言っても、先週の土曜日も話したと思ったけど?』


「そうだっけ? まあ、いいじゃない」


 何だろう、この懐かしいような気分。この後すぐ寝てしまえば、明日には元気も出るよね。見たい映画もマンガもあるし、たまには凝った料理を作ってもいいかもしれない……そんなことを考えながら、ごろごろしつつ電話していると、ベットの下になにか転がっているのが見えた。


「よいしょっ……と」


『どうしたの?』


「うん、なんでも……」


 腕を伸ばしてそれを手に取ると、高価そうな宝石のペンダントを発見した。なにこれ! 見覚えがないんだけど、なんでこんなところに落ちてるの?


 あれ……わたし……


『結名? どうしたの?』


 自然と涙がこぼれる。そして、せきを切ったようにユーナとしての記憶があふれ出てくる。宝石を手にしたわたしは、その瞬間に全てを思い出していた。……わたしは、何でこんな大切な事を忘れていたんだろう?

 

 みんなに……会いたい。数日、元の世界で過ごしただけなのに、ひどく恋しい。そう思うほどに、セント=フェアリア王国での生活に慣れてしまっていた。


 でも、わたしは……もう、みんなに必要とされていない?


 ノアが無理にわたしを元の世界に引き戻した記憶に、チクリと心が痛む。そして、みんなそれを知っていて、わたしに別れを告げていた――。わたしの不安な気持ちに答えてくれる人はいないけれど、手に持つ宝石は、静かに青い光をたたえている。


 何となく、感じた。もう一度戻れば、二度とここには帰ってこれないだろう。わたしがあちらの世界に戻ったところで、居場所はもうなくなっているかもしれない。それでも……


「お母さん、ごめんね。わたし……」


 ――戻りたい。


 わたしの願いに反応するかのように、宝石が強い光を放ちだした。



『その石が、必ずあなたを導きますから!!』


 

 ロイドが言っていた最後の言葉を思い出す。目の前の青い宝石は、きっとわたしを望む場所へ連れて行ってくれる。


 ……わたしはその大きな流れに再び身をゆだね、静かに目をつぶった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。