61.リア充ユーナと切ないアレクス。&ツンデレ
久しぶりにやってきたオーク村は、以前よりも活気に満ちあふれている……と思う。アレクス達が、がんばっている証拠じゃないかな。わたしがいない間、サンルードのような魔物襲撃事件もなかったというので、ほっとする。
アレクス達と再会を喜んだわたしは、さっそく村のいろいろな場所を見て回った。
「よし、ここに決めたっ!」
わたしは、『聖女の絵』を、オーク村の集会所に設置させてもらった。
「ユーナの似顔絵?」
「サンルードの首長さんからのいただき物なんだけど……自分で持っていても飾りどころに困っていたから、相談したんだ。そしたら、好きに活用していいと許しをもらったから、ここに飾らせてもらうね」
村の商店では、これまでみんなで相談してきたハチミツが、遂に商品化して売られ始めている。聖女の里として知名度も上がってきているので、オーク村を訪問してきた旅人の観光スポットにでもなってくれれば儲けものだ。
「これは……いいな。離れていてもユーナがいつも見守ってくれている気がする」
「ちょっと、美化しすぎてる感じもするんだけどね……」
「そうか? 聖女らしくて、すごくいいと思うけど」
次の日には、村の魔導士さんに会いに行った。はじめの頃、お城の仕事をクビになってシオウと一緒に戻って来た魔導士さんだ。召喚魔法を使った手紙制度のことを説明し、聖女守りを渡すと、喜んで引き受けてくれた。村の周辺にも知り合いの魔導士さんがいるということだったので、いくつかお守りを託した。
魔導士さんネットワーク、どんどん広がっていってくれると嬉しいな。
オーク村での日々は、いろいろ手伝っているうちに、予想通りあっという間に過ぎていった。
もうすぐ王都に帰るというある日の夜、アレクスがわたしの部屋に訪ねて来た。
「ユーナ、あと数日で本当に帰ってしまうんだよな?」
今回のオークへの滞在期間は、来る日が遅れた分後ろにずれるわけではなく、結果的に短くなってしまった。
王都では、レイヴァル様が心配して待っているだろうし、シオウも付いてきてはくれているものの、どう考えても最近多忙そうだからしょうがない。
「ごめんね。本当はもっと居たかったんだけど……また、必ず来るから」
「今回、村に来るまで……ちょっと、俺の存在忘れかけてたでしょ?」
「ええっ!? そんなことないから!」
アレクスらしからぬちょっとすねた感じの物言いに、びっくりする。
「そう、か。ユーナが帰ったら……また、一日一日が長くなるな……」
みんながわたしの事を必要だと思ってくれて、迎え入れてくれることはとても嬉しい。……でも、わたしは全部を中途半端にしてしまっているのかもしれない。アレクスにだって、こんな顔……してほしいわけじゃないのに。
「……ごめん。笑って送り出してやりたいけど……ちょっと今回は無理そう」
気付くとアレクスの顔が息を感じるほどに近付いて……。
そのまま、わたしの肩におでこが乗せられた。
び、
……びっくりしたー!!
「王都に戻っても、手紙……書くから」
「うん……」
いつも真っすぐに、温かく接してくれるアレクス。アレクスには、ずっと笑顔でいて欲しい……。わたし達は、しばらくそのままの格好で立っていた。
・・・・・・
わたしが王都に帰ってから、更に時間は過ぎていった。オーク村もサンルードも、近況を魔導士さんの手紙制度で報告してもらっている。アレクスとも、手紙のやり取りが簡単にできるようになった。
その便利さを知った人達から広まって、各地の魔導士を利用した手紙配達制度が人気になっているという話も聞いている。また、サンルードの工場で作られたお守りは大人気らしく、生産が追い付かないほどらしい。わたしの所にも定期的に送られてきて、祈りを捧げて完成させている。
こんな内職みたいに作られたお守りがありがたがられるとは……何となく申し訳ない気もするけど。
そうして、いつの間にか、季節はすっかり冬になっていた。
ある日、図書室で本を読んでいると、ノアに声を掛けられた。最近は割と当たり前の光景になっている。
「おまえさ、今各地の魔導士達と手紙でやりとりしてるんだろ?」
「うん、我ながらいいアイディアだと思うよ。けっこう順調にネットワークも広がっているし」
「それ聞いて、いいこと思いついたんだけど」
ノアが突然図書室から出ていく。
すばらくすると、召喚魔法の光が現れる。……わたしの目の前に顔一つ分くらいの小さな輪ができていた。
『……聞こえるか?』
「え、ノア?」
『何も、物理的にモノを通さなければいけないってわけじゃないだろ。声だけでも、連絡を取る手段としては使えると思う』
「電話みたい!! すごい!!!」
……はっとして、辺りを見回す。図書館で大声で電話するマナー違反みたいなことをしてしまった。恥ずかしい……ノアに頼んで、別の場所に移動して試してみてもうまくいったので、これは今後使えそうな技だ。
「ちなみに、それだけじゃない。発動できる者は限定されるだろうけど、これくらいの大きさだったら一度に複数の召喚魔法を発動して、一斉に情報を伝えるのにも使えそうだと思ってる」
「す、すごーい! 一斉通話ですと!? もしもできたら、一気に便利になるね。ノア、天才!」
ノアと話していると、いろいろな面白いアイディアが次々と産まれて、とても楽しかった。
「また、相談させてね。……そうそう、お礼にと言ってはなんだけど、聖女守り、ノアもお一つどう? 最近の魔導士さん人気アイテムになってるよ!」
「くだらねー……」
この話にはさすがに乗らないか……と思ったら、ノアは文句を言いつつ、お守りを一つ手にして帰っていった。ツンデレかっ!!
それから数日後……事件は起こった。




