58.サンルード復興
レイヴァル様に丁寧にお礼を言い、数時間で帰ってくることを約束したわたしは、サンルードの街に来ていた。ラグレスさん達幻獣騎士団は、別の地域に再び遠征しに行ったので、わたしは今回移動魔法で来ている。
今日はロイドやシオウも忙しく、短時間で帰ると約束したこともあって、お城から二人の護衛さんが付いてきてくれている簡単な訪問だ。
『そもそも、魔法を使うのであれば、以前も私がついてくることもできたのでは?』
……というシオウの声が聞こえてくる気がするけど、幻聴だよね。きっと、シオウが多忙すぎてわたしに振り回されているから、みんな気を遣っていたんだ……たぶん。
サンルードに着いたらまず、カイルに聞いていた街の首長さんの元を訪ねた。
「お待ちしておりました! いやあ、こんなに美しい方が我々の街を救ってくださった聖女様だとは。街の皆を代表して、お礼を言わせてください」
ん? なんだか初対面なのに、この人見たことがあるような……
「いつも、息子がお世話になっていると聞いていますよ。今回も、無理を言って来ていただいたようだし」
「え……! ということは……カイルのお父様!?」
そう言われれば、顔立ちも雰囲気も似ている。いきなり手を握られたりはしなかったけど。
「街の皆にも伝えてありますし、どうか、声を掛けて勇気づけて回ってくださいませんか? カイルは……すみませんね、その辺、ふらふらしていると思うんですけど」
「はい! 今回はそのために来たんです。いろいろ行ってみますね」
首長さんへの挨拶を終えたわたしは、街に出かけて被害の様子を見たり、声を掛けたりして歩いた。いろいろ見ていると、サンルードは物作りや商業の発展している街だと分かってきた。どのお店や工場でも、みんな忙しそうに建物を修復したり、商品を並べたりしていた。
こんなに大きな街があれだけの魔物被害に遭ったというのは、大変な損害が出たんだろうな……。
しばらく歩いて、わたしは一件の工場で呼び止められていた。
「よく来てくださいました。実は、前々から『聖女守り』の開発をしていたところだったんです。工場は魔物被害に遭ってしまったんですが、本物の聖女様が来てくださったんです! 工場も街も、必ず復興してみせますよ」
見せてくれたのは、雫型の透明の石が取り付けられた、ストラップのような物。
「とっても素敵ですね」
「勝手に聖女様のお姿を想像して製造していたんですが、実際にこうして会えて、イメージ通りだったので良かったですよ」
このお守りを手にした人たちが、少しでも幸せになりますように……。
わたしが何の気なしに祈ると……不思議なことにお守りの石がほんのり青色に輝いた。
「これは?」
「まさか、付与効果をつけてくださったのですか!? しかも……近くにある他のお守りにも効果が表れているようだ……!」
工場の皆さんと調べると、聖属性の魔力が少量増える効果がついたらしい。祈るくらいでいいならと、在庫として置いてあったお守りにひとしきり魔力を込めて大量生産しておいた。大して働いた気もしなかったけど、ものすごい勢いでお礼を言われ、半ば強引に一箱分もらった。
……どうしよう、これ。
その後もいろいろな場所を回っていると、自慢の商品をお礼にとプレゼントされ、護衛さん二人とわたしでは持ちきれないほどになってきた。そこに、再び声が掛けられる。
「こんにちは! あなたが、聖女様ですね。以前、遠くからお目にかかった程度だったので、今回お会いできて嬉しいです」
話しかけてきた人に見覚えはなかったけれど……服装が魔導士さんだ!
「もしかして、お城の召喚の儀にいました……?」
「はい、あの時私も参加していたんです。……まあ、大した魔力もない人間ですので、こうしてクビになって地元へ戻っているわけなんですけど。先日の魔物被害だって、せいぜい数匹倒すだけで、ほとんど役立つこともできませんでしたよ」
魔導士さんは少し寂し気に笑った。
「ところで、みなさん、荷物重そうですね」
「はい。行く先々でいろいろもらっちゃって……。いったん首長さんのところに置かせてもらおうと思って戻っているところなんですけど、なかなかの量で……」
そこで、ピンとくるわたし。この魔導士さんに召喚魔法を使ってもらい、わたしが増幅させれば、人間までは無理でも、荷物くらい移動できるのでは……!?
魔導士さんにお願いをしてみると、快く引き受けてくれる。実際に試してみると……思った通りうまく行った。
そこでわたしは、更に閃いてしまった……! 今回、サンルードからの被害の訴えが王都に届くのに、時間がかかっていた。召喚魔法、活用できないかな。わたしの増幅魔法がないと、魔導士さんができるのは500円玉くらいの大きさくらいの光の輪だったけど……
「あの、これ。わたしだと思って持っていて欲しいんですが」
さっき大量にもらったお守りの一つ、手元にあった物を魔導士さんにプレゼントした。
「いいんですか? これは……ほんの少しだけ魔力が感じられますね」
「そして……実験に付き合ってほしいのですが……」
再び試してもらった召喚魔法は、お守りを持っていることで、明らかな違いが出た。書状くらいなら届けられる程度の大きさになったのだ。
「やった、大成功! 魔導士さん、今度何かあった時、王都に向けて召喚魔法を発動させて手紙を送ってください! そうしたら、すぐにサンルードの状況を知ることができますから!」
「それはとても良いアイデアですね……! これなら、自分でも役に立ちそうです。聖女様はとても行動力のある方だと噂で聞いていたんですが、予想通りの方でした。本当に、ありがとうございます!!」
今後更に……各地にリストラされた魔導士さんがいるとしたら……召喚魔法を使って流通ネットワークを作れないかな。
わたしの妄想はどんどん膨らんでいた。




