46.騎士団祭り~レイヴァル様と一緒~
その日は、わりとすぐに訪れた。朝から、城中が慌ただしい気がしたので何事かと聞くと、リリィが今日は祭りだと教えてくれた。
「ユーナ様は、初めてですものね。騎士団祭りというんですよ。何でもセント=フェアリア建国の際に、活躍した騎士を称えたのが始まりだとか。騎士の皆さんが活躍する舞台ももちろんありますし、街の中には出店も立ち並んでいるので、見に行くだけでも楽しいと思いますよ」
「ええっ!? やったー」
テンションが上がる。リリィはあまりにも忙しそうだったから誘えなかったけど、レイヴァル様と前に約束しているし、待ってたら誘ってくれるよね。
ワクワクしながら待っていると、時間の流れが遅く感じる。
レイヴァル様、忙しいのかな……こっちから誘いに行っちゃおうかな。……もしかして忘れられてたりして……
部屋の中を無駄にうろうろしていると、ノックする音が響いた。レイヴァル様の使者かな!!?
「はいっ!!」
ものすごい勢いでドアを開けると、なんとレイヴァル様本人が立っていた。
「ユーナさま、おはようございます。約束、覚えていらっしゃいますか?」
「……ま、まさかわざわざ来てくださったんですか!? もちろん、ものすごく楽しみで、今ずっと落ち着こうと動き回っていたところなんです。その……とても嬉しいです」
わたしを見てにっこりと微笑むレイヴァル様。そのまま城を出て、王族専用の立派な馬車で移動した。
今、わたしがいるのは円形の闘技場の観客席。特等席だと思われる前列に、レイヴァル様と一緒に座っている。これって、テレビとかでよく見るコロシアムだよね! まさか海外旅行でもないのに、こんな場所に来られるなんて思わなかった。闘技場はものすごい数の人々で溢れ返り、熱気が伝わってくる。
「ユーナさまはこのような場所は初めてですか?」
「はい、めちゃくちゃ感動してます」
そこで、ふと心配になる。この世界の闘技場って、何が行われるんだろう?
「……レイヴァル様? もしや抵抗する術のない者たちを猛獣が襲うさまを見たり、奴隷同士死ぬまで戦わせたりする世界観ですか?」
「まさか! 国民たちにそのような扱いはしません。騎士団の部隊がいくつもありますので、模擬戦を行うんです。多少の怪我人は出ますが、平和を願う祭りなので、ユーナさまが思っているような残酷なことはしませんよ」
「それを聞いて安心しました……あっ、でも、この世界って魔法が使えるじゃないですか。炎の剣とか、そういうファンタジーなの、あるんですよね? それに、『幻獣騎士団』っていうのもどんな戦いをするのか気になっていたんですよ。もしも見られたら、感動するなぁー」
レイヴァル様と話していると、いつの間にか広場部分にたくさんの騎士さん達が並んでいる。レイヴァル様は立ち上がり、騎士の皆に向けて話し始めた。
「セント=フェアリア建国から今日の繁栄まで、騎士の皆の影響は計り知れません。日ごろから鍛錬を怠らず、命をかけてこの国を守ってくれる皆に感謝し、この良き日を盛大に祝いましょう」
広い会場いっぱいに、レイヴァル様の声が響き渡る。堂々として威厳すら感じるレイヴァル様の姿は、初めて会った時とあまりにも違っていた。レイヴァル様は続ける。
「更に、今年は神への願いが通じ、我々のもとに聖女様を遣わせてくださいました。聖女様の存在は神の意志と同意です……聖女様は。炎の剣、幻獣騎士団の活躍を楽しみにしているとのことです」
湧き上がる会場。そんな紹介のされ方をしたわたしはぎくしゃくしながらも皆に手を振る。
ん? 何やら、舞台裏は慌てているようだけど?
その後始まった騎士団の戦いは、模擬といえどすごいものだった。馬に乗った騎士同士の一騎打ちや、剣舞など、どの演目もずっと見ていても飽きない。
ただ、炎の剣と紹介されたものは、持っている人が火傷してしまうハプニングがあった。あの時、裏で慌てていた理由がなんとなくわかった。……後で、火傷した騎士さんに回復魔法かけてあげよう。
最後に出てきたのは、ラグレスさん!? 虎に似た魔物のような生き物に跨っている。その虎は、ラグレスさんの指示で空中に舞い上がり、観客席の上をくるりと飛んだ。
あれが『幻獣』というのだろうか? 優雅に空を舞うラグレスさんと虎のような生き物は、永遠に見ていたいくらい美しかった。
ただ。
なかなか集中できない……
なぜって……
さっきからずっとレイヴァル様がずっとわたしの手をにぎっているから。すごく気恥ずかしいのだけど、これはこの世界のスキンシップで当たり前なのかな? もしくは……
「レイヴァル様……もしかして怖いんですか?」
(まだ若いし、あまり戦いなどお好きではなさそうだもんね)
10秒ほどの間。そして、レイヴァル様のため息。
「はあ……。ユーナさまは、ラグレスについてどう思っているのですか?」
「へ?」
……
予想外の応答に、つい変な声を出してしまった。何、これ。レイヴァル様はわたしの答えを待って、じっとこっちを見ている。
「ど、どうって別に、何もありませんよ! 何しろ2回しかお会いしたことないですしっ べ、別に、ちょっと素敵だなーとは思いますけど、それは騎士様全般に言えることでして!」
「……ふうん」
レイヴァル様の目はわたしを値踏みするかのように細められる。な、なんでこんな尋問を受けているんだ……!!
「まあ、いいです。今のところは。……私はすぐにでも、ユーナさまに追いついてみせますから」
「あのー、話の流れがつかめないのですけど……? もうちょっと分かりやすく説明してもらえます?」
「そうですね、いずれは」
それきりレイヴァル様は闘技場の方に向き直り、その話は無理やり打ち切られてしまったようだった。ただ、騎士団の戦いを観戦している間、わたしの手はずっとレイヴァル様と繋がったままだった。




