37.宴会!
「ユーナ、シオウ、宴会を開くぞ!」
アレクスがエンクを従えてから一週間。アレクスは驚異的なスピードで回復し、すっかり元気になっていた。
「お兄様! 病み上がりのくせに、何をおっしゃってるんですか」
クレアが眉間にしわを寄せる。怪我を負ったアレクスを連れ帰った日から……クレアは献身的にアレクスの看病をしていた。でも、アレクスが元気になってくると、日増しにお説教時間が長くなってきている。
「そもそも、あえてそのような危険な場所に行くなど、領主としての自覚が足りませんわね!! しかもユーナまで危険な目にあわせて……」
「ううっ、わかった。その件は十分に反省したから。でも、さ? 明日でちょうど一か月、二人が帰ってしまう日だろ……盛大に送り出してやらなきゃ申し訳ないだろ!」
「もうそんなに経つのですね。まあ、それならしょうがない……」「じゃあ、村のみんなを誘ってくるな!」
次の瞬間には走って出かけて行ったアレクスを見て、クレアは大きくため息をついていた。
その夜。宴会が盛大に開催されていた。
もともとオーク村の人たちはお祭り騒ぎが好きなようで、何度かこういう集まりには呼ばれている。わたしも、大いに盛り上がった。
サイラスさんの孫の話を聞いて楽しんでいたわたしは、離れたテーブルで話すアレクスとシオウを見つけた。
「私は仕事中ですので、酒は結構です」
「ユーナの護衛のことか? シオウ、お堅いな! じゃあさ、ユーナが命令したら飲むのかよ?」
あ、アレクスが絡んでる! しかもたちが悪そう!
「ちょっと、病み上がりのくせに飲みすぎです!」
クレアが近づき、アレクスのグラスを取り上げる。
「今日くらいいいだろ~! それより、シオウにもなんか言ってやってよ」
「まあ、そうですわね。私達村の人間はシオウ様にも感謝していますのよ。最後の夜くらい、少しお付き合いくださいません?」
クレアにもお酒薦められてるシオウ……ちょっと困ってそう。そこで、わたしも近寄って話しかけた。
「わたしの護衛って24時間仕事ってことになるなら申し訳ないよ。今日くらい、お休みでもいいんじゃない?」
「いえ、そういうわけには行きません」
相当酔っぱらったアレクスがこっそり耳打ちしてくる。
「あんなこと言って、あいつ飲めないだけなんじゃないかな?」
「アレクス、そんなこと言っちゃだめだよ。わたしの世界じゃお酒の無理強いは『アルハラ』っていう言葉があるくらい、悪いことなんだよ! シオウがかわいそうじゃない」
「シオウ様にも楽しんでいただきたいのですが、下戸ではしょうがないですわね。この後、村人のど自慢大会に参加して盛り上がっていただきましょうか」
こそこそ話していると、シオウがすっと立ち上がった。
「3人とも、なにか誤解をされているようですのですが、私は別に酒が飲めないといっているわけではありません」
「じゃあ、一杯くらい付き合えよ! 俺はシオウにものすごい感謝してるんだ。さあ、俺からの気持ちだ!」
「それが、アルハラなんだって……」
「シオウ様、この後のど自慢大会があるのですが……」
酔っ払いが……などと小さく文句を言ったシオウだったけど、次の瞬間顔色一つ変えずにアレクスから受け取ったグラスを空けた。
あ、飲んだ。でも、ちょっぴり怒ってる……よね。ちょっとしゅんとしたわたし達の後ろから、何人かのおじさん達がやってきた。
「おお、シオウ! お前、いける口だな」
「ずっと端っこに居るから、声掛け辛かったんだよ、さあさあ、こっち来い! あっはっは」
有無を言わさず引きずられていくシオウ。ごめん、助けられない。
アレクスも他の席に離れていったところで、クレアがぐっと顔を近寄せてきた。
「ところでっ!」
「何? クレア、ちょっとばかり近すぎるんだけど」
「ユーナは、お兄様のことをどう思われます?」
「えっ! ……はい?」
唐突な質問に、答えが詰まる。
「見た目でいえば、まあ、それなりだと思うのよね。ただね、乙女心については全く理解していないというか、がさつすぎるというか」
「あのー……クレア、なんの話してます?」
「もしや、シオウ様派なのですか? まあ、普通に考えたら、お兄様より落ち着いていらっしゃるし、当然ですわね……まさか、ノア様やカイル? あり得ない……と言っても私の好みとユーナの好みが一致するとも言えませんし……」
唐突に始まった恋バナで、クレアは一人盛り上がっている。というか、口を挟むすきもない。
「でも! どんな道を選ぼうとも、私はユーナを応援しますわ! ユーナには、幸せになってもらいたいの!!」
「あっ、ありがとー……ははは」
クレアがのど自慢大会に参加しに行ったので、なんとかその場を逃れられた。
――夜が更けていく。
その後、遅い時間まで続いた宴会で、わたしはオーク村最後の時間を楽しんだ。
次の日。わたしとシオウはみんなと別れを惜しみつつ、村をあとにした。




