34.オーク村の復興手伝い
王都での一週間が過ぎ、ノアにオーク村へ送ってもらう約束の日がやってきた。
「じゃあ、一か月後にまたよろしく!」
わたしとシオウはオーク村へ移動した。
・・・・・・
突然戻ったわたしを見て、最初、村の人たちはみんな驚いていた。アレクスとクレアも騒ぎを聞いて駆けつけてくる。村に来ることになった経緯を伝えると、みんな驚きつつも喜んでくれた。しばらくは荒らされた建物や畑直しなど、復興の手伝いをすることに決まる。
「ところで、ロック鳥は元気かな?」
「村のはずれに鎖でつないでいるわ。食べ物は……何を与えても口をつけずに困っていたの。元気はあるようなのだけれど……」
クレアが教えてくれる。
「じゃあ、俺が連れて行ってやるよ」
アレクスについて、ロックの様子を見に移動することにした。
わたしの顔を見ると、ロックはつむっていた目を開いた。
「よかった、ケガはよくなってるみたい。わたし、ユーナっていうの。あなたをこんな目に合わせて……ごめんなさい」
「ユーナ……何を望む?」
「うーん、特には。また村を襲わないって約束してくれたら、住んでいるところに戻ってもらってもいいんだけど」
「……本当によいのか?」
「ここにいてもお世話できないし、お互い大変だよね。あなたはどこに住んでいるの?」
ロックが目を向けたのはそびえる山の方。
「あの山に……」
「すごいね。景色がよさそう。山の方ってどんなところなんだろう」
「では、お連れしようか」
「何気なく言ったのに! そこまでしてくれるの?」
ちょっと……いや、かなり気になるかも!わたしの好奇心がうずき出す。
大きく羽を広げたロックを見て、シオウとアレクスが身構えた。
「あっ、二人とも、違うの。住んでいる山に連れて行ってくれるんだって!」
「聖女様、危険です」
「うーん、ちょっと面白そうだなって思ってしまった。でも、確かにロックに乗ってて落ちたら無事ではなさそうだね」
「じゃあ、俺も乗せてもらえないかな? 山には行ったことがないから、興味がある」
口をはさんだのはアレクス。意外と彼も乗り気らしい。
「じゃあ、ちょっとだけ、行ってみようか」
「ちょっと、3人で乗ると狭いか……でも詰めればいけるかな?」
「それじゃロックが大変なんじゃないか? シオウ、ユーナに危険がないように俺が守るから、ちょっと待っててくれ!」
まだ何か言いたげだったシオウをおいて、わたしとアレクスを乗せたロックは飛び立った。
久しぶりに飛んだだろうロックは、そんな不安も感じさせずぐんぐんと上昇していった。思ったよりは、乗り心地快適だ。
「何も食べずに今までいて、傷も癒えるなんて、あなたってすごいんだね」
「ユーナは自分のしていることに気付いていないのか? 首につけられた輪から魔力が常に供給されている」
ロックが答える。
「へえ、そうなんだ……!」
(だから、ダイアウルフ達もわたしに従うようになったのかな)
不思議そうにしているアレクスに簡単に説明しているうちに、山が目前に感じられるくらいまで近づいた。
「あれは……!」
アレクスが何かに気付いたようで、声をあげた。
「どうしたの?」
「さっきあそこの木々の隙間から、魔物が見えたんだ。あれは、すごく珍しいエンクっていう魔物だと思う」
アレクス、結構興奮している。
「ええっ! うーん、もう、見えないけど……アレクスが驚くくらいならわたしも見てみたかったなぁ」
そんな話をしていると、崖の一角にロックがかろうじて留まれる程度の足場があり、そこに着地した。自然にできたものか、ロックが作ったものかはわからないけど、そこには大きな横穴があり、ロックの住処だとわかった。
「ロック、ありがとう。ここに住んでいるんだね。何で、人間の村の方に来ちゃったの?」
「魔を呼ぶ……声が聞こえたから」
「?? ふうん?」(何かよくわからないけど、魔物しかわからない原因があったのかな?)
突き出た岩に降ろしてもらい、アレクスと座る。大壁と村のある方向が一望できた。
「あそこに川が見えるだろ。あそこまでがノースデールの領土だ」
「へえ、広いんだね。あっちの奥のほうは深い森が広がってるね」
「ユーナも王都に行く途中で通ったんじゃないかな?」
「ああ、あの道か! 森の切れ目は……かろうじて見えるかな」
アレクスに、いろいろと教えてもらっていると、懐かしい感情になる。
「大壁に登ったときも、こうしてアレクスにいろいろ教えてもらったっけ。二か月くらいしか経ってないのに、なんだかずっと前のことみたいだね」
「ああ」
その時、山の麓から爽やかな風が吹いてきた。
「ユーナ、改めて……ありがとう」
「うん、アレクスも村も無事でよかった」
「ナラの……隣の領主に捕まっていた時、一人の旅人が訪ねてきたんだ」
アレクスが話し始める。
「幽閉されている屋敷から出ることは出来なかったけど、問題ない荷物は受取ることができた。それで……その中に、ユーナからの手紙が入ってたんだ」
「え!!」
「あそこにいたときは、正直、今後どうなるか不安で先が見えなかった。でも、ユーナが俺たちを気にかけていることがわかって勇気をもらえたんだ」
(カイルもいろいろ動いていてくれると言っていたし、結局アレクスの手に渡ったんだ)
明るく笑うアレクスがとても眩しい。わたしの手紙がアレクスの勇気になっていたのは、本当に嬉しかった。
わたしたちはしばらくの間、景色を眺めながら座っていた。
村に戻ってくると、ロックは再び山に飛んで行った。
「ありがとう!」
「我が力を必要とするときは、すぐに呼ぶといい」
1時間は経っていたと思うけど、シオウは元の場所で待っていてくれた。なんだか、村の人たちに興味を持たれて、囲まれているけど。
「ごめんね。勝手に出かけてしまって」
「……ご無事であれば何よりです」
「ユーナ、シオウ、今日はゆっくりしてくれ。……明日からは、頼むな」
「うん!」
さあ、これからオークでのお仕事がんばろう!




