30.永遠に感じる時間
一時間は経っただろうか……
ここは宰相のウォーレン様の執務室。
わたし達は、立たされていた。
周りには大臣さん、ロイドを筆頭に数人の偉い人達、かなりの大ごとだったようで、国王レイヴァル様もいる。
勝手に城を抜け出し、ぼろぼろの姿で帰ってきたわたしたちに待っていたのは、エンドレスお説教。
右隣をちらりと見ると、ノアはいつも以上にフードを目深に被って俯いている……と見せかけて、よくよく見るとあくびをかみ殺している。気持ちはわからないでもないけど……さ。自分がお説教側だったらゲンコツもんだわ、こいつ……
そして左隣に目線をやると、シオウがいる。今のところ直立不動で顔色一つ変えずにお説教を聞き続けている。すごい精神力……だけど、果たして彼の心に何か響いているのかな。あと3日くらい経っても、平気でこのままの姿勢で立ってそう――……
それにしても、戻ってきて着替えだけは済ませられて良かった。びしょびしょに濡れたまま疲れ切ってお説教は辛すぎるもんね。でも、お腹空いたなー
「ユーナ様、気が散っておられるようなら個別にお話しいたしますが」
「ひいっ。すいませんっ!」
こんな3人なので、お説教の矛先はほとんどわたしに向かっている気がする。
「チェスター大臣、そもそもアレクス様の幽閉騒ぎに、あなたが関わっていたという噂が流れていますが」
「いえいえ、なんのことか!まったく身に覚えがございません!」
「王都から辺境守護として遣わせている兵士たちも、なぜか都合よく引き揚げさせていましたよね?」
ジンさんも追及に加わる。
「それは予算の都合上、仕方なくであって、タイミングが悪かったとしか言えないんです……!」
「いいでしょう。調査隊を向かわせていますので、真相は間もなく明らかになるでしょう」
「……」
なんだか難しい話をしているのでほとんど内容はわからなかったが、わたしは突然出てきたアレクスの名に驚いていた。アレクスって有名人!?でも、今それを訪ねるのは恐ろしくてできない。
とばっちりを食ったチェスター大臣もかわいそうに。あんなに慌てちゃって……
「これに懲りましたら、ユーナ様、勝手に出かけるような真似はおやめください」
「……」
「よろしいですね?」
反論は許されない雰囲気。
……でも、オーク村のみんなを思い出すと、やっぱりそのまま頷けない。
「……あの、わたしの気持ちを聞いていただいていいですか?」
勇気を振り絞って発言する。
「ちゃんとお許しをもらえたら、オークの復興を手伝いに行きたいんです」
「なっ!?」
「も、もちろん、城から出ていくという意味ではないです。定期的に、その……オークに行けたらいいなって」
その場のみなさんは驚いた様子で次の言葉が出ないでいる。
そうだよね、お説教してるのに、それに反論してくるんだから。レイヴァル様と目線があった。……悲しそうな顔をしているので心が痛い。
それまで一言も話していなかったロイドが口を開いた。
「俺は反対です。シオウの報告によると、ユーナ様はあの村で何度も危険な目に遭われているそうですよね。しっかりと護衛できる人員もそろわないまま再び危険な地に赴くというのは到底、許されないことです」
「確かに……ごめんなさい。でも、わたしオーク村で過ごす中で、魔法についてもいろいろ発見することが多かったの。わたしがこの世界に召喚された理由は『世界を救う』ことなら、どんどんできることが増えたほうがいいよね。オーク村のために何かをすることだって『この世界』のためになるし!それなら、多少の危険だって当然避けられないことでしょ?」
早口でまくし立てる。ロイドはわたしの魔法の教師なのだから、悪いけどそこを言い訳に使わせてもらう!
「だからと言って、わざわざ危険に身を投じるなど……」
「アレクスもとっても強いので、本当に大丈夫。いつも、守ってくれているし」
皆さんアレクスを知っている雰囲気なので、そこも安心材料セールスに組み込もう。
「しかし……」
「まあ、ロイド。ユーナ様がそこまで言うからには、我々も可能性を探らねばなるまい」
ウォーレン様が少しなびいている……!やった!!!
「聖女の気に食わないことしたら、世界滅ぼされちゃうもんなー、ご機嫌取りだろ」
ボソッとノアがわたしにしか聞こえない程度にしゃべる。すっごい嫌な言い方。わたしはそっとノアを睨むが、憎たらしいことに、気づかないフリをしているようだ。
「でも、そのままどうぞとはやはりできませんね。もし、どうしてもとおっしゃるなら、シオウ達を護衛としてつけますか」
「了解しました」
すかさず応答するシオウ。でも、シオウ「達」ということは、前にわたしを王都に連れてきてくれたぐらいの大所帯を動かす気なのかな……
「シオウも、みんなもとっても忙しいよね。移動には召喚魔法でわたし一人でも全然……」
「御心配には及びません。お供させていただきます」
……なんか、シオウもさっきから何となく不機嫌そうになったは気のせい?そりゃあ、突然わがまま言われて嫌だよね……
「いつも申し訳ないと思ってるの。本当はわたしなんかにかまってられないくらい、お仕事たくさんあるんだよね?」
「聖女様は私が護衛では不服ということでしょうか?アレクス様もいらっしゃるので私は不要、と」
「いやっ!そういうことを言いたいわけではないのっ!決して!!」
まさかシオウがそんな返答をしてくるとは夢にも思っていなかったので、慌てて取り繕う。なんか、ここだけ体感温度が下がっている気がする!!わたし、そんなに怒らせること言った……!?
「では、必ず、お供させていただきます」
「はい……よろしくお願いします」
反論の余地はないようだった。




