27.オーク村を救え!
わたしたちはアレクスの護衛さん2人とテオにオーク村を任せ、ノースデールの隣の領地「ナラ」という場所に来ていた。クレアが用意してくれた馬で1時間程度の場所だ。
クレアの話によると、アレクスはここの領主によって捕らえられているという。町の通りをしばらく進むと、とても大きな屋敷の前に着いた。
クレアは、門番に向かって話しかけた。
「私、クラリッサ・フレアエイゲートですわ。領主様に、不当な拘束を抗議しに参りました」
「お帰りください」
「いいえ。お兄様をお返しいただけるまでは、帰る気はありません」
クレアは門番に対して、物怖じする様子もなく堂々と話しかけている。門番はというと、決まった応答を崩す気はないらしく、お帰りくださいの一辺倒だ。
しばらくすると騒ぎを聞きつけたのか、中から男の人が現れた。細身の中年男性は、嫌味ったらしくクレアに声を掛ける。
「なんの騒ぎかと思えば、アレクス様の妹君ですか」
「ナラの領主様、お兄様を開放してください」
「はははっ、ご冗談を。そういうあなたは、兄上の恩情で自由にさせてもらっていることをお忘れではないですか?あまり騒ぎを起こすと、アレクス様のお立場が更に苦しくなりますぞ」
非常に腹が立つものの言い方で、わたしは早くも我慢の限界に達していたが、話をややこしくしないために静かに拳を握りしめていた。
「アレクス様は、聖女様を匿った罪に問われているのです。そのような重罪、見逃すわけにはいきませんからね」
「そんな!どういうことですか?」
「おや、そちらの方は見ない顔ですね。せっかくですので、皆に広めてほしいですね。アレクス様は、どのような方法を使ったかわかりませんが、国を助けるために召喚された聖女様を攫い、自分の領地に隠したといわれております」
わたしのせいでアレクスは捕まっているの……?
その時、クレアがわたしをここに連れてきた理由を理解した。わたしはクレアと目が合うと、うなずいて一歩前へ出た。
「自己紹介が遅れてしまいました、私ユーナと申します」
なるべく落ち着いて、ゆっくりとしゃべる。
「私がお話の『聖女』です。アレクス様を開放していただきたい、と私が願っても叶いませんか?」
「は?聖女様は王都へ向かわれたと聞いておりますよ。あなたのような偽物の話なぞ、信用できませんねぇ」
そこへシオウも前に出て、恭しく礼をする。
「ナラの領主様、突然の訪問をお許しください。私聖女様の護衛を任されているシオウと申します。国王からも『聖女様の意志をしっかりと汲み取った行動をするように』とお言葉を賜っております」
「う……確かにその服装は王都の……本当、なのか?」
ナラの領主はシオウの言葉に揺らいでいる。
「嘘であると思われるのであれば、お調べくださっても構いません。私は、ですが。聖女様に対して失礼がないかだけは心配ではありますが……」
ナイス!シオウ!!失礼だけど、意外と気が利くんだね!!!
わたしは心の中でガッツポーズしていたが、冷静を装い、聖女らしい笑みを貼り付けていた。
すっかり怯えた領主は、すぐにアレクスの居場所を話した。もっとじっくり経緯を聞きたかったが、いまはアレクスのほうが心配だ。わたしたちは言われた場所に向かう。
アレクスは近くの小さな館にいた。
解放され、出てきたアレクスは、思ったより元気そうでほっとした。フェルムさん達も、アレクスに続いて出てくる。
「ユーナ、どうして……?」
「カイルが村が大変だと教えてくれたの」
アレクス悔しそうな顔をする。
「ごめんな、心配かけてしまって」
「……で、お前が来たのはどういう風の吹きまわし?」
アレクスが話しかけてのは、ノア。
「久しぶりだな、アレクス」
アレクスとノアが会話を交わす。やはり、アレクス達兄妹とノアは知り合いで、しかも結構親しい間柄の様だ。
「そこの『聖女さま』に泣きつかれてね。しかたなーく助けに来てやったって訳だ」
「そうか……貴方も以前ユーナを迎えに来た城の人だよな。ユーナを連れてきてくれたんだな。みんな、申し訳ない。クレアにも心配かけたな」
こんな状況でも、アレクスはみんなに気を遣っている。
「お兄様、感動の再開といきたいところですが、そうも言っていられませんわ。村が魔物に襲撃されて大変なんです!」
クレアが手短に村の現状を説明した。
「わかった、すぐに戻ろう」
・・・・・・
わたしたちは休む間もなく村へ戻り、戦いの準備を整えた。移動しながらアレクスの様子を教えてもらったが、屋敷から出られないだけで、衣食住はきっちり用意されていたらしい。……よかった。
村に戻ったわたしは……武器を持ったところでなんの戦力にもならないので、テオから数匹ダイアウルフを借りてきた。
ダイアウルフ達はわたしの周りを取り囲んで、しっかり守ってくれている。テオから一時的に預かってきたということもあってちょっと心配だったけど、ちゃんとわたしの言うことを聞いて動いてくれる。
今度はアレクスと護衛さん達も加わり、大壁に向かって体制を整えるわたし達。
ノアが、不思議な音と匂いの出る花火のような魔法を森に向かって放った。
キュルキュル~~……
「ノア、何それ?」
「言っとくけど、ふざけてる訳じゃないからな。仲間をどんどん呼び寄せる親玉みたいな魔物は何種
類か知っているから、おびき出せるか試してるところだ」
(やっぱり、ノアって物知りだな~)
何度目かの魔法で、森の奥から大きな鳥の魔物が現れた。
「うわっ、ものすごい大きさ!家一軒分くらいあるんじゃない??」
「ロックか……」
「ロック?」
「北の山の向こうに住んでいると聞いたことがある。俺も見たのは初めてだ」
アレクスが教えてくれた。
ロックと言われた鳥は、ノアの魔法に不機嫌になったのか、大騒ぎしながらこちらへ向かって飛んでくる。
「あなた、北の山から来たの?お願いだからこんなことやめて」
わたしは空に向かって叫ぶ。
「人間の言葉に従えというのか。愚かな」
……言葉が通じた。でも、やっぱり言うことは聞いてくれないか。
突然、ロックが空中で止まり、大きな叫び声をあげた。ロックの周りの空間が歪んで見える。あまりの音量に、わたしたちは耳を塞いだ。
すると、その歪みからカラスによく似たたくさんの鳥の魔物が、無数に現れる。
「あのでっかい鳥は自身も強いが、何より無限に仲間を呼び出す能力がやっかいだ」
説明をしながら、ノアが風の魔法を放つ。
ロックはその魔法をよけつつ、下に向かって急降下してきた。
アレクスがタイミングを見計らって切りかかったが、ロックはまたすぐに空へ逃げ攻撃をかわしてしまう。
「みなさん、ひとまず森の中へ!村を襲われては大変ですから!!それに、少なくともロックには狙われにくくなります」
クレアが矢を番えながら、森にみんなを誘導した。




