↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/99

13.動き出した運命

 ――その日は突然やってきた。

 

 わたしはヒカリソウの栽培について研究するため、サイラスさんと一緒に畑にいた。ここに通うのはもう何度目だろうか。すっかり日課になっている。


「すごい!カイルの言った通り、花が育ってる!」

「あいつもいろんな地域を回って、ものすごい知識を持っているからな」

「これなら、安全にハチミツを量産できそうですね!」

「うむ、まだいろいろ試してみないといけないこともあるが、第一歩という感じじゃな」

「やったー!ハチミツパン、たくさん食べれる!」

 

 先日カイルからもらったアドバイスの通り、わたしの見える魔力(わたしにとっては、色の違いに見える)でヒカリソウを植える場所を変えてみた。すると、それまでうまくいかなかった栽培が成功したのだ。これで、わたしの大好きなハチミツパンを思う存分堪能できる!

 カイルはというと、各地を廻っている商人というだけあって、とても忙しいらしい。初めて出会ったその日のうちに、べつの村へ向かって旅立っていった。もう少し話して、いろいろな知識を教えてもらいたかった。また、会えたら詳しく聞いてみたいことも多い。


 でも、ひとまずは成功!サイラスさんと健闘を称えあい、手を握り合っていた時だった。


「ユーナっ!」

 アレクスがやってくる。なんだか落ち着かない。アレクスには珍しく、何かに焦っている様子だ。

「アレクスどうしたの?」

 

 違和感にはすぐ気づいた。


 ……アレクスだけじゃない。

 

 後ろから見知らぬ顔が現れる。でも、何となく見覚えがあった。

 わたしがこの世界に来て最初に会った、たくさんのローブの人たちと……服装が同じだ。


「ユーナ……王都から使者が来た」

「王都?」


 わけもわからないまま、アレクスの屋敷に戻る。そこには、見知らぬ数人が待っていた。

 

 ローブの人がわたしを指さし、口を開いた。

「間違いありません。この女性です」

 その言葉を聞いて、王都から来たという何人かのうち、真ん中にいた男性が前に出る。


 そして、わたしに向かって一礼をすると、話しかけてきた。

「お初にお目にかかります。シオウ、と申します。王の命により、貴女を城までお連れすることとなります。」

「王……さま?」

 

 わたしに話しかけてきたのは、アレクスとそう変わらないくらい、若い男の人だった。きっちりとした黒い服を着ていて、身分の高そうな人だと思う。

 整った顔立ちのその男性の表情はというと、口角は上がって一応の笑顔が作られているものの、その瞳からは感情が読み取れなかった。抑揚のあまりない、機械のような話し方だなと思う。でも、どことなく懐かしさを感じるのは、この世界でわたしが見た限りでは珍しい……黒い髪と瞳だったから。

「シオウさん、ですか?あの……王というのは?」

「シオウ、で結構です。私は何も返答できる立場にありません」

「そんな……」

「……」


 きっぱりと話を終え、それ以上会話を続ける意思は全くなさそう。

「ねえ……アレクス」

 思わず、無言で隣にいるアレクスに助けを求めて顔を向けた。アレクスの表情も硬く、感情が読み取れない。困り果てたわたしが何も言えずにいると、数秒の間の後、アレクスが口を開いた。


「ユーナ、君をこの世界に召喚した張本人は、おそらく王都にいるやつだ」

「じゃあ、あの時最初にいた場所は……その『王都』だったのかな」

 わたしが寝ていたら突然連れてこられた、神殿のような場所を思い出す。 

 だからと言って、目の前の男性に付いて行くという選択肢は、本当に正しいのだろうか。こちらに話しかけてくる様子といい、アレクスや村の皆のような親しみも感じられない。

 ……わたしの力が必要と言っても、その目的も何もわかっているわけではない。


 迷っているわたしに、アレクスが続けた。

「ユーナは、もとの世界に戻りたいと言っていたよな?」

「うん」

「もし、その方法を探りたいなら……ここにいるよりその男について行った方が可能性はある」

 

 最初にここに来たときは、アレクスはよく知らないと言っていたけれど……何か『聖女』に関する事情を知っているんじゃないのだろうか?

 でも、その顔を見るとなんだか深く聞けずに沈黙してしまった。


 ここでの生活にやっと慣れてきているのに、それを手放してしまうの――?


「しばらく考えさせてもらえませんか?」

「貴方がどのようにお考えでも、王の命ですので来ていただくほかに選択肢はありません」

「もしも断れば?」

「どのような手段でもお連れしろとのことです」

「……」

 すごく、冷たい言い方……

 でも……アレクスもああ言っているし――……


 ぐるぐるといろいろなことを考えて、わたしは口を開いた。



「――わかりました。連れて行ってください」


 その言葉を聞いた男性……シオウは、わたしに深い礼をした。


 正直、ここを離れるのは辛い。そう思うほどにオーク村での生活に馴染んでいる自分がいる。でも……本当にこのままの生活を続けていてもいいのかは、どれだけ考えても答えが出ない。


 自分の置かれている状況を知るため、そして少しでも前進するため、わたしは行動することにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。