陛下との謁見と驚きの提案
謁見の間で控えていた七人のもとに国王が入ってきた。一同は頭をさげながら控えていた。国王は玉座に座ると声を発した。
「皆今日はよく来てくれた。頭を上げよ」
国王が言うと呼ばれていた七人は頭を上げた。フォザリア以外はみな緊張した面持ちで顔を上げていた。
「今回、そなたたち七名は都を騒がせていた盗賊団の一団の確保に貢献したとの報告を受けている。御苦労であった。今後、都のさらなる発展と安全の為にそなたたちの力を再び借りることもあるかもしれないが、その時はよろしく頼むぞ」
「はい」
七人はそう返事をすると、七人は勲章を国王から一人一人受け取り謁見は無事終了した。
国王がその場から去った後、フォザリアもリーマたちと帰ろうとしていると、案内係がフォザリアはその場に残るように言ってきた。首を傾げているとフォザリアに向かって説明をした。
「申し訳ございません。ルカルナ殿下があなたに今回の件で詳しく事情をお聞きしたいそうなのです」
「わかりました」
それを聞いたフォザリアは帰るのを止め一人謁見の間に残ることになった。ポツリと一人取り残されたフォザリアは軽くため息をついた。
(あああっ、何か言われちゃうんだろうな。だけど戸締りをしていても扉を叩き割られたらどうしようもないわよね。だけど、ルカルナ様から頂いた招き猫の置物が無事だったからよかったわ。あれが壊されていたらどう謝っていいのかヒヤヒヤだったわ)
フォザリアはルカルナに何を言われるのだろうかとあれこれ頭で思っていた。
(だけど…また店がぐちゃぐちゃになっちゃってたもんなあ。盗賊団もあんなに暴れなくてもいいのに、まっ壊されたのが机や椅子や使い古しの棚や窓ガラスだけだったから、大工さんたちが気を使って格安で修理してくれたから被害は最小ですんだけど、盗賊団の人達どうして私の店なんか狙ったのかしら?まったくうちはそんなに儲けていないっていうのに。リサーチ力ないんじゃないかしら)
フォザリアはブツブツいいながら一人だだっぴろい謁見の間で立ち尽くしながらルカルナが来るのを待っていた。
しばらくすると聞きなれた足音が聞こえた。フォザリアは顔をあげて驚いた。ルカルナ一人かと思っていたら、その後にリアムスやビゴーラ、それにサルデーニャ王女やロンダ、ピオレも来ていた。
「あれ、皆様もいらしたんですか?あの何かあるのですか?」
「フォザリアあんたねえ、自分がどれだけ危険な目にあったのかわかっているのかい?殿下や城の仲間たちも心配していたんだよ」
一番にフォザリアに向かって話かけたのはビゴーラだった。
「もう! ビゴーラさん、今朝も散々お小言聞いたんだからもういいでしょ」
「あんたは全くわかっていないから言っているんじゃないか、あたしが言いたいのはね」
「ああ~もう、わかってますよ。盗賊団に遭遇しても立ちはだかったりしちゃいけないっていうんでしょ」
「そうだよ、せっかく逃げられたっていうのに、戻って盗賊団の一人の前に立ちはだかるなんてしちゃいけないんだからね。何かあってからじゃ遅いんだよ」
「あの時はつい夢中で…でも、あんなに護身術もどきがうまく決まるなんてビックリしちゃった」
頭をかきながらいうフォザリアに笑いが起きた。
「すごいなあフォザリアは、僕もフォザリアの噂話を聞いてビックリしちゃったよ。王宮でも噂で持ち切りだよ。ねえねえ護身術ってなに?」
ロンダが興味津々で聞き返した。
「簡単に言うとか弱い女性でもとっさの時に自分の身を守るためのわざみたいなものですよ」
「そうなんだ、今度僕にも教えてよ」
「いいですよ。剣術と並行に剣がない時や捕まりそうになった時に、短剣を持つ輩が相手ぐらいでしたら役立ちそうなものがありますから、今度お教えしします」
「フォザリアはいろんなことを知ってるんだね」
「そんなことはないですよ。ロンダ様の方がすごいですよ。そうそう店の子達が早く読み書きの授業したいって言っていましたよ」
「そうだね、調整を急がせているんだけど、最近あの盗賊団騒ぎで中々王宮の外へ出る許可がおりなかったんだ」
「そうですよね。危険ですもんね。ロンダ様も都にでる時は気を付けてくださいね。他にも盗賊団が潜んでいるかもしれませんから」
ロンダとの話を早々に切り上げルカルナに近づいた。
「ルカルナ様、どのようなことをおしりになりたいのでしょうか?」
ルカルナのところに近づいて軽く頭をさげてから言ったフォザリアにルカルナは険しい顔で言った。
「過ぎたことをあれこれ言わないが、今回はたまたま目が覚めていたから逃げられたが、次回はそうはいかないだろう。これからも他の盗賊団が襲ってこないとも限らないし、夜はあの店には一人なんだからもっと扉を頑丈なものに付け替えるとかしないといけないんじゃないか? お前が王宮領内の使用人部屋を利用してあの店に通うようにしたらどうだ? あの店は実は僕が経営者だって陛下に伝えておけば問題ないんじゃないか、実際以前は僕の商品も置いていたんだし」
ルカルナは真剣な表情でフォザリアに言った。だがフォザリアは首を縦にはふらなかった。
「お心使いは感謝しておりますが、私は自分の家を出るつもりはありません。私は路上生活をしていたんですよ。家で休める今の環境は最高ですよ。今のところは私の小さな城を出るつもりはありませんから。それに全ての扉は頑丈なのに大工さんたちが部屋で乱闘騒ぎになったお詫びにって格安で付け替えてくれる予定になっているのでご安心くださいませ。窓も一階は全て雨戸を毎回閉めるようにしましたし。泥棒対策はバッチリですよ」
フォザリアの言葉に何故か全員ため息が漏れた。なぜため息を漏らしているのか首をひねるフォザリアにサルデーニャ王女がクスクス笑いながら付け加えた。
「フォザリア、ここにいるみんなはあなたのことが心配なのよ。もちろんわたくしもだけれど」
「ありがとうございます。私のような孤児が皆様にご心配して頂くなんてもったいないことです。ですが本当に私は大丈夫ですから」
フォザリアはもう一度念を押した。だが誰も納得はしていない様子だった。少し沈黙が続いて再び話出したのだリアムスだった。
「フォザリアさん」
リアムスは呼び捨てていいと店に同居するようになった時フォザリアから申し出たが結局いつもさんづけでフォザリアを呼ぶのだ。数回訂正しようとしたがあきらめた経緯があった。
「リアムスさんにもご心配をおかけしてしまってすみません」
「いえ、あなたが無事で本当によかった。実はあなたにご提案があってこの場に自分も同席したのです」
「提案ですか?どのようなことでしょうか?」
「私は周りくどい言い方は苦手ですので単刀直入に申し上げます。私とビゴーラの娘になってくださるお気持ちはありませんか?」
「えっ?あの・・・私でよければ娘になりますよ。リアムスさんやビゴーラさんはまだお若いから失礼かなって思っていましたけれど、一緒に同居をするようになってからずっと思っていたんですよ。親子だったらこんな感じかなって…まあ親子っていうより兄妹って感じなのかもしれませんけど」
「私もそう感じていたんですよ。でも私が言いたいのはそういう感情だけではなくて、正式に私とビゴーラの養女になってくれないかという打診なのですよ」
「えええ~っ!わっ私が正式な養女にってことですか?ええええ~っ!じょ冗談とかじゃないですよね?」
謁見の間にフォザリアの声が高らかに響いた。
「本気だよ、あたしみたいなのが務まっているんだから何とかなるよ、まっ私は今まで貴族社会での付き合いは今まで全くしていなかったから、何もアドバイスをしてあげられないんだけどね、一緒に貴族社会を学んでくれるとうれしいんだけどね」
(確か最近聞いた話じゃ、リアムスさんって貴族の三男だったって聞いたばかりなのよね。長男さんと次男さんが相次いで病死と事故死したとかで、家を継ぐことになったって聞いたばかりだし、ビゴーラさんて王宮で料理してるからてっきり平民だと思っていたのに、貴族の家に嫁いでいたなんてビックリしたのよね。ええ~でも私が養女?無理無理無理、絶対迷惑かけちゃうよ。それに私はどこの誰なのか分からない孤児だし、貴族の養女なんて無理だよ。もうどうして、私なんか気にかけてくれるのかしら…)
フォザリアは二人の優しい申し出に頭がパニック寸前になっていた。と同時に、前世でも貴族社会で生きたこともない未知の世界にいきなり入るっていうのはどう考えても不安でしかなかった。
(だけど、そもそも王子様のお嫁さんになりたいなんて無謀な動機でこの世界に転生してきたこと自体あり得ないことなのよね。あああっ神様にお願いしておくんだったな。せめて貴族令嬢として生まれて来れるように何とかならないかって…言ってもどうしようもないか)
フォザリアはしばらく頭の中でどう返事をしたらいいのか迷いに迷っていた。




