仮面舞踏会②
ロンダの後について舞踏会会場の外のバルコニーにでたフォザリアにロンダがご機嫌で言った。
「ねえフォザリア、ダンスをしようよ」
「そうですわね、せっかくの舞踏会ですものね」
そういうとフォザリアはロンダの手をとり舞踏会会場から漏れ出てくる軽快な音楽をバックに踊り出した。
「あははは、楽しい曲ですねえ。ロンダ様、これはダンスっていうのですか?」
フォザリアはロンダにつられてクルクル回ったり、両手を広げたり上にあげたりのでたらめに踊っているようにみえるステップに思わず吹き出しながら言った。
「いいんだよ。楽しかったらなんでも。僕ダンスのレッスンが一番嫌いなんだ」
「ロンダ様、今の言葉は偽りがございますよ。ロンダ様はダンスのレッスンを今まで一度もお受けになっておりませんよ。なんだかんだと言い訳をして全てダンスの先生のレッスンは拒否してましたからね」
ロンダの言葉を訂正したのはいつの間にかすぐそばにきていたピオレだった。
「もう!フォザリアの前で余計なことを言わなくていいじゃないか!、フォザリア、ピオレの言う事は聞いちゃだめだよ」
クスクス笑いながらフォザリアはロンダとでたらめダンスを踊りながら言った。
「そうですよね、ロンダ様はやればできる方ですよね。私は、嫌いだっていいながら簡単にこなす人ってかっこいいと思いますけどね」
フォザリアの言葉にロンダに急に真面目な顔になって聞き返した。
「フォザリア、僕がきちんとしたダンスを踊れるようになったらまた踊ってくれる?」
「はい、こんな舞踏会は私はもう出席はできる機会はないと思いますけど、ロンダ様の館とかでいいのでしたらいつでもお相手させていただきますよ」
「本当?約束だよ!」
「はい」
フォザリアの言葉にご機嫌になったロンダと共にフォザリアも笑いながら楽しいステップを踏んでひとしきりダンスを楽しんだ。しばらくして、二人で隅に置かれていた椅子に並んで座って雑談をしている二人にサルデーニャが近づいてきた。
「サルデーニャ様、申し訳ありません。陛下にごあいさつにお伺いする途中でしたのに」
フォザリアはサルデーニャの姿を見つけると急いで立ち上がり頭をさげた。
「あらいいのよ、思いのほかルカルナがたくさんの人達に囲まれていたんだもの。まったく、あれぐらい簡単に対応してかわすぐらいできないなんて頼りないわよね。フォザリアがこんなに可愛く仕上がっているのにね」
「ルカルナ叔父様にはもったいないよ。母上もサルジュおば様とお話しして来ればいいじゃないか?僕はここでフォザリアともう少し休憩したらまたダンスをするんだから」
母親の出現で可愛く膨れているロンダにサルデーニャがロンダに頭を軽く撫でながら言った。
「まあ膨れている姿も可愛いわね。だけどね坊や、フォザリアはルカルナのパートナーなのよ。もう十分でしょ」
「まだまだだよ。それにルカルナ叔父様はまだ大勢の女の人に囲まれてるんでしょ。フォザリアが可哀そうじゃないか」
母親の手を払いのけながらロンダが言い返すと、サルデーニャは両手で息子のつやつやの頬をはさみながら言った。
「あら、そこを強引に連れ出してルカルナとダンスを踊るのが今夜のフォザリアの仕事なんじゃない。そうでしょフォザリア」
立ったままのフォザリアは背筋をピンと張り返事を返した。
「はい!その通りですよね。ロンダ様、楽しい時間をありがとうございました。私仕事に行ってきます。仕事が完了しましたら、館へ勝手に入らせて頂いてよろしいでしょうか?店に戻る際に私のリュックと服に着替えたいので」
「はあ・・・もう少しフォザリアとゆっくり過ごせると思っていたのにな・・・フォザリア、短い時間だったけど楽しかったよ。また授業の日に会いに行くからね。あっそうだ。もちろん屋敷には入っていいよ。一階は鍵はかかっていないからさ」
「ありがとうございます。サルデーニャ様、このドレスはどういたしましょう」
「ロンダの館にそのまま置いておいていいわよ。侍女に明日にでも取りにいかせるから」
「はい」
フォザリアはそういうと二人に頭をさげて自分とは生きてきた世界が違う人種である貴族や王族の女性陣が陣取って人だかりになっている中心にいるルカルナ奪還に動き出そうとしていた。
(よ~し、今日は仮面舞踏会、鏡を見た限りじゃお茶会の時とはさらに別人に変身していたもの。大丈夫、怖くない怖くない!やればできる!)
緊張から震えがきている自分の手をギュッと握りしめながら背筋を伸ばし歩き始めた。




