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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第二章:新しい仕事依頼
33/75

招き猫

昼食を済ませたフォザリアは今度はルカルナの館から運び込まれていた大量の木箱の中身を確認することにした。フォザリアは一つの箱を開けると、中から大きな陶器で焼かれた招き猫の置物が二体出てきた。


一つは右手をあげていてもう一つは左手をあげていた。フォザリアはそれの一つを取り出すと、横にいたルカルナにたずねた。


「これ招き猫ですよね、どうしたんですかこれ?」


「招き猫ってなんだ?それはただの猫の置物だ。野良猫が時々あの館の近くの木の下を通るので休んでいる時に仕草をスケッチして皿を作るつもりで取り寄せていた土でそれらを作ってみたら面白くてつい作り過ぎてしまったのだ。大量にできたから職人に命じて一緒に窯で焼かせたんだ。他にもコップなんかも猫の顔の形に作ったりしたのがいろいろあるぞ」


「あのもしかして、二階の物って、ルカルナ様が壊した家具と陶器で作った物ばかりなんですか?」


フォザリアの質問にルカルナは平然と頷いた。


「あの・・・家具は修理して売るとかはわかりますが、せっかく作ったものを売って大丈夫なんですか?」


「ああ、別に暇つぶしに作っていただけで、増えすぎてしまったからな。お気に入りは別に分けてあるから大丈夫だ。捨てるのも気がひけるしな。なんとかできないかとずっと思っていたんだ」


「もしかして・・・私を利用したんですか?二階の掃除がまだだとか言って、実は作り過ぎた自分の作品を私に処分させようと企んだんじゃないんですか」


疑いの目つきで見てくるフォザリアに対してルカルナはむきになって言い訳を始めた。


「いいだろ別に!ゴミじゃないが、いらない物には違いないんだから」


むきになって言い訳を始めたルカルナにフォザリアは最初は怒った態度を見せていたが箱の中の作品を眺めて笑顔になって呟いた。


「でも、不思議ですね、このふてぶてしいこの丸い顔にこのたれ目がなんとも言えず可愛いですね。どれも可愛くて売るのがもったいなくなりますね」


「そっそうか、特にこの二つは傑作なんだぞ!」


ルカルナはそう言ってフォザリアがもっている猫ともう一つの猫の置物を指さして言った。


「でもこの猫太っていて大きいですね。こんなに太っている猫が王宮にいるんですか?」


「作っていたら大きくなったんだ。それにあそこを通る猫は食べ物がたくさんあるからな、太っていたんだ。お前が来るようになってからあまり見かけなくなってきたけどな」



「そうなんですか・・・残念ですね、実物を見てみたかったなあ・・・でもこの顔可愛いですね。これ店の入り口に飾りましょうよ。このポーズは招き猫っていって前足で人を招く姿をした猫は商売繁盛の縁起物なんですよ」


「はあ?そんな話は聞いたことがないぞ」


「そうでしょうね。この世界の人は知らないと思いますよ。とにかく、右手をあげている方が金運を招き、左手をあげている猫は人(客)を招くと言われているんですよ」


「そうか、じゃあこの店にとったら左手の方がいいのか?」

「そうですね、そうだ、この右手をあげている方を人にあげてもいいですか?」


フォザリアはそう言って別の招き猫を箱から一つ取り出すとそれを抱えながらルカルナにたずねた。


「ああかまわないが、売り物にしないのか?」


「ええ、ブツブツ交換してもらおうかと思いまして、ちょっと行ってきます。そうだ一緒に来てください。すぐ通りの前の店ですから」


フォザリアはそういうと先に店を飛び出して行ってしまった。慌ててルカルナとリアムスが追いかけて行った。


店を飛びだしたフォザリアがむかったのは以前運動の会で買い出しに行った時に立ち寄った布を扱う生地店だった。フォザリアは腕に抱え込む大きさの招き猫を抱えながら、通りを渡り店に入った。


「こんにちは!」


フォザリアが入ってみると中には客はいないようだった。


「は~い、まだ、今準備中なんですよ」

「あっごめんなさい。また出直してきます」


フォザリアがそういうと、店の奥から顔をだした女店主がフォザリアの顔を見て笑顔になった。


「ああ~あんたこの間の、いいよ、もう昼食は食べ終わってるからさ。あんたに頼まれていたやつ集めておいたよ。だけど、こんなハギレでいいのかい?何も作れやしない捨てるしかない切れ端のやつばかりだよ」


女店主はフォザリアの顔をみた瞬間店の端に置いていた大きな布袋を取り出すと、フォザリアに言った。


「わあ!そんなにたくさんあったんですか。まだそんなに日数が過ぎていないのに、ありがとうございます」


「ああ、あんたのおかげで、商売がしやすくなったしね。針子の子達に声をかけてみたらみんないつか何かに使うことがあるかってとってあったみたいなんだけどね、使い道が思い浮かばないって言ってね。そんな布の切れ端ばかりで何ができるのかって、少し興味がわいたみたいなんだよ。もし、面白いものができたら作ってみたいって言ってたよ」


「ありがとうございます。すぐには無理だけど時間ができたらいろいろ試作品を考えて持ってきますね。あのそれで、実はこの通りの向かいで新しいお店をすることになったんです。色んな雑貨小物を置く予定なんですけど、これ、この布のお礼にと思って持ってきたんです。お店を買うのにお金使い果たしちゃってそのハギレの代金を支払うお金がないんです」


フォザリアはそういうと持っていた猫を差し出した。


「何言ってんだよ、こんなの本当だったら捨てているハギレばかりなんだから、お金なんか貰うつもりなんかないよ」


そういって店主はその袋をフォザリアの前に置いた。


「ありがとうございます。あのこれ、招き猫って言って縁起物の猫の置物なんですよ。右手をあげているのは金運を招き入れるポーズなんですよ。商売繁盛の猫の置物なんですよ。よかったらお店に飾ってもらえないかなって思って持ってきたんです」


フォザリアは代わりに手に持っていた招き猫を彼女に差し出した。


「あら~可愛い顔をしているわね、何だろうね、太っていてブサイクなのになんだろうこの顔、見てると幸せな気分になってくる気がするねぇ。でもいいのかい?高いんじゃないのかい?これ陶器でできているんだろ?」


「大丈夫ですよ。今後もいらなくて捨てる布とかあったら譲ってもらいたいって下心もあるんです」


「そうかい、じゃあ、もらっておこうかね、そうだ、この間作った座布団の上にでものせておこうかね」


そういうとフォザリアから受け取った招き猫を店の入り口のすぐ横にある椅子の上に小さな座布団をどこからか持ってくるとそれを先に敷いて、その上に招き猫を乗せた。


「おや、なんだろうね、あんたの言う通り客を招き入れてくれそうな気がするよ。店がオープンしたらのぞきに行かせてもらうよ。そうだ、これのお返しっていったらなんだけどね、ところどころ布にシミができちまって売り物にならないんだけどね、洗えばマシになると思うんだよ。新しい店の棚にでもひくのに使っておくれよ」


そう言って店主は薄い赤い色の反物をフォザリアに渡した。


「こんなにいいんですか?」


「捨てるのももったいないだろ、それに、あんたにはこの間世話になったからね」

「ありがとうございます。助かります」


フォザリアは赤い布を受け取ると、それを後ろにいたリアムスに手渡した。


「ところでその後ろの人達は誰だい?」


「ああ、私の店の従業員なんですよ。こっちはこの招き猫の制作者なんですよ。他にもまだたくさんいろんな陶器の置物とか売るつもりなのでよかったら買いにきてくださいね」


「へえ~あんたがこれを作ったのかい、たいしたもんだね。店が完成したら友達もさそって見せてもらいにいくよ」


女店主は興味深々でルカルナの顔を眺めながら言った。それは偏見や軽蔑のまなざしなどではなく、尊敬のまなざしで見つめられて、ルカルナは初めて味わう感覚に照れて固まっていた。


「ルーカス、よかったわね、あなたの作品を引き取ってくれた第一号よ」

「・・・」


ルカルナはなんて返答していいのか困惑していた。すると女店主がルカルナの背中を軽くたたいて笑顔で言った。


「あんた良くみたら男前だね、この子のいい人なのかい?」


「あら、わかります?私のだから言い寄らないであげてくださいね。ちょっとシャイなんです」


「そうみたいだね。あっははは、ますます気に入ったよ。あれは大切にさせてもらうよ」


フォザリアは笑顔でもう一度お礼を言ってハギレ袋を受け取ると、店に戻った。すると何も言わなかったルカルナが店に戻るなり言い返した。


「僕がいつお前の物になったんだ?」

「あら喋れるじゃないですか、お客様にはもっとあいそよくしないとだめよ」


フォザリアは手に持っていたハギレが入った袋を下ろし、リアムスから布の反物を受け取ると、空の棚の上にのせた。


「この僕は王子だぞへらへら庶民に向かって笑えるか!」


「その考えが間違っているんですよ。この国で働いている人達の税金で王族は贅沢ができているんでしょ。いわば国民がいるから生きていられるんじゃない。人間、ありがとうの感謝の心は忘れちゃ駄目だと思うわ」


「いい事いいますね。さすが店長。感謝は人間関係を円滑にする秘訣ですからね」


「そうですよね、さすがはリアムスさんですね」


フォザリアはリアムスに笑顔を向けた。するとルカルナがむすっとした顔で突然店舗の家具が置かれている奥から丸い椅子を取り出してきて店を飛び出して行った。


慌ててリアムスとフォザリアが後を追うと、さっきの店に入って行った。こっそり中の様子を伺うと、ルカルナが顔を真っ赤にさせながら、女店主に招き猫を気に入ってくれたお礼を言っていた。


そして、招き猫をのせている椅子はあなたのだからそれがないと困るだろうといって、必死で手に持っていた丸椅子はあの猫専用の椅子に使ってくれと説明していた。女店主は嬉しそうにそれも受け取っていた。ルカルナはそれをみて大きく頭をさげて店を出てきた。店の前にいたフォザリアと目が合ったルカルナは照れたように言った。


「なっなんだよ。あれも僕が作ったものだから別にいいだろ」


「ええ、別に構わないわ。あの丸椅子も細かい彫刻がされていてあの猫とすごくあってましたね。ルーカスはいいセンスしてるわね」


フォザリアはルカルナにそう言いながら、ルカルナの腕に自分の手をからませながら、通りを渡りながら言った。ルカルナは照れたように顔を背けながらも言い返していた。


「当たり前だ。それに僕は人間だからな、ありがとうぐらいどうってことない」

「さすがは私の王子様ですね。この世界を選んで大正解よ」


フォザリアは心の底からそう思うのだった。


「なんだ世界って・・・」


「ただの独り言ですよ。さあ、頑張って店の改装にとりかかりましょう。店の外もなんだか陰気臭いから壁も可愛い色に塗り直しましょうよ。お金だしてくれるんでしょ」


「しょうがないな。まずは第一印象が大事だからな、だけど、キチンと付けておくからな、売り上げが入ったら、そこからひかせてもらうからな」


「あら頼もしいわ。私、最近気が付いたのよね、前世では得意だったのに今の私はどうやらお金の管理は苦手みたいだから。私のお金の管理はルーカスあなたに任せるわ。頼りにしてるわね。私も早く在庫を売りきって借金を返済しなきゃいけないしね。あのハギレでパッチワークをしたらいいかなって思ってるからそれも作りたいしね」


「また何か閃いたのか?まあ、お前の好きにしたらいい、お前が店長だしな。そうだ、おいリアムス、これから一度王宮に戻るぞ!」


ルカルナは後ろを振り向いてリアムスに行った。


「おや、どうしてですか?」


「あの猫と同じ形の小さいのがたくさん試作品として作ってあるんだ。あんなもの売れないかもしれないと思って置いてきたんだが、もしかしたら、フォザリアのいう招き猫っていうので売れるかもしれないだろ。僕の館に置いておいても役に立たないしな」


「あらルーカス、招き猫まだあったの?じゃあ、私もらった赤い布で小さい座布団を縫おうかな、セットで売れば売れるわよきっと。どこかで綿を仕入れないといけないわね」


「綿か、わかった帰りに買ってきてやろう」


「本当ですかありがとうございます。じゃあ、ビゴーラさんと一緒に何かおやつを作っておきますね」


「お前が作るのか?」

「ええ、私こう見えても料理は得意なんですよ、たぶん・・・」

「なんだそのたぶんというのは?」


「だってこの世界で調理したことないんだもの」

「またおかしなことをいうな。まあいい、ビゴーラの邪魔をしない程度にな」

「わかりました。おやつはビゴーラさんに任せて、私は店内の拭き掃除でもしておきますよ」

「その方が安心だな」


そう言ってルカルナは高笑いをした。フォザリアもつられて笑いだした。

そして、店の前まで戻るとフォザリアは空いている手を空高くつきあげると叫んだ。


「よ~し開店準備頑張るわよ」




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