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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第二章:新しい仕事依頼
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癇癪と予定表

店に戻ってきたフォザリアは棚がドミノ倒しのように倒れている惨状に茫然となってビゴーラにたずねた。するとビゴーラがため息をつきながら言った。


「ルカルナ様がいつもの癇癪をおこしたんだよ、あんたに金魚の糞っていわれてね」

「癇癪?それだけが原因でこのありさまなんですか?」


「ああそうだよ、昔からご自分の思い通りに行かないことがあると、癇癪をおこされるんだよ」

「誰も注意しないのですか?」

「そうだね」


「王子ってわがままなんですね。わかりました。ちょっと待っていてください。本人にさせますから」

「いいんだよ、私らが直しておくからさ」


慌てて止めようとするビゴーラにフォザリアは言い切った。


「いいえ、気に入らないからという理由で毎回癇癪を起こされては商売が成り立ちません。もしこれがお客様がいらしている時に起きでもしたらお客様に怪我をさせてしまいかねませんから、王子だからって何をしても許されると勘違いなさっているのでしたらその考えを改めていただかないと、この国の未来にも影響してきますから」


フォザリアはそういうと二階へと駆け上がって行った。その様子を眺めながらリアムスが呟いた。


「なあビゴーラ、あの子確かまだ16歳だって言ってたよな」

「ああそうだよ、しかも孤児だったらしいね」

「なんだろうな、こっちが歳が下みたいに感じる発言だな」


「変わった子だろ、あの子の行動には芯が一本真っ直ぐなのが通ってるっていうか・・・自分が正しいと思ったことは曲げないんだよ。一体何者なんだろうって思う時があるんだよ」


「もしかしたら、神様がおよこしになったんじゃないのか」


「かもしれないね・・・」


ビゴーラは棚を起こす作業を中断し、横倒しになっている棚の横に腰をおろして呟いた。


「だけどさっ、まさかあのルカルナ様がご自分で都にでてあの子と一緒に生活したいって陛下に直談判するなんて、私は聞いた時は心臓が飛び出るぐらい驚いたよ。まっ嬉しい驚きだったけどね」


「そうだな。まっ、この国の未来も明るくなってきたってことなんじゃないか、いつまでも王子が引きこもりじゃあ、先が心配だったしな」


「そうだね。これから毎日が楽しみだね」


「まったくだ。俺もしばらくルカルナ様専属の護衛の申請だしておこうかな。貴族や国同士のいさかいを監視したり仲裁したりしているよりよっぽどおもしろいもんがみれそうだしな」


「確かに」


二人は笑い合った。



その頃、二階に駆け上がったフォザリアは閉まっているルカルナの部屋の扉を勢いよく叩いた。


‶ドンドン!”


「ルーカス!仕事をほったらかして何さぼっているの!早く降りてきて、あの倒した棚を元に直しなさいよ!」


フォザリアがルカルナの部屋の扉越しに怒鳴り声のような声を張り上げながらいうと、部屋の中から同じような怒鳴り声が返ってきた。


「うるさい!僕はルーカスなんて名前じゃない!口の利き方に気を付けろ!僕は王子だぞ!お前を侮辱罪で牢屋にぶち込むことだってできるんだぞ!」


「はあ?やれるものならやってごらんなさい!いちいち癇癪を起して部屋に籠城してしまうような問題児はいない方が清々しますから。私のする行動や言葉が気に入らないんだったら、こんなところにいないで、我がままを聞いてくれる王宮に戻ったらどうですか?私はどちらでも構いませんよ。私は私自身の為に今できることをやるだけですから。ご自分のした後始末ができないようなら、今すぐここから出て行ってくださいね。働かない者はこの店には必要ありませんから」


フォザリアはそれだけいうと、下におりて行ってしまった。

遠ざかる足跡に耳を澄ませながら部屋の中でルカルナは怒りを通りこして驚きで固まってしまっていた。


「あいつは牢獄が怖くないのか?いつもそうだ、僕が王子だって言うことをまったく気にする素振りもおべっかも言わない。僕がここから出て行ったら、お金を全部使ってしまっているのにどうやって食べて行くっていうんだ。商品だって僕の作ったもの以外何もないのにどうやって店をやるっていうんだ」


ルカルナにとってフォザリアは理解しがたい初めての存在だった。王子である自分に対して最初からズカズカと心の中に入りこんできておいて、自分のすべきことが終わると王子に取り取り入ろうなんて考えないで、スパッといなくなる選択肢を選んだ。


(あいつの思い通りになんかさせてやるもんか!僕を簡単に厄介払いできると思ったら大間違いだぞ!)


ルカルナは癇癪を起すのを止めて、勢いよく部屋を飛び出して行った。

フォザリアが棚を元に戻そうと一階に降りて行くとすぐに息を切らせながらルカルナが叫んだ。


「おい!僕に言うことはあれだけか!僕の事を金魚の糞と言ったことへの謝罪はないのか!」


「わかりました。金魚の糞は言い過ぎましたすみません。ですが、私がどこへ誰に会いに行こうと私の勝手ですよね。あなたにいちいち監視される筋合いもありませんよ」


そういうなり、フォザリアはあっさりルカルナに頭をさげた。

「・・・」

あまりにもあっさり謝罪してきたフォザリアに対して、まだ不服そうにしているルカルナにビゴーラが仲裁に入った。


「まあまあ、ルカルナ様もフォザリアも落ち着いて、ルカルナ様、フォザリアはこの店の所有者のお婆さんに朝食をお裾分けしに行っただけですよ。何でもこの店を買う交渉に行かれた時には体調を崩していたみたいで、様子をみに行かれただけなんですよ。病人に会いに行くのに、男性を引き連れてぞろぞろ会いにいくのは良くないですしね」


「それはそうだが・・・それならそうと言えばいいじゃないか・・・心配するじゃないか」


ぼそっと呟いたルカルナに対してフォザリアはにっこりと笑顔になると、ふわっとルカルナの首に両手を巻きつけ抱き着くとルカルナの耳元でありがとうございますと耳打ちした。


不意打ちで驚いたルカルナだったが、一気に機嫌がなおったようだった。


「よし!棚をなおすぞ、リアムス手伝え!」

「了解しました」


ルカルナはご機嫌で自分が倒した棚を起こし始めた。そんなルカルナにフォザリアはついでに棚の根本的な移動を指示し、真ん中に棚が並べられているだけだった店内の高い棚は全て壁際につけるよう指示を出した。


全ての棚の移動が終わったのはお昼を少し過ぎていた。終わったタイミングでビゴーラが昼食の用意ができたことを告げに店舗に顔をだした。


「お疲れさま、おや、いい感じの配置になったじゃないかフォザリア」


「そうでしょ。この真ん中にそこに立てかけてあるテーブル類を設置して、背の低い棚をその下に置くつもりなんですよ。レースや布の目隠しを付ければ在庫置き場にもなりますしね」


「いいアイデアだね、じゃあ、家具類は備品にするってわけだね」


「ええ、どうせ買わなきゃいけないと思っていたから、あるものでなんとか可愛い店になるように考えようかと思ってるんですよ。これらの家具も一応最高級品だから、テーブルの上に並べる商品もいい感じに見栄えしそうだし」


「そうだね、テーブルクロスなんかもあるといいかもしれないね。まあ、このサイズだとレースで編むのは大変そうだけどね」


「ええ、だから、布でもいいかなって思ってるんです。ちょっと当てがあるんですよ」

「おい、フォザリア当てってなんのことだ?」


フォザリアとビゴーラの会話に、椅子に座って休憩していたルカルナが反応した。


「ルーカスには関係ない話ですよ」

「なんだと!」


そういうなり急に立ち上がり険しい顔つきになったルカルナにフォザリアはため息をついて行った。


「ルーカス、私の言動にいちいち眉間にしわを寄せてイライラしていたら、体によくないですよ」


「それをいうなら、その原因をお前が作らなければいいだけではないか!」

「あら私が悪いんですか?それはすみませんね。ですが気を使いすぎると今度は私の方がストレスがたまりますよね。ストレスをためると体のあちこちに異常をきたすこともあると思うんですよね。私もまだ病気になりたくないですし、困りましたね」


「何がいいたいんだ。遠まわしに僕に我慢しろといいたいのか?」


「いいえ、めっそうもありません。お互いの健康維持のためにも、干渉しないようにしましょうと提案しているんですよ。それとあまり物にあたらないでください。今後商品を壊したり店の備品を壊したりしたら倍の金額を請求しますからね」


「結論からいうと、お前が僕に隠し事をしなければいいだけじゃないか」


「私はあなたの奴隷でも雇われているわけでもないんですよ。同じ家で住んでいてもプライバシーはあっていいと思いますよ。まあ、別に秘密主義者ってわけでもないですけど、私はいちいち聞かれるのは好きじゃないんです」


「じゃあ、毎朝予定を言うか、前々から分かっているなら何かに書いておけば聞かなくてすむじゃないか」


「そうですね、作ってもいいかもしれませんね。四人分の予定を書き込める予定表を作ってどこかにはり出しましょうか。黒板みたいなものがあれば書き込みやすいんだけど」


フォザリアがそういうと、ルカルナは二階に駆け上がると、扉の半分ぐらいの大きさの黒板を持って戻ってきた。


「これを使え」

「いいんですか?ルカルナ様が何かに使おうと思って持ってきていたんじゃないんですか?」


「別になくてもかまわない。それより、お前の予定を書き込んでおいてくれるか、行先を書いて出かけてくれるとイライラしなくて済むしな」


「わかりました。ではルーカスやビゴーラさんとリアムスさんも前もって分かっている予定があったり、予定が入ったら、口頭で言う以外にもこれに書き込むようにしてくださいね」


「わかった。じゃあこれは台所の壁に掛けるようにしましょう。あそこならみんな食べる時に必ず入るから」


フォザリアの提案にみんな了承した。


その後昼食を食べることにした。

昼食を食べながらルカルナがフォザリアに言った。


「おい、ビゴーラやリアムスはさんづけなのに、どうして僕には呼び捨てなんだ!」


「あらそうですね。じゃあルーカスさんって呼ぶようにしましょうか?」


フォザリアがそう言いながらルーカスさんと何度も言うと、ルカルナの方が先に折れて訂正した。


「気色悪いから止めてくれ、呼び捨てで構わない」


「よかった・・・私も呼んでいてなんだか違和感があったんですよね。やっぱりルーカスはルーカスと呼び捨ての方がしっくりくるもん」


満足そうにパンを食べながらスープをおいしそうにすすっているフォザリアを見ながらビゴーラとリアムスは笑いをこらえるのに必死のようだった。


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