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王子様はゴミ屋敷の引きこもり住人  作者: 加阪あおか
第二章:新しい仕事依頼
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新しい我が家

都の中心街まで来たフォザリアは行き交う人々を避けながらあてもなく歩いていた。


(さて、どうしようかな・・・)


フォザリアは背中に背負っている布袋を前に持ち替えて、平静を保ちながら歩いていたが、中に入っている金貨が気になって落ち着かなかった。


(あああっどうしてこの世界には銀行がないのかしら。これじゃ何もできやしないじゃない。どうしようかなあこれ。早く家を借りようかな・・・それとも家を買うっていうのもありかな。中古物件だったら買えそうだと思うんだけどな)


フォザリアは周りをキョロキョロしながら歩いた。ふと商店街を通りかかった時、この間の店の前を通りかかった。店は閉まっていて、売り家という木札が立てかけられていた。


「あれ?この店売りに出てるんだ。あの人は強制労働施設行きになったって言ってたし当然かあ、売り家かぁ、この店古いけど立地は最高だし、場所的には最高なんだよね。この間入った時も店内は広かったし、奥にも部屋がありそうだったから何か作業をするのもいい感じだったし、二階もあったみたいだから住居は二階に住めばいいしなあ、小物類の製造販売っていうのもいいかな・・・目の前に生地屋さんがあるから便利だしなあ・・・裏庭もあったから野菜育てれば食費が多少浮くし・・・いくらなんだろう」


フォザリアはそこに書かれている売り主のところに顔を出すことにした。

フォザリアがはり紙にあった場所につくと声を上げて言った。


「すみませ~ん、表通りの場所にある売り家の件なんですけど、どなたかいらっしゃいますでしょうか?」


フォザリアがそういうと、奥から声が聞こえてきた。


「は~い」


男の声だったが近づいてきて驚いた。


「なっ!なぜあなたがここにいるんですか?」


「あ~お前はあの時の小娘。あっいや、なっ何かの間違いをしておられますよお嬢さん、わっ私はあんたとは初対面ですよ」


その小太りの女性(但しどう見ても男が女装している風にしか見えない)が顔を引きつらせながら言う相手に対してフォザリアは構わず言い返した。


「そうですかね、まっ私にはどうでもいい事ですけど。それより、この先の売り家の木札があるお店なんですけど、いくらだせば譲っていただけるんでしょうか?」


その言葉はフォザリアの本心だった。家財は全て没収だと聞いていたが、土地の権利はそのままか別の人間の物だったようだ。


「本物の権利書があるのならだけど」


「俺様が偽物を売りつけるとでも思っているのか?あの場所の権利は俺の母親の物なんだだから権利書は本物があるってわけだ」


そこまでいって余計な事まで言ったと思ったのか慌てて、店の外に顔を出しキョロキョロしながら通りを見渡した。


「またこの間の奴らと一緒じゃないのか?」

「さあ~どうかしらね。それでどうなの、お母様はあの場所をお売りいただけるのかしら?」


「お前ごとき孤児が払える金額じゃねえぞ、この間の奴らとどう親しくなったのかしらねえけどな」


「私は、いくらなら売ってくれるのか聞いているのよ、あなたではなくお母様にね。いらっしゃらないの?」


フォザリアはそういうとズカズカと奥に入って行こうとした。


「おっおい勝手に入ってくるんじゃねえ。万が一お前に金があろうとな、お前なんかに売るわけねえだろうが!帰ってくれ!」


「あら、私をこのまま帰していいの?私は一人じゃないかもしれないわよ、でもあの土地を売ってくれるなら、あなたは今すぐ資金を得られて、逃げることもできるし、あなたのことを役人に告げ口しに行ったりしないわ」


「誰か来たのかい?」


奥の部屋から弱弱しい声が聞こえてきた。


「だっ誰も来てやしねえよ」


男はフォザリアの腕を掴むと店の入り口まで引っ張ってきた。


「帰ってくれ、俺は捕まるわけにいかないんだ」

「大切な人がいるならどうして悪事なんかしたのよ」

「はあ?だまされる方が悪いんだよ、まっとうに生きたって金なんか稼げやしねえんだよ」


「それで、捕まってりゃあ世話ないわね」

「お前のせいだろうが」

「あらそうだったかしら?」


フォザリアはおびえた様子も見せないで男の顔をまじまじとみて言ってのけた。


「たいしたガキだな。ガキの割には妙に肝が据わってるしな。俺が怖くないのか?俺はお前を殺していたかもしれないんだぞ、お前から10ルーテン金貨分を奪った奴ろうが」


「あら、自覚があったんですね。そうですねあの時ははらわたが煮えくり返りましたよ。でももう過ぎたことです。親友を助けることができたし、私は死なずに王都にたどり着くことができたし、あなたへ復讐もしたし、私的には何もあなたに対して恨み感情はないわ。あなたにはあるかもしれないけど」


「なるほど、ちげえねえなあ~恨みは俺のほうだけだな。俺はお前のせいで店も何もかもなくしちまって今じゃお尋ね者だ。だけどまっ、孤児を殺したって金になるわけじゃねえしな。それに俺はあんたみたいな性格嫌いじゃないし。でっ、本当なのか?」


「何がですか?」


「店を売ったら、俺を見逃してくれるのか?」


「私は嘘はいわないわ。私からは役人には何も言わない。でも他から洩れるかもしれないですけれどね。その時はあなた自身の詰めの甘さでの失態、その場合は私を恨まないで欲しいわ」


「あっははは!そりゃそうだ。よし、じゃあお前の全財産で譲ってやる」

「はあ?あらじゃあただで譲ってくれるの?」


「俺様は金の匂いには敏感でな。お前さんは大金を持っているだろう」

「そうね、確かに持ってるわ。だけど条件があるわ」

「なんだ、聞くだけ聞いてやろうじゃないか」


「もう、孤児を不当に働かせないって誓ってちょうだい。それを誓ってくれたら私の全財産をあなたに譲ってもいいわ。但し、あなたが最初に私からぼったくった10ルーテン金貨分は差し引かせてもらいますけどね」


「いいだろ、俺様もそろそろここも危ないって思っていたしな、ガキの扱いはいい加減うんざりしていたところだ。今度はまっとうに大人を使うさ」


男はそういうと、奥の部屋から一枚の紙を持ってきた。


「これがあの土地の権利書だ。おふくろには言ってある。もし気が向いたらでいいからさ、お袋の様子をたまにのぞいてくれると助かるんだけどな・・・無理だよな」


「あら、そんな事でいいならお安い御用ですよ。あそこからそんなに遠くないですしね、あなたがきちんと定期的にまっとうに生きてるって母親に知らせるって約束できるならね」


「お前本当にガキか?」


「あらもうガキではないわ。正真正銘のもうすぐ17歳よ。歳なんて関係ないでしょ、生きてきた濃さが違うのよ、あなたも人の子だと分かって安心したわ。最初あった時も二度目の時も悪魔じゃないかって思っていたもの」


「ははは、悪魔かそりゃあいい、半分悪魔に魂を売っちまってるさ」

「さあ、確かめてくれ」


そう言って見せてきた紙は、確かに本物のようだった。所有者も女性の名前が書かれてあった。フォザリアはそれを確認して、スタスタと奥の部屋に入って行った。


「おい!」


男の静止を無視してフォザリアは明るい顔で奥の部屋に通じる扉を開けた。


「こんにちは」


フォザリアが扉を開けると中にはベッドに横になっている歳老いた女性がいた。フォザリアの顔をみた女性は少し驚いている様子だったが弱弱しく笑顔を向けた。


「どちら様でしょうか?」


「初めまして、私はフォザリアといいます。この度、お子様から紹介を頂いて、この先の奥様の所有していらっしゃるお店を買い取らせていただくことになりましたの。そのご挨拶にまいりました」


「あらそうなの・・・あの店はね私の亭主が商売をしていたんですよ。もうずいぶん前に閉めちまいましたけどね。またあの店でお客様の声が聞けるなんてねうれしいねえ・・・」


「お嬢ちゃんがなさるの?」


「はい、まだどのようなお店にするかは決まってませんけれど」

「そう、頑張ってね」

「ありがとうございます。あのまた訪ねてきていいですか?」


「あらあら、こんな年寄りに会いに来てくれるなんてうれしいねえ。待ってますよ」


そういうと、にっこりとフォザリアにほほ笑みかけた。するとフォザリアは背負っていた袋から金貨が入っている袋を取り出すとそのまま、ベッドに寝ている女性の枕元にその袋をそのまま置いて言った。


「この金貨はあのお店を売っていただいたお金です。くれぐれもお子様には全部渡さないようになさってくださいね。大金を手にするとまたよからぬことを考えるかもしれませんから。人とは弱い生き物ですから」


「おや、知っていなされたのですか?ええわかりましたよ。でもこっこんなに大金はおかしいですよ。あの店はかなり古いですし、せいぜい50ルーテン金貨分が相場ですよ。おつりを返さなくては」


「いいえ、間違いじゃありませんよ。私はこの金額であなたのお子様からお店をお譲りして頂く約束をしたんですから。あのお手数ですけれど、こちらの書類にサインいただけますでしょうか、売買契約書ですわ。権利書はこの通りいただいていますから」


フォザリアはそういうと、金貨はそのままにして袋の中から一枚の紙と筆を取り出した。これは、城を出る少し前にピオレからもしもの場合に備えて正式な書類を作成してもらっていたものだった。女性はその紙に目を通すと、下に自分のサインを書き込みフォザリアに手渡した。フォザリアはそれを受け取ると、契約書と一緒に大切に袋の中に入れると、背中に背負った。


「ありがとうございました。また来ます」


「こちらこそ、あっお忘れですよ。あの店の鍵ですよ。役人さんから返してもらったんですよ。店の中の物は全部没収になったって聞いてるんですけどね」


「たすかります。処分のテマがかからないので」


フォザリアは鍵を受け取ってもう一度頭をさげた。

女性も体を半分起こしながら部屋を出ようとしているフォザリアを見送った。フォザリアが部屋から出てくると男性は慌てた様子で近づいてきた。


「おい、何してくれてんだ」


「あら、何ってあの土地の正当な権利者と売買契約をしていた所ですよ。後はこの権利書と売買契約書を役所に届ければ、正式に私のものになるんですよね」


「この世界はわりと簡単だから助かるわ」

「あっああ、いやいや俺が言いたいのは、どうしてお金を俺に渡さねえんだってことだよ」

「あら、あの土地はあなたのではないんでしょ」

「・・・」


何も反論できずにいる男をそのままにしてフォザリアはスタスタと外に出て行った。

歩きながらフォザリアはまた落ち込んでしまっていた。


(ああ~どうしよう・・・勢いあまって全部渡しちゃった。少し分けておくんだったな。寝床は確保したけど食べるものどうしよう、何もないっていってたしな・・・)

フォザリアはお腹をさすりながら役所に向かって歩きだした。












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