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私は無関係です!  作者: あやめ
無関係だと思いたい
32/37

五十嵐兄弟

キヨさんが持ってきてくれたスープは程よく温かくて

でも心に染み渡るような暖かさが優しかった



『あの、キヨさんここはどこなんでしょう?』

『おや。私はだあれ?なんて言うんじゃないだろうね?』キヨさんはそう言ってホッホッホと笑った


『いやいやそんな』

『ここは五十嵐組の本家だがね。』

『五十嵐組…ですか。』

『あの、私森川さんと会社が一緒だったんですけど、森川さんもここの息子さんなんですよね?』

『森川…あぁ将太ぼっちゃんだね。

あの子は面倒だとか言って五十嵐の名ではなく母親の旧姓を名乗ってたね確か。

いつまでも親の脛かじってるような

辰毅ぼっちゃんよりも1人立ちしてる将太ぼっちゃんはえらいわー。』


んーたぶんそうだと思うけど…

一応聞いてみようかな…

『もしかして、森川さんのお父さんが組長さん…なんですか?』

『おや、知らなかったのかい?さっき話してたあん人がそうだよ。組長さんなんて言うとなんだか可愛らしく聞こえるがね。』ホッホッホとまてキヨさんは笑った


やっぱり…そうだよね。

あのお屋敷から出られてないんだな

これからどうしよう


『まぁまぁそんな考え込んだ顔してないで、

今は体を治すことだけ考えなさいね。

それからまた考えたらええよ。』

そう言って手を握ってくれた

しわくちゃな手がなんだか

とても温かく感じて泣きそうになった


『ありがとうございます…』

『さぁさ、スープも飲んだしまた横になってゆっくりしときんさいな。何かあったら呼んでくれたらすぐに来るからね。』

『はい。』

布団にまた入り込む杏を見てにっこり笑うとキヨさんは空いたお皿を持って行ってしまった



キヨさんが行ってしまった少しの寂しさと

温かいスープの味と色んなことが混ざり合って

杏はなんとも言えない気分だった

でも嫌じゃないな。

杏は布団を顔までかけて潜り込むとそのまま静かに瞼を閉じた






————————————————————



目が覚めてから3日もたつと熱も下がり

体の調子もだいぶ良くなってきた

ずっと寝ていたこともあり体力がだいぶ落ちてしまったが


杏は布団からはい出すと

窓を開けて深呼吸した


んー。気持ちいい!

久しぶりに動きたいな


前には少し広めの庭がある


よーし!

杏はそこに置かれていたサンダルを借りて

庭に出てラジオ体操を始めた



…いち、に、さん、し。ごう、ろく、しち、はち。

次なんだっけ?

えーと…


『だいぶ元気になったみたいだね。』


声のした方を見ると

和服の男の人がいた。30代後半くらい?

落ち着いた雰囲気を漂わせている。

なんかどこかで会ったことのあるような…

そんな気がする人


『でもまだあまり無理をしない方がいい。

ほら美味しいお菓子を持ってきたんだ一緒に食べよう』


『え?えーと…』

杏がどうしようか戸惑っていると向こうから

キヨさんが来るのが見えた


『おや、創哉ぼっちゃんこんな所におったんかえ。

向こうで探しちょったがね。』

『ちょーっと息抜きしたくてね。キヨさんお茶貰えるかな?』

『はいはい。

おや、それは、猫柳ねこやのお饅頭だがね?

これは美味しいお茶用意しなくてはなぁ

ホッホッホ』

笑いながらキヨさんはお茶を淹れに行ったようだ


『ほらほら杏さんこちらにおいで。』

『はぁ』


少し警戒しながら近づいた杏を手招きして隣に座るよう促した


『あの。すみませんがどなたですか?』

『あぁ。覚えてない?

俺は五十嵐いがらし 創哉そうや

杏さんが庭で倒れた時に会ったんだけど…流石に忘れてるか』

『え?…あ!あの時の!

ありがとうございました!!

おかげで死なずに済みました!』

杏は創哉に頭を下げた


『ははは。死なずにって大袈裟だな。

まぁ確かに一時は危なかったみたいだけど。

でもとても元気そうで安心したよ』


会ったことがある気がしたのは記憶はないけど

脳が覚えてたのかもしれない


あれ、五十嵐?また五十嵐さん?

キヨさんも確かぼっちゃんて呼んでたよね

森川さんと森川兄よりも(←名前忘れた。というか覚える気がない)年上に見える


『五十嵐さんは森川さんのお兄さんですか?』

『森川?ああ!将太か。そうそう俺が長男。』

『なんかいろいろ巻き込んでしまったみたいでごめんね。2人には俺と親父できつーく言っといたから。

でもまだ許せないって言うなら一発、いや何発でも気がすむまで殴っていいよ?連れてこようか?』


『いえいえいえいえ!

そんな!結局私別に何もされてませんし。

大丈夫です!』

『そう?遠慮しなくていいんだよ?』

『いえ、本当に大丈夫です!』

なんだろ五十嵐さん顔はとても優しそうなのに

なんか恐ろしい




『お待たせしました』

キヨさんがちょうどお茶を持ってきてくれた

ちゃっかりお茶は3つあるので一緒に食べるつもりのようだ


『さ、杏さん食べてみて。猫柳のお饅頭はとっても美味しいんだよ。さ、キヨさんもどうぞ』

『ありがとうございます。


…!!美味しい!こんな美味しいお饅頭初めて食べました!』

生地がもちもちして、あんこの甘さが口いっぱいに広がるけど甘すぎない。ちゃんと豆の美味しさが伝わってくる!


『それは良かった。こちらは白あんなんだこっちも良かったら食べてみて。』

『はい!いただきます!』


んーーーー!!こっちも美味しーーー!!

白あんは更に豆の味がしっかりしてこれも美味しい!

これならもうあと10個は食べられそう!


『はは。杏さんは本当に美味しそうに食べるね。

そんなに喜んでもらえるとこちらも嬉しくなるよ。』


キヨさんが淹れてくれたお茶がまたお饅頭によく合うお茶で、杏はなんだかとても幸せだった

それを見て創哉も楽しそうに笑っていた



『ところで…杏さんはこれからどうしたい?

親父は朝霧の所に帰すつもりみたいだけど…

杏さん、もしかして朝霧が来たの知ってて出て来なかったんじゃない?あそこすぐ近くだったよね。』


『はい…。

私は朝霧さんの所には帰りたくありません。』


『それはどうして?2人は付き合ってるんじゃないの?』


『いえ。付き合ってないです。好きだなんて言われたことないし…

私はこの微妙な関係が嫌なんです。ウジウジと考えちゃう自分も。今戻ってもまた同じ。なら私、どこか別の場所でまた1人で暮らしたい。今は朝霧さんの近くにはいたくないです』


『そう。

それが本気ならこの街では暮らせないよ。

朝霧はだいぶ杏さんに執着してるみたいだから、この街ではすぐに見つかってしまうだろうね。

どこか遠い所に…海外とかどう?』


え?海外?

『いや、流石に海外は…英語とか喋れないですし。』

『そう?海外まで行っとけばだいぶ目くらまし出来るんだけどな。』


海外って…日本じゃだめなの?人ひとり隠れるだけなのに?

いや、執着してるからってそこまで追いかけて来ないでしょ


『んー、ここから出してあげる事は出来るし、少し遠くまでなら連れてってあげられるけど、そこからは杏さん次第かな?』

『大丈夫です!私どこでも生きていく自信あります!』

『ははは!そりゃ結構!よし。

それじゃあこっちも用意しとくから杏さんも心の準備しといてね?親父の目があるからいつ行けるかわからないから』


『ありがとうございます!

でも、なんでここまでしてくれるんですか?』


『ん?そうだな。

弟達の謝罪っていう建前と杏さんが可愛いから何かしてあげたくなっちゃうっていう本音かな。』

そう言いながら杏の頭を優しく撫でながらとても綺麗に笑うからなんだか杏は恥ずかしくなった


『ちょ!からかわないでください!』

『はは!ごめんごめん。でも

もしも、本当に辛くなって朝霧から本気で逃げたいと思ったら頼っておいでね。必ず力になるよ。』


本気?今でも本気なんだけどな。

あまり伝わってないのかな?

でもとりあえずあの生活からは抜けられそうで

ほっとした後は体を元に戻して

いつでも行けるようにしとかなきゃ


『それじゃ、そろそろ戻らないと!またね杏さん。

キヨさんもありがとう』

そう言うと五十嵐さんは足早に去っていった



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