鈍すぎ!
うわっ!!
歩き出そうとまさに一歩踏み出すのと同時にドアが開いた
びっくりしたー。
転ぶかと思ったが
腕を掴まれ派手に転ぶのは避けられたようだ
『あ、ありがとうございます…』
…
…
…
『あの、手、離して下さい。私帰ります。』
杏が力強くいうと
一度強く握られた手がそっと離れていった
『わかった。
だがこのままお前一人でここから出るのは危ねぇから送ってく。
いいか、少しだけだから待ってろよ。』
そう言って朝霧さんは一度部屋に戻ると
本当にすぐに出てきた。
早!!
『ついてこい』
そう言って通り過ぎる朝霧さんの後を
無言で付いていく
少し歩いてエレベーターに乗る
…
…
沈黙。
こういうのは苦手だけど
今なにを言ったらいいのかわからなくて
結局黙ったままだった
そういえば私がここから一人で出ると危ないって
言われてたっけ。
なんだかんだ朝霧さんも優しい所があるんだなぁ。
…
でもさっきのキスは何だったんだろう。
朝霧さんは…変わった様子はないなぁ
といってもいつもの朝霧さんなんて
そんなに知らないけど…
からかわれたのかな?
きっとそうだよね。
好きとか言われたわけじゃないし。
背高いなぁ。身長何センチくらいあるんだろ?
結構高いよね。180はあるよね。
そんな事を考えながら朝霧の後ろを
付いて歩いていると車に着いたようだ
今までに見た黒塗りの車ではなかったけど
フルスモークで中は見えなかった
促されて座ったのは助手席で
朝霧さんは運転席に座った
なんだか珍しくてじっと朝霧さんを見つめてしまった
『なんだ』
『朝霧さんも運転できたんですね。
いつもタカさんがしていたので出来ないのかと
思ってました。』
『あぁ
…俺の方が運転うまいぜ。』
ニャッと片方の唇の端をあげて
自慢げに言う朝霧を見て
なんだか面白くてふふっと笑ってしまった
エンジンをかけると
洋楽だろうか
聞いたことのない曲だけど
とても心が落ち着く曲が流れ始めた
その曲を聴きながら
杏はひたすら窓の外を見つめた
もう夕方だったらしく遠くに見えるビルに
赤い太陽が沈んでいく
それはいつもと同じ光景なのに
なぜか今はとても神秘的で
杏はその様子を車の中でじっと見つめていた
しばらく走ると
車は静かに止まった
外を見ると
杏のアパートの前だった
『ありがとうございました。』
杏が車から降りてお礼を言うと
朝霧が静かに語りかけた
『白川 杏
俺はお前を諦めたわけじゃねぇから
…またな。』
それだけ言うと車は走り去っていった。
…
…
またなって…
どういう事?
ブルっと震えが走った杏は足早に家の中に入った




