帰還
俺は、気づいたら自分の部屋にいた。
「何で?」
頭が重い。ふと、カレンダーが視界に入る。時間と日付が表示されるデジタルタイプ。
「あれ……朝!?」
思わず部屋のカーテンを開ける。
鳥が飛び、野良猫が鳴いている。
「俺は高校に居たんじゃ!?」
登校時間が迫っていた。
「とにかく行けばわかるか」
机に目がいく。覚えのない便箋が置いてあった。
「これは!」
※ ※ ※
高校に着くなり、クラスメイトから声を掛けられる。
「昨日は大丈夫だったのか」
「雨が降ったのは夏郷のせいだぞ!」
「夏郷くんを見直したよ」
あの┃便箋《伝言》がなかったら混乱していただろう。
『君が便箋を見ているということは、無事に君の世界に戻れた証だ。君は僕と意識が入れ替わっていたんだ』
あんなことが遭ったから、すんなりと受け入れられた。
『入れ替わった原因は僕にも解らない。けど僕自身は冷静だ。体験者を知っていたから』
破耶のことだ。けど破耶は俺を知らなかった。
『君の世界の生徒会長を見たが驚いたよ。印象が全く違って驚いた』
そういえば異世界の校長が言ってたな。
「おい夏郷!」
声を掛けられ我にかえる。
「生徒会長が呼んでるぞ?」
振り向くと女子が待っていた。
※ ※ ※
「は……い!?」
「悪かったのだ。こんなので」
破耶が複雑な顔をしていた。印象が大分違っていた。
「でも、君の代わりに頑張って世界と真っ向からぶつかってくれてたんだ。感謝はしても怨みはするなよ」
「わかっている。だがな、もう少し己に自信をもっても良いだろう」
「……向こうの俺が優等生タイプだったとは」
便箋を見ながら思った。
「異世界の俺たちは無事なのか?」
「校舎から落ちたあと、わたしは気を取り戻したのだ。幸い、植木がクッションとなって大した怪我はなかったよ。三人とも」
俺は気を失っていて知らない。
「だが、校長は校舎に爆弾を仕掛けていて……」
「万が一のときに備えてたわけか」
校長は、私利私欲の為に、私利私欲を満たす場所を無くしたのか。
「そのとき異世界の夏郷が言ったのだ、『君たちは君たちの人生を歩め』とな」
「あとは?」
「すまない。そのあと、わたしも意識が絶えてな」
「……そうか」
異世界とはいえ、一部でも関わった以上、やはり心配だ。
「わたしはずっと考えていた」
「何を?」
「貴様を何処かで見た気がしたのだ」
「そうだったのか。俺はあのとき初めて会ったけど」
「無理はないがな。どっちの貴様も高校には、一ヶ月前から通っていたのだから」
「あれ? 言ってたっけ。てか異世界の俺もそうだったのか?」
「異世界の貴様から意識を失う直前に訊いてな。貴様の事は朝に生徒会の者に聞いたのだ」
「異世界の俺はタイミングが最悪だったのか」
「ということになるのだ」
風が心地いい。あんなことがあった┃屋上《場所》でも、同じようで全然違うのだ。
「ここが、わたしの┃世界《居場所》なのだな」
異世界の両親、友人、仲間には感謝してもしきれない。
「さて、ホームルームだ。教室に戻らないとね」
「サボるのではないのか?」
「生徒会長が普通言うかい?」
「それもそうか」
「見習わないとって思っただけだよ」
「そうか」
「ほら行くよ、会長」
感謝しているぞ、わたしよ。
異世界での人生がなければ、今のわたしは居ない。それに……。
「破耶でよい」
「置いてくぞ、破耶」
夏郷と出逢えたのだから。




