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異世界の女子高生

「開かない!?」


 いつものように校舎から靴を履き外へ出ようとするが扉が開かない。


「誰だよ! 鍵閉めたの」


 押しても引いても、びくともしない。


「強情な扉めっ」


 鍵が掛かって開かないなら鍵をとってくるだけだな。


「真面目に誰も居ないのかよ」


 辺りを見回りながら職員室に向かう。


「開……かない」……


 職員室に行くための扉が開かない。職員室に通じる廊下は、この扉の先の廊下だけなのに。


「鍵なんて、この扉には付いてないのに」


 目についた扉、教室、各通路への扉、はたまたトイレの扉まで……。


「なんで鍵が付いてない扉も開かないんだよ!」


 腹が立つが仕方がない。


「窓は開いたよな。ここから出れば」


「死にたいのか?」


 急に話しかけられ思わず体勢を崩し、廊下に後頭部を叩きつけてしまった。


「いたー!」


「痛いで済むなら障りないな」


「……人間……!?」


「失礼だな、おまえ」


「幻じゃ……ないよな」


 目の前にいる人は、この高校の制服を身に纏った女子だった。


「人間だあああああ!」


「うるさいぞ! そんなに人間が珍しいのか!」


「ようやく人に会えたから、つい」


「だからどうした!」


 女子の問いに言葉が詰まる。


「大体そんなことで騒ぐ歳でもないだろう」


「密室でもか?」


「窓が開く時点で密室は成り立たないぞ?」


 俺は、返す言葉がなかった……。


※ ※ ※


「……ということだ」


 暫く彼女の言うことを聞いていた。が、意味が解らない。


「なあ、そんなことを真顔で言う歳でもないだろ?」


「わたしの言うことを理解できんとは……馬鹿だな」


 馬鹿にされて頭に血が昇る……気がした。


「まあいい。おまえがどう思おうが大して変わらん」


 女子が胸元から何かを取り出した。


「おい、男の前でっ……て!?」


「わたしは、自分がおまえほど馬鹿ではないと自負しているつもりだ」


 女子が拳銃の銃口を俺に向ける。


「なんで拳銃なんか持っているんだ!?」


「言っただろう。学校ここ異世界パラレルワールド。おまえとは違う世界に在る学校だ」


「どうして言いきれる!」


「わたしは、この世界の人間だからだ」


「わかった!? だから拳銃それ、しまってくれない」


「いいだろ」


 女子が拳銃をしまう。正直ホッとした。


「俺は、どうして異世界こっちに?」


「屋上にある装置が原因かもな」


「屋上? 俺、屋上に居たんだ。元居た世界の」


「なるほど」


「ところで。どうして窓から出たら死ぬのさ? 一階だよ」


「屋上に装置がある。校舎を護るバリア発生機だ。そのバリアに触れたら最期、今ごろ生きてはいない」


「えっ!?」


「故にわたしが拳銃を持っている理由わけは……」


理由わけは?」


「…………………」


「早く言ってくれ!」


「そんな発生装置を壊すためだ」


「壊す? でも屋上に行くにも扉が開かなきゃ行けないだろう?」


「む? エレベーターを知らないのか?」


「なに言っているんだ? この学校には無いぞ」


 俺の知っている学校にはエレベーターなんて無い。


「あそこだ」


 女子が指差す場所は、用務員が使うロッカーだった。


「おい……」


「馬鹿だな。裏だ裏」


 言われるがままロッカーを退かすと、エレベーターがそこに在った。


「聞いてないぞ!?」


「世界が違っても変わらないようだ。校長は」


「戻ったら確かめてやる!」


「おまえの決意など知らん」


 女子がエレベーターのボタンを押す。


「何故、誰も居ないか知りたいか?」


「まあ」


「死んだよ。バリアに皆殺られた」


 背筋がゾクッとした。死んだということにもだが、何よりも女子の瞳が真実を語りながらも、どこか冷たい眼差しをしていたからだ。


「装置の事を知らなかったのか?」


「装置の存在を知っていたのは、わたしを含めて四人。そのうち二人は屋上から身を投げてな」


「何で?」


 エレベーターが一階に到着した。


「………屋上からは、下の階には行けない仕組みになっている……らしい」


「そう、なのか」


 まるで己を説得してるかのように見えた。

 俺の肩ほど迄の背丈が、後ろから見ると大きく見えてくる。


「おまえは、一階に残れ」


 この異世界せかいは俺の世界と似ている。けれど違う。知らない世界。それでももう、知らない訳じゃない。


「女子ひとりだけで行かせられない。俺も行く」


「降りれないのだぞ!?」


「お互い、な」


 女子の掌がこぶしに変わる。


「覚悟の上なのだ。校外の人達を護るために」


「じゃあ俺は、君を護るよ」


「済まない……恩に着る」


 彼女の表情が和らいで見える。


「そういえば俺達、名前を言ってないよね」


 エレベーターに乗り、扉を閉める。


「俺は、飯沼 夏郷かざとだ」


「わたしは、紅 破耶はやなのだ」


 出会って数時間だが、初めての気がしなかったのは、わたしが飾らずに接していられたからか。もしかしたら何処かで会っているかもしれない……。


「あ、質問いい?」


「なんだ?……貴様」


「どうして俺が異世界パラレルワールドから来たって分かったんだ? あと貴様って」


「それは簡単だ。わたしも貴様と同じだからだ。それと、〝貴様〟とは認めた者にしか言わないぞ」


「え!?」


 それって破耶()も、この世界の人間じゃないってこと!?


「貴様、行くぞ」


「うん」


 エレベーターが屋上へと動き出した。

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