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第二話

二話を何とか書けた・・・これ、どれだけ続けられるだろう、もう何かお腹いっぱい感が。

ガラにも無い話書くモンじゃないなw

私、桜井みおが開いたアパレル雑貨カフェ「自由が丘解放区」は、

夜になるとナイトバー「Mio」に変わる。


昼のカフェは11時から開店して17時に一旦閉めて、

19時から24時までをバーにしている。

営業日はカフェが月・火・木・土・日。

バーは月・水・金・土。


どうしてこんな変則的にしたのかと聞かれれば、明確な答えは無い。

ただ、世間一般的な枠組みとは違う所で生きたかったのだ。

常連さんが出来た時に、変則的な方が意識して貰えると言う狙いもあった。

もしこれで上手く行かないようなら、早々に営業時間を変えれば良い。

まず認知して貰うまでは試行錯誤を重ねながら進めて行こうと思った。


カフェとバーとでは、シフトに入る子達の顔触れは多少変わる。

もちろんどちらにも出る子もいるが、今日のシフトに出ている

元プログラマーの月見つきみ なぎ35歳は、バー専門だ。



挿絵(By みてみん)

月見凪はエナドリを混ぜたカクテルが好みだ。



うちの店には他の仕事と兼任で来ている子もいるが凪もそのタイプで、

彼の場合は個人事業でプログラマーをしている。

あまりに普段人と接しなさ過ぎる為、うちに来てそれを解消したいと言う。


昼とは打って変わって、店内をムーディーな照明と蠱惑的な匂いで演出し、

少し大人な雰囲気を楽しんで貰いながら私も好きなお酒を飲む場なので、

スタッフが男性であれ女性であれ別に構わないのだが、

彼は女装と言ってもバニー衣装?のような、

ややセクシーめなものを好んで着たりするのだ。


「あの、凪君、それ恥ずかしくない?

 私も雰囲気作りのために肩出しドレスを着ているけど、

 男の人が着るにはその衣装、ちょっと難易度が高いのかなー、

 って思っちゃって。」


「あぁ、オレ今さらこの歳になって、恥とかあんま無いんで。」


素っ気ない返事だった。

だったら普通のスーツとかは着ないの?とか思ったけれど、

彼の場合はおそらく、日々変わらずずっと自宅で仕事を請けて、

やや鬱屈した感情があるのかも知れない。

あまりアクティブな趣味も無いみたいだし、

彼なりに非日常を楽しみたくてここを選んだのかも知れない。

ただその辺りの事はまだ、関係性を深めてから聞こうと思った。

まずはこの夜業態の方も軌道に乗せないとだからね。


幸い、バーの方は客引きをしなくとも自然とお客様がいらっしゃった。

事前にネットで告知したり近隣にチラシを撒いたりしていたし、

初日と言う事もあり、物珍しさや様子見で来たお客様もいるだろう。


"いらっしゃいませ~"と、私はお客様を案内する為に入口へと向かう。

すると凪がスッと後ろから付いて来て、お客様のカバンをお受けする。

次にジャケットをハンガーに掛けたりと自然な動作が出来ているが、

お客様の目には肩出し衣装の35歳の彼はどう映るのだろうか。


お客様は4人連れで、会社帰りといった感じだ。

週始めの月曜日、仕事終わりに景気付けで来たと言う事だった。


「ヘェ、珍しいね、バニーボーイさん?」


電子タバコをくわえてハンカチで汗を拭っている、

4人の中でおそらく一番上役であろう男性が言った。

凪がそれに応える。


「あー、一応女装のつもりなんですけどね。

 やっぱり骨格とか男のまんまだし、そんな風に見えちゃいますよね。」


彼は特に残念そうな素振りは見せず、ただ淡々と答えた。

また別の、次は長身でストライプ柄のスーツが印象的な男性が言った。


「や、でも何かキミ、ちょっと色っぽいよねぇ。

 日中あまり外に出ないのかな?肌も白いし。

 不健康そうで幸が薄そうな感じとか、結構そそるかもなぁ~。」


凪は、”あ、ありがとうございます・・・。”と、若干照れていた。

それを見て男性達も囃し立て、少し場が盛り上がる。

決して饒舌なタイプでは無いが、その不器用さが刺さる人には刺さる。

強めのカクテルを頼み酔いが回って来た男性達は、

徐々にテンションが上がりトークも盛り上がる。

それと共に、ボディタッチも増えて来た。


「へぇ~、店長さんまだ28かぁ。

 それで独身とか、勿体ないねぇ。良い人紹介しようか?」


私の胸元を凝視しながら、お客様が少し興奮して提案する。


「あ~、まだお店が軌道に乗るまでは、

 ちょっとそういうのは考えて無いんですよね~。」


と、やんわりと断る。

すると例の上役の男性が、私に顔を寄せて来た。


「ねぇ~ん、ボクちゃまと今夜、どうかな?」


別にこのくらいは、夜あるあるだから問題無い。

軽くかわせば良いだけだ。

しかし、凪が口を挟んだ。


「オレなら、今夜空いてますけど、どうですか?」


と、腰を少しくねらせながらやや微小を浮かべて言った。

冗談とも本気とも取れるような、

だけどそれまでの彼のイメージからすると少し積極的な振る舞いだった。


その瞬間、男性達の喉が『ゴクリ』と鳴ったのを私は聞き逃さなかった。


「か、考えとくよ。明日、仕事だしね。」


と、平静を装った男性達だったが、実の所少し期待したのではなかろうか。


昼間の優美な空間と打って変わって、夜は少し人の本性が見える。

私は同じ場所を使ってそれらの違った景色を見れている事が楽しかった。


日中の澄んだ空気の中、この店内で本を読むのも良い。

それと同じくらい、人々の冴えた目を眺めるのが面白い。

私はもう会社という檻を抜け出した一人の人間なのだから、

自分の好きなように生きて良いはずだ。


そんな事を考えていると、盛り上がった男性達に囃し立てられて凪が

胸元までバニースーツを降ろそうとしていた。


「ちょ、ちょっと、何やってるのよ!

 ウチはそういう店じゃないんだから、ダメよ!」


焦って止めに入ってはみたが、実はこういったトラブルも楽しい。

凪だって別に本気でそれをやっていない事はわかっていたし、

だけど誰か止める役がいなければ成り立たない、劇みたいなものだ。


男性達は最後に大満足してくれたようで、笑いながら帰って行った。

こうした夜の売り上げは、今の私にとっては大事な収入源だ。

私は凪に聞いた。


「ねぇ、あなた本当はもっと、過激に遊びたいとか無い?

 こんな窮屈な場所より、もっと奔放に遊べる方が、

 より『非日常を濃く味わえる』なんて思って、

 そのうちこの店から急に消えちゃったりしない?」


すると、凪は少し考えてから、答えを返した。


「いや、本気で過激に遊びたいなら、最初からここに来てませんよ。

 ただ、好きなんです。あぁやって人をからかって遊ぶのが。

 店長の年なんてとっくに超えてるようなこんなオレなんかで、

 ああして喜んでくれる事が嬉しかったりもするし、

 何より間違いが起こらないこうした店の方が良いんです。

 お互いに遊びのままで終わる方が、絶対健全じゃないですか。

 この歳で変な遊びに目覚めたら、体力持ちませんよ、オレ。」


凪は、明確にこの店を選んで働きに来てくれていた。

半分どこかでわかっていたような、だけど聞けて安心したような、

駆け引きでも何でも無いのだけど、

こうして人の本音に触れられる瞬間は結構好きだ。


私の店に来てくれている子達は皆、

私の店にしか無い何かを求めて、選んでここにいると言ってくれる。

自分の夢であり目標であったカフェ、そしてバーだけど、

お客様にとっての癒しの場でありたい気持ちも本物だ。


そして、ここで働いて私の夢を現実のものにしてくれている、

この不器用で愛らしい女装男子達もまた、ここで何かを得ている。


私は本当に店を開いて良かったと思うと同時に、

彼らにとってもより多くの素敵な経験や思い出を提供出来るよう、

これからも頑張って店作りをやって行こうと思った。


私のお店は開店初日の昼と夜を彼ら素敵なスタッフ達と共に過ごし、

やっと『CLOSE』の看板がドアの前を飾る事が出来たのだった。

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