第6話 進展と久しぶりの再会
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俺は朝、現実世界で目が覚めた。
今回の夢の中の時間は、いつもよりも長かった気がした。
「ゴブリンキング……強敵だったな〜」
そんなことを呟きながら、俺は起き上がった。そのとき、廊下をバタバタと音を立てながら妹の小夜が歩いてきた。
「お兄ちゃーーーん!???朝ですよぉ!???」
妹が起こしに来てくれた。だがすでに俺は起きている。
「起きてまぁぁす!!!」
そう言い返すと、
「起きてんなら早く降りて来いヤァ!」
そう言って、ずかずかと部屋から出ていった。
少し機嫌が悪いようだから今日の帰り道に何かスイーツでも買って機嫌を直してもらうことにする。
「さて、俺も学校の用意をしますかね」
今日は金曜日!学校も今日行けば休みだ。
ササッと学校に行く用意をして、ご飯を食べ、家を出た。
駅へと早歩きで向かい、電車に乗った。
いつもと変わらない日常。これが長く続くことを願いながら……
最寄駅の[黎明高校前]で降り、時間を確認。いつもよりも少し遅かった、電車が遅れていたのだろう。
俺は全力で走る。学校へと着き、すぐにクラスへ向かう。だが、チャイムが鳴った。鳴り終わる前にクラスの扉を開け、席へとついた。その10秒後、前川先生がいつも通り遅れてやってきた。
「セーーーフ!!!!今のはセーフだよな?」
前川先生がクラスのみんなに確認をとった。
俺らクラスメイトは声を合わせ、
「アウトォォォォ!!!!!」
と叫んだ。
そして、朝のSHRを済ませ、授業をする教室まで移動する。移動の途中に拓也と会話をした。
「今日はほんとに遅刻ギリギリだったな?」
「そうなんだ、電車が遅れてて」
「それはしょうがないな〜、だけど早く起きる努力をしろよ?」
「でも……今は夢でさ、戦ってるから」
「あ、そっか!日本の滅亡を防ぐためだっけか?頑張れよ!朝陽次第で日本の未来が変わるんだぞ!?」
と言われて、俺は少し焦った。今のままの俺じゃ絶対に勝てない。アンジュの強化魔法がなければゴブリンキングを倒せなかったんだ。
「あ!そういえば魔法使えたぞ!火球って魔法だ!」
俺は自慢するように拓也に言った。
「すげぇ!今度見せてくれよ!約束だぞ?」
「おう!絶対に見せてやるわ!」
拓也との約束……絶対に覚えとかないと。
その後は、淡々と授業を受け、放課後になった。
「拓也一緒に帰ろうぜ?」
「いいぜ!帰ろ!」
そして俺らは学校を出ようとした。下駄箱でたまに見かけた綺麗な子を見つけた。
「今度こそ話しかけてみろよ朝陽!」
「えぇ〜でも……」
「悩んでてもしょうがないだろ!さぁ行ってこい!朝陽!!!」
そう言われ、俺は勇気を振り絞り、名前を聞きに声をかけてみた。
「あの〜すみません、お名前はなんですか?」
俺はその言葉を言った後に後悔した。ど直球すぎた。
「あ、私ですか?私は夜宮夢月と言います。どうぞ、夢月と呼んでください。よろしくお願いします朝陽さん」
俺は名前を聞けて心の中でガッツポーズをした。だけど、俺の名前を知ってる……?なぜだろう……
「よろしく!夢月さん。なんで俺の名前を知ってるの?」
「今そこで朝陽と大声で言われてましたよね?お友達と仲がいいんですね。」
夢月さんはそう言って、少し笑っていた。
拓也との会話を聞かれていたのか……?それはともかく、俺はその笑顔に心を打ち抜かれてしまった。
「そうなんだ!あいつは拓也って名前で、俺と小学校からの大親友なんだ!」
「そうなんですね、私は最近このせか……いえ、この辺りに来て、学校に知り合いがいなくて……よければお友達になっていただけませんか?」
「ぜひ!こちらこそお願いします!」
俺はすぐにそう答えた。その後はRunというメッセージアプリの連絡先を交換して、会話を終えた。
俺は拓也の元に戻ると、
「やった!名前聞けた!しかもお友達になってくださいって言われちゃったよ!それに、連絡先も交換しちゃった!」
「良かったな!こんなに上手くいくとは思わなかったぜ」
「まぁ俺にかかればこんなもんよ?」
俺は友達になれたことが嬉しくて少し調子に乗っていた。
その後は、拓也と一緒に家に帰った。
帰り道、いつしかの黒猫と白猫がいて、拓也に紹介した。
「ほら見てみろよ!あれだよ、家の塀の上にいるだろ?めっちゃ可愛いんだ!」
「ほんとや!これは朝陽が朝遅刻しそうになるのも分かるわ!なんかずっと見てられるなぁ」
俺と拓也は数分、黒猫と白猫を眺めた後に駅へと向かった。
駅では、黎明高校からの帰る人で賑わっていた。俺は電車の中で小さな声で夢の話をしていた。
「なぁ拓也、夢でさ、めっちゃ強い魔物と戦ったんだ。ゴブリンキングってやつでさ、名前だけ聞くとあんまり強くなさそうって感じだろ?ゴブリンのキングなだけだし」
「確かにな、名前だけ聞くと弱く感じるな」
「ギリギリ勝てたんだけど、そのあとが謎でさ……ゴブリンキングを倒した後、森の奥のゴブリンの集落でそのままぶっ倒れたんだ。そして目を覚ましたら冒険者ギルドってとこにいたんだ。ここまではいいんだが」
俺はそこで一呼吸落ち着き、
「助けてくれた冒険者いわく、俺は森に入って少ししたところにいたらしくてさ……な?おかしいだろ?」
「うーん……確かにおかしいな。だけど考えてもしょうがないことだろ?まずは倒したことと生きて帰って来れたことを喜ぼうぜ!」
「まぁそうだな、勝てて良かった!生きてて良かった!」
拓也が自分の家の最寄駅に着いたので、そこで俺らは別れた。
「じゃあな拓也!また月曜日!」
「おう!またな朝陽!」
その後はいつも通り電車に揺られ駅に着いた。
「あっ……そうだ、妹にスイーツでも買ってかないと」
俺は朝の出来事を思い出し、駅前のケーキ屋へと向かった。
扉を開け、
「こんにちは〜!」
と言うと、
「いらっしゃいませ!あれ〜?久しぶりだね!朝陽」
と声を返してくれたのは、幼稚園と小学校、中学校と一緒だった、幼馴染の橘陽菜がそこにいた。
「あれ?陽菜お前ここで働いてたのか?」
「そうだよ!今アルバイトなんだ〜!家からも近くてさ、春休みあたりから働かせてもらってるんだ!」
陽菜は小学校の頃から働き者で、中学校では生徒会長をやっていた。すごく真面目で明るく、元気だった。
「なるほどね〜じゃあチョコケーキお願い」
「朝陽がチョコケーキって珍しいね〜いつもはケーキとか食べないのに」
俺はあんまりケーキとかお菓子とかの甘いものは食べていない。
「あぁ今日は小夜に買ってこうと思ってさ」
「小夜ちゃんと喧嘩でもしたのかな?」
「喧嘩……とまではいかないけど、朝起こしに来てもらった時に言いすぎちゃって、不機嫌だったんだ」
「朝陽はまぁ〜だ、小夜ちゃんに起こしてもらってるのか!!いい加減自分で起きなさい!!」
「いや自分でも起きてるよ」
陽菜は俺と話しながらチョコケーキを手際よく用意してくれていた。
「はいお待たせ!またのご来店待ってまーす!」
「ありがとう〜また妹が不機嫌だったら来るかも」
そう言って俺はケーキ屋を後にした。そして、家に帰ると、妹が待ち構えていた。
「お兄ちゃん!明日買い物に行くの!だから一緒に来て!!!」
俺に拒否権はない。
「はいはい、分かったよ。あ、そうそうほらケーキ買ってきたよ。小夜の好きなチョコケーキだぞ」
「ほんと!?やった〜!!!お兄ちゃん大好き!ありがとう〜!」
良かった、機嫌が治ったようで……ほんとに……
その後はいつも通りの夜のルーティーン等を済ませ、眠りにつく。
「おやすみ〜」
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俺はギルドのベッドの上で目覚めた。そういえば、今まで気にしてなかったが、現実世界で流れた時間とこっちの時間って一緒なのだろうか……
「なぁアンジュ、現実世界とレーヴの時間の流れって一緒なのか?」
「いえ、違いますね。現実世界にいる時間はこっちのレーヴの時間は流れていません。逆にレーヴで過ごした時間そのものが現実世界で流れているとも限りません。睡眠の質や環境などで大きく変わることがあります。ただ……現実世界で寝ている時は基本的にこちらの世界にずっといる形です。」
「なるほど……ということは今このベッドにいる状態は、ギルドの受付の人が出てったあとすぐのあたりか」
「そうですね……昨日のあの後ですね。」
「まぁでも反動とかの痛みは治ったっぽいな。昨日はまだ少し痛んだけど。」
さて、今日はこれから小さな女の子が無事かどうか確認と、あとはギルドへの登録かな。そのために依頼達成がんばろっと。
「よぉし、行くか〜」
俺はベッドから降りて、部屋から出た。
「もう平気なんですか!?」
部屋から出て、ギルドから出ようとした時に受付の人に声をかけられた。
「とりあえずは平気です!元気が取り柄なので!それでヒール草が取れる場所ってありますか?あそこの森以外で」
「はい、その森に向かう門を出たら右に進んだらもう一つの森、[彷徨いの森]があるのでそちらには生えていると思いますよ」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
そう言って俺はギルドを後にした。
森の方の門までの道のりでは祭りのような準備をしていて賑わっていた。
「お祭りでもあるのかな?」
「そうです!イリュシアが街としてできて10年になるので、いつもよりもにぎやかに祭りをするらしいですよ!」
「祭りになったら行ってみようか!」
「そうですね!早く体が欲しいです……」
そうだった……召喚術を早く覚えなければ。
「どこで覚えるのかな?」
「それは……よく考えたら、まだ早いですね……朝陽様が今覚えようとしたら1回死ぬしかありません。」
「えぇ!?1回死ぬ!?それは無理だなぁ」
「そうですね……死を乗り越えると言われるアイテムがなければ無理ですね……なので正規方法で覚えるためにはまずは強くなるところからです!魔術方面が成長すればいつか機会が巡ってきます」
「死を……乗り越える?そんなアイテムがあるのか……いつか手に入れたいなぁ。魔術を頑張って極めよう!」
アンジュと会話してるうちに門へとやってきた。
「こんにちは門番さん!少し聞きたいことがあるのですが」
「おう!あんちゃん!昨日は大変やったな!大丈夫なのか!?それと、聞きたいことってなんだ?」
「はい!傷は特になくてとりあえず元気です!聞きたいことは、俺が昨日運ばれてきたと思うんですけど、その前に小さな女の子がやってきてないかなぁって思って。」
「ん〜……来てないなぁ、その子がどうかしたのか?」
「いや、昨日倒れて運ばれてくる前に、その女の子がゴブリンに襲われてるのを助けたんですよ。んで助けた後に怒鳴り声?のような声が聞こえてそっちに急いで向かうために、ここの街への道を教えて、門番さんに聞きなって言ったんですよ。」
「なるほど……うーんやっぱりそんな子は見なかったし、話しかけられなかったなぁ。関係あるかわからないけど、なんかあんちゃんの肩ぐらい?の高さの女の子は通ったけど、どこにでもいる普通の女の子って感じだったで」
「んーじゃあ違うかなぁ、ありがとうございました」
俺はそう言って門を出てさっきギルドの受付の人に聞いた彷徨いの森に行こうとした。
すると、
「あーちょいと待ちやあんちゃん、これから門を出て右の彷徨いの森に行こうとするんだろ?その森の奥には[ダンジョン]っていうところがあるんやけど、今のあんちゃんだと絶対に死ぬからやめときや」
「分かりました!森の奥のダンジョンはやばいんですね!ヒール草だけ取って帰ります!」
俺はそう言って街から出た。
「ダンジョンか〜面白そうだな!だけど、今の俺なら絶対に死ぬらしいからなぁ……まだ行くのはやめとくかな」
「それがよろしいかと」
そうして俺は彷徨いの森へと向かう……




