第5話 初めての依頼と強敵
依頼場所の森はスライムを倒した場所からはそう遠くはなかった。
「ここが森か〜」
すごく薄暗く、太陽の光も遮るように木が生えていて、すごく不気味だ。
「ここのどこにヒール草があるんだ?」
俺はしらみつぶしに歩き回った。依頼書に描かれているヒール草の絵と草を照らし合わせながら歩いているが、なかなか見つからない。
「アンジュ……ヒール草が見つからないんだが……」
自力で探すのは難しいと判断し、アンジュに助けを求めた。
「ヒール草をこちらでも探してみましたが、この辺りには生えていませんね……何者かに取られたような痕跡がありました」
俺がしらみつぶしに歩き回っている時に、アンジュもしっかりと探してくれていたようだ。
「くっそ〜、もっと奥に行ってみるか?」
とそのとき、
「キャーーー!誰か、た、助けてぇー!」
どこからか助けを求める声が聞こえた。もちろん俺は困ってる人を助けるために、声がしたほうに全力で走った。
「ここか!?」
茂みを抜けた先に周りが木に囲まれているが、少し木漏れ日が差している、少しひらけた場所に出た。そこで、ローブを着て、杖を持った俺よりも若くて、小さな女の子が2匹のゴブリンに襲われていた。
俺は瞬時にその状況を理解し、女の子に当たらないように、
「炎よ、敵を焼き尽くせ!火球」
1体のゴブリンに命中!そのゴブリンに向かって追撃で古びた剣で剣撃Ⅰを繰り出した。
「くらえ!剣撃Ⅰ!!!」
ザシュッ!ゴブリンを火球と剣撃Ⅰの2回の攻撃で倒すことに成功。
だがもう1体の方は木の棍棒を構え、戦闘体制に入った。ゴブリンとの戦闘は初めてで、1体は奇襲で倒すことに成功したが、もう1体の方は違う。
「ふぅ……」
俺は、古びた剣を構え、目の前のゴブリンとの戦闘に集中した。すると、いつもよりも集中できた気がした。そしてゴブリンと打ち合う。数十秒打ちあっただろう、そこで俺は、
「剣撃Ⅰ!!!!」
剣撃Ⅰのクールタイムが終わった直後にすぐに使用した。そして、スキルを使用した後、一瞬で決着がついた。初めてのゴブリンを討伐することができた。戦闘が終わったので集中状態が切れ、助けた女の子に話しかけた。
「大丈夫かい?どこか怪我はある?」
すると女の子は、震えるような声で、
「だ、大丈夫……です……助けていただき……ありがとう……ございます」
ゴブリン2体に襲われたらそりゃぁ怖い。助けが少しでも遅れていたら、ゴブリンに殺されていたかもしれない。そう考えると少し背筋が凍る。
「怪我がなくて何より!でもどうして、こんな森の奥深くまで1人できたの?」
「……ヒール草が欲しくて取りに来たんです。来たんですけど……どこにも生えてなくて、奥深くまで来たら迷っちゃって、それで急にゴブリンが現れて驚いて……」
「君もヒール草を探してたんだね、俺も探してる最中なんだ!だけど生えてないよね……なんでだろう?」
そんなことを話しながら、ゴブリン2体からドロップした魔石を手に入れた。
すると、どこからか
「ドガァァァアァァ!!!」
と何かの咆哮のようなものが聞こえた。
俺はすぐに女の子を庇いながら、周囲を警戒した……が特に周囲に違和感はなく、魔物が襲ってくるということもなさそうだった。だがどこか不気味な雰囲気が流れているように感じた。森の奥から、危険なものがあるような気がして、俺は女の子に言った。
「君、ここは危ないかもだからすぐに家に帰りな!ここをまっすぐ、ずっとまっすぐ進むと大きな街のイリュシアってところに着くから、門番さんにでも助けてもらって!」
そう言って、俺はすぐに森の奥に向かった。2分ぐらい走っただろう、そしたら人工物のような木の柵が建てられていた。俺は状況を確認するために、少し離れた木の上に登って見回してみた。
「おいおい、まじかよ……!?冗談だよな」
そこにはゴブリンがざっとみて数十体、その奥にゴブリンよりも少し大きいのがいて、さらに奥に、豪華な椅子に座っていて、王冠を被ったやつもいた。これはゴブリンの集落だ。
「アンジュ、あそこにいるのはゴブリン以外にもいるよな?」
「はい、ゴブリン10体ほど、ゴブリンエリートが2体、ゴブリンキングが1体いますね……ゴブリンエリートは1体で通常のゴブリン10体分の強さがあり、ゴブリンキングはそのゴブリンエリート10体分の強さがあります。ここは絶対に引き返した方がよろしいかと」
アンジュの言う通り、今の俺では確実に……死ぬ。
だがここで俺が逃げたらこいつらが街へ攻め込んでくるかも、俺は覚悟を決めた。
「アンジュ、すまん。俺は引き返せない!ここであいつらと戦う。」
「そう言うと思っていました、私は朝陽様にどこまでもついていきます。」
アンジュはそう言うと、なにやら詠唱を始めた。
「光よ、かの者の身に宿り、力となれ!身体強化」
「安らぎの光よ、かの者を癒やし続けよ!継続回復」
アンジュが魔法を使うと俺の体が光った。いつもよりも体が軽い、今ならいつもの数十倍もの力が出せそうだ!そして、さきほどのゴブリンとの戦闘で負ったかすり傷等がどんどん回復していっている。
「アンジュありがとう!これめっちゃ強くない?」
「はい、私の持てる全ての力を使って、身体強化と継続回復を使いました。持って10分です、それまでに決着をつけなければ死にます。」
「それじゃあ急がないとな!」
すぐさま俺は木からジャンプした。いつもよりも体が軽すぎて、ゴブリンの集落のど真ん中に着地した。
「さぁて!いっちょやるか!今なら誰にも負けない気がする!」
そう言って、周りにいたゴブリン数体をサクサクッと倒し、ゴブリンエリートに向かった。
ゴブリンエリートにまずは勢いのついたまま飛び蹴りを当て、そのまま叩き切るようにして、
「斬撃Ⅰ!!!!!!!!!」
エリートを2撃、アンジュの強化魔法がめちゃくちゃ強いのに驚きながら、残りのゴブリン、ゴブリンエリートとの戦闘もあまり手こずらず済ませた。
「ここまでで3分……残り7分か……」
残りはゴブリンキングのみ……だがこいつがバケモノだ。纏っているオーラが違う。
「ドガァァァァァァァアアア!!!!!!」
ゴブリンキングの咆哮だ、近くで聞くとより怖い……逃げ出したい、そう考えてしまうほど実力差がある。
だが、ここで逃げたら、あの女の子のところまで行ってしまうかもしれない、街へ影響が出てしまうかもしれない。
「怯んでられるかよ!くらいやがれ!炎よ、敵を焼き尽くせ!火球!!!」
そう言って出た、火球はいつもの数十倍の大きさだった。だがしかし、ゴブリンキングは持っている大剣で簡単に払ってしまった。
「おいおいおいおい!まじかよ!!!こんな奴に勝てるわけないやん……」
俺は愚痴を漏らしながらも、素早さを生かして、少しずつ攻撃を与えていく。なんとか、ゴブリンキングの攻撃をすれすれで躱してはいるが、いつくらうかわからない。そして、こちらの攻撃が効いている気がまったくしない。
「くっそぉぉぉ!!!まだまだぁこれからだぁ!!!」
俺は叫びながらゴブリンキングに立ち向かう。だが相手も俺のスピードに慣れてきたのか、攻撃が大剣で防がれるようになってきた。
「あと1分…ここまでかよ…」
俺は内心諦めかけていた。すると、
「朝陽様!諦めてはダメですよ!条件が揃いました。これで[気]が使えます!!!」
「気?なんかそんなやつもあったな、というかどうやって使うんだよぉぉぉ!」
「強く……強く願ってください!!!勝ちたい!生きたいと!!!」
言われるがままに俺は強く叫んだ。
「俺はゴブリンキングに勝ちたぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁい!!!!
生き残りたい!!!!!!!!!!!!!!!!!」
すると、体からオーラのようなものが溢れてきた。
すると、踏み込みがさらに強くなり、速度が3倍に増した。
「朝陽様は今、[気]の数値が3です。なので、その状態では、基礎のステータスと強化魔法でのステータス強化を全部合わせた後に3倍になります![気]の継続時間は、今の朝陽様なら30秒です!ちょうど身体強化と継続回復が切れるのと同じ時間です!」
「OK、分かった!あと30秒ぐらいでけりをつける」
そう言い残し、俺はゴブリンキングに猛攻を仕掛けた。だがなかなかゴブリンキングの防御を破れない。
しかし、20秒したあたりで変化が現れた。
「ドラァァァ!ドラドラドラドラァ!!!」
10,9,8……ゴブリンキングが初めて怯んだ。
「オラァァァ!!!!」
7,6,5……ゴブリンキングの足を斬り、転ばせることに成功した。
「炎よ、敵を焼き尽くせ!火球!!!!!!」
4,3,2……炎がゴブリンキングを包む。
「斬撃Ⅱ!!!!!!!!」
1,0…………
最後の一撃は今までの斬撃Ⅰよりも強い攻撃が出た。
「やったのか……?」
俺はゴブリンキングをなんとか倒すことに成功した。
だが喜びもここまで、全身に激痛が走る。多分、無理な強化魔法や気の発動などの反動が出たのだろう。
「ここまでかぁ」
俺はそう言うと森の最奥のゴブリンの集落のど真ん中でぶっ倒れてしまう。
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目が覚めると、目の前にはどこかの部屋の天井が広がっていた。
「目が覚めましたね!アサヒさん、森の中で倒れていたらしいですよ?その森に行った冒険者の方が見つけて、ここまで運んでくれました。魔物とかに襲われる前で本当に良かったです!」
冒険者ギルドの受け付けの方が声をかけてくれた。そして倒れる前の状況を思い出した。
「あ、そうだ俺ゴブリンキング倒したんだ」
「えぇ!?ゴブリンキング!?あのEランクの魔物を1人で!?」
受け付けの方はすごく驚いていた。だが俺も驚きの事実を知った。
「Eランク?逆にあんなに強い魔物でEランク???魔物の強さのランクのイメージがまだ分からないけど、Eランクが低いってのは分かる!」
「いえ、Eランクでも小さな町が滅びるぐらい強いんですよ!?」
その後、ランクについて教えてくれた。まとめると、
魔物の強さごとにランクが分かれている。そして上から、Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランク、Fランク、Gランク、Hランク、Iランク、Jランクとあるらしい。だけど、あくまで参考らしい。突然変異個体や種族の進化によって同じランクでも強さが異なることもあるらしい。
それに、Sランクにも上があるらしいが、それは滅多にいないらしい。
ちなみにゴブリンはIランクの魔物で、ゴブリンエリートがGランク、ゴブリンキングがEランクだ。
「ゴブリンキングでEランク……もっと上があるのか」
俺はそう呟きながら、アンジュがいなければゴブリンエリートすら危うかった事実を知り、お礼を言わないとと思った。
だが、そんなことよりも驚いたのは受け付けの人が次に言った言葉だった。
「アサヒさんを助けた冒険者の情報だと、ゴブリンキングがいるであろう集落などはなく、森を少し進んだ先の木にもたれかかるようにして倒れていたんですよ?」
これはおかしい、俺は確かにゴブリンキングを倒した後、そのまま集落のど真ん中でぶっ倒れたはずだ……
「まぁでも、倒れていた場所なんて関係ありません!アサヒさんが生きていて良かったです!」
「ありがとうございます……でも依頼のヒール草見つけることができませんでした……森に全然生えてなくて」
「おかしいですね?ヒール草は森に入った少ししたところに群生地があるんですが……」
なにやら森に異変が起きているらしい…
「すぐに緊急依頼として、調査依頼を出しますね」
そう言い残して受け付けの人は部屋から出ていった。
「アンジュ……やっぱりおかしいよな?俺ゴブリンキング倒したよな?それで、ゴブリン達の集落で倒れたよな?」
「はい!朝陽様はしっかりとゴブリンキングを倒し、倒れました!」
う〜む、おかしい……そうだ!あの女の子はどうなったんだろうか。しっかりと街にたどり着いたのだろうか…今度門番に聞いてみよう。
「朝陽様、また夢の中で会いましょう」
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俺は朝、現実で目が覚めた。




