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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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オカ研より愛をこめて。・第四幕・浮かび上がる真相

そこは真っ暗で、目が慣れてきて何か見えてくる事もなく、耳を澄ませても何も聞こえず、静寂の空気が重く上から圧し掛かってくる感覚と、只々、無の世界というものが広がっている感じの場所だった。

「此処は何処かしら?」

綾乃の声がした。

「真っ暗な、だだっ広い場所は確かね」

その間近で翠の声がした。

「沙織!起きなさい!」

「うぅ~ん、真っ暗で寝ても覚めても同じだよぉ~」

由香の大きな声で沙織が目覚めた。

「私達どうしてこんな所にいるのかしら?」

綾乃の声が真横に居るのを感じる。

「ゲームの様な時空の世界で気を失っちゃって・・それからどうしたろ?」

翠の声も横に居る。

「まだタイムパラドックスで迷っているのかしら?」

由香の声も真横に居る。

「もしかしてゲームオーバーで本当に死んじゃった!」

沙織の声は皆を囲んで真ん中に居る。

「ようやく気が付いたのねあなた達!」

西園寺のどなり声が響いて、薄ぼんやりとその四人にとっては会いたくはない姿を現した。

「まだゲームの中の西園寺かもしれないから気を付けて!」

翠の声が皆に言った。

「疑り深いわねぇ!私は本物よ!」

西園寺が顔を顰めて言った。

「いま先っきあなたが言ったように、あなた達は既に死んでいるのよ!」

西園寺がすらすらと、一回聞いただけでは理解し難い事を言い出した。

「冗談のつもりで言ったんですけど・・」

沙織の声が軽々しく言った事を思い出した。

「それってどういう意味なのよ!」

西園寺と犬猿の翠の声が吠えた。

「言っての通りの意味よ。あなた達は疾うの昔にこの世にはいないの」

西園寺は真顔で、普通では訳の分からない事を言い出している。

「やっぱり!ラスボス西園寺よ」

由香の声が気だるく言った。

「ゲームじゃ無いって言っているでしょ!」

西園寺の話の途中途中で文句が入り、なかなか話が進まない。

「この人が言う様に、本当にあなた達はこの世にはもう居ないのよ」

西園寺の横に妙子がこれまた薄ぼんやりと現れた。

「妙子までそんな事を言うの・・」

沙織の声が悲しく聞こえてくる。

「待って!これはちょっと私達全員、同じ夢を見ているのよ」

翠の声が、誰しもが一度は思うであろう推測を述べた。

「だからそれってどういう意味なのよ!分かるように説明してちょうだい!」

綾乃の声がいつもとは違い、張り上がっている。

「気を付けて敵の誘導かもしれないわ」

由香の声が綾乃の声と被さった。

「いぃ、ちゃんと心で感じて理解して分かってちょうだい。あなた達四人はこの学校を彷徨える魂なの。私達はあなた達が悪霊になって悪さをしない様に治める為、集められた霊能力者なの。そして私がそのリーダー。だから、いつもあなた達の嫌われ役だった訳なのよね。それを証拠に嘘だと思うなら、今のあなた達に体が無い事を確かめる事よ」

西園寺は事細かく四人に説明したが、余計に分かり難く伝わっている。

「体が無いって言われても・・?真っ暗でなにも分からないんですぅ~」

沙織の声が虚しく聞こえる。

「私達が幽霊ってわけっ!あんたと会うたび口喧嘩もしてたでしょ!それじゃ!あんたは見えない相手に意地張ってむきになっていたの!?それであとついでに言えば!第一話目からあんたはなんでずっとゲスト出演で出ているのよ!」

翠の声はいつもの調子で食って掛かった。

「それは少しあなた達のわがままに付き合っていただけよ・・、それに私って皆勤賞でっしょ」

西園寺は高を括り軽くすかした。

「それにいい。あなた達は仲の良い四人だけど友達同士じゃないのよ」

横に居る妙子が、また意味不明な事を言い出した。

「仲良しだけど友達じゃ・・、ない・・?」

翠の頭の中は混乱して他の皆もチンプンカンプンだ。

「妙子・・。どうゆう意味なの・・」

沙織の声がか細く問い掛けた。

「四人は、・・・本当は、・・・人じゃなく、・・・になりたかった・・・」

妙子は何かを言ったようだが、途切れ途切れで聞き取れず、口の動きからも読み取る事など出来なかった。

「えっ!なにっ!きこえないっ!」

沙織の声がひと一倍大きくなった。真っ暗で分からないがそのぶん、耳も大きく広げているのだろう。

「それに私が毎回諄い様に経費の無駄遣いと言っていたのは、裏返せば時間の無駄遣いという事なのよ。“時は金なり”って言うじゃない。あなた達がこの世に長く滞在する限り、あの世に成仏できる可能性が低くなっちゃうのよ!」

西園寺が今までのやり取りを思い出しながら言ってきた。

「ホント!二人の言っている事がまったく!理解できないわ!これってもしかして私達を驚かすドッキリじゃないの?」

綾乃の声が軽快に言った。いつもはおっとりとしているが、今日の綾乃はちょっと違う。

「そうよ!あなた達の戯言には付き合ってられないの!私達はただ単にこのタイムパラドックスを抜けだして文化祭当日に行きたいだけなのよっ!」

翠の声が大声で訴えかけてきた。

「だから!何度も言っている様にあなた達には文化祭は無いのよ!因みにこの学校には同好会も無いの!あなた達がアジトと呼んでいる部屋は、あなた達のお墓なのよ!」

西園寺が喚いた。

「何回も何回も言ったって、そんなに聞いてないわよ・・」

由香の気だるい声がボソボソと言った。

「考えてもみなさい。あなた達・・、家に帰った覚えはある?親と喋った事は覚えている?自分の部屋で寛いだ事は?昨日の家での夕飯は何だった?」

西園寺が次々と質問を投げ掛けてきた。

「何かスラスラと驚愕の事実を突き付けられているわ・・。それで何で私達に文化祭は無いのよ!」

由香の気だるい声を張り上げた。

「その文化祭前日にいつもの様に卑しく摘まみ食いして、それが運悪く食中りして四人とも仲良く亡くなちゃったのよ!」

西園寺が吐き捨てるように言った。

「えーっ!その時なに食べたっけ?賞味期限が切れてた?それとも腐ってた?」

沙織の声が慌てふためいた。

「そんなこと忘れたわよ!昨日なに食べたかも覚えていないわ!」

翠の声が追い打ちをかけて言ってきた。

「もう!うるさいわね!なに食べたかなんて私が知る訳ないでしょ!食べる事に関しては貪欲なあなた達だから中毒起こすくらいよっぽど!いじましかったのでしょうね!何にせよ四人共もうこの世にはいないのよ!」

西園寺が喧しく言う二人の声に止めを刺した。

「それじゃ・・。私の気だるい声はもうこの世にいないからこんな声になっているの・・」

由香が泣きそうな声で気だるく訴えかけてきた。

「あなたの声は元々の地声よ!」

西園寺が呆れた声で言ってきた。

「そんな事!絶対に信じませんからねぇ~だ」

綾乃の声が茶化す感じで言ってきた。

「お主らを驚かせている訳では無い。真の話じゃ」

次にお狐様が薄らぼんやり現れた。

「どういう事なのお狐様。西園寺なんかより私達に分かるように説明して・・」

翠の声が響いた。

「童の真の姿はこの土地を守る氏神じゃ。お主達を見ておると、四人ともこの学校を愛し、緑の山に囲まれた自然に親しみ、独自の行動力で型にはまらず自由に楽しんでおる。その中で童が一番感心したのは素直すぎる心と全てのものに愛情を注いでいた事じゃ」

お狐様が丹精込めてお話しした。

「やっぱり・・、ぜっんぜっん!ちっとも、理解出来ないんですけど・・?!」

翠の声が力無く響いた。他の皆もポカーンとしている。

「・・けど、記憶の中に今まで色々やってきた事が思い出として残っているわ」

また由香の気だるい声が響いた。

「それは君達の豊かな想像力がそう思い込まさせたんだよ」

そう言って小佐井先輩が薄ぼんやりと現れた。

「先輩~ぃぃ」

由香の目がハートマークになっている様だ。すると突然・・、小佐井先輩は甲高い鳴き声を上げた。

「ニャァぁ~」

「輔清・・?」

今度は由香の目が点になった様だ。由香の愛しの小佐井先輩は、いつも道端で可愛がっている野良猫の輔清の姿に変わっていった。

「それじゃ。これまでの私達の活動や、他の部活動の皆や、クラスメイト達も。私達の頭の中の空想の人物達という事!」

綾乃の疑いの声が高く響いた。

「そうよ!すべてあなた達の妄想の産物よ。学校とはこういう所だ、クラスとはこういう場所だ、部活動とはこうあるべきだ。・・といった概念が、頭の中でイメージとして創り上げられて、それが形になって見えていただけなのよ」

西園寺は幾度もの同じ説明をした事を面倒くさそうに言った。

「じゃ、あんたと仲の悪かった風紀委員会の時代劇かぶれの藪下はなんなのよ!」

翠の声が懲りずに食って掛かってきた。

「あのメンバーは新参者のお金に欲の絡んだ過激な霊能力者グループよ!あまりの粗っぽさから私の権力ちからで蹴散らせてやったわ!」

西園寺は勝ち誇った顔で言った。

「あんたこそ!お金に貪欲でしょうが!」

翠の声がすかさず突っ込んだ。

「じゃ、なんで今になって私達にそんな種明かしをするの?バラさなければ今までどおり楽しい学校生活が送れるじゃない?」

沙織の声は不服の様だ。

「今が潮時だからじゃよ」

もう一人の声が聞こえた。西園寺の隣に現れたのは、催し物会場のテントにいた魔女の様な老女だった。

「これ以上この場所に留まりこの生活に慣れてしまえば、この場から離れずらくなってしまう。そうなれば成仏できるものも出来なくなってしまうからじゃ!」

魔女の様な老女の口から出た言葉は四人には手厳しく聞こえた。そして老女は顔の皮を剝がすかの様に伸びきった皮膚を捲り、魔女が着る黒い洋服をも破り捨てた。顔のマスクを取ってそこに現れたのは、巫女姿の幽霊部員の黒木先輩だった。

「幽霊部員の私から言うのもなんだけど・・、あなた達は本当の幽霊なの。それに私・・。ほんとは神社の巫女さんなの」

幽霊部員の黒木先輩はそう言って何やら呪文の書いたお札を取り出した。

「私もいるわよ!」

そう言って、後ろから出て来たのは神主姿の光明寺先生だった。

「私達はあなた達の成仏と供養のため、神社でお唱えやら何やらで、なかなか学校へ出て来れなかったのよぉ」

引き籠りの光明寺先生はそう言うとお祓い棒を取り出した。

「そう言えば、だいぶ前に一緒に鏡餅を食べた時があるでしょ。あれってあなた達の祠にお供えしていたものよ。だってあなた達は・・本当は・・、」

黒木先輩が話す思い出話が、また途切れて聞き取れなくなった。

「それじゃぁ本当に私達・・幽霊なの?」

沙織の声が力無く響いている。

「本当に私達・・死んでいるの?」

翠の声も微かに聞こえるだけだ。

「小佐井先輩が輔清だったなんて・・」

由香の声が愕然と聞こえた。

「みんな騙されちゃいけないわ!はっきりと目を覚ますのよ!」

綾乃の声だけは気高く響いた。

「綾乃。お主はもう悪霊になりかけておるのぉ。心の中の嫉妬。憎悪。妬み。などが芽生え、悪の化身と化すのじゃ。せっかく・・“琴原”という名の守護神を執事として仕えておったのに!」

お狐様が綾乃に向かい気合のパワーを投げた。

「あぁぁー・・」

綾乃の声は心地良さそうで気持ち良さそうな悲鳴を上げ掻き消されていった。

「あーっ!綾乃が消えちゃった!!見えないけど・・」

三人の声が一斉にコダマした。

「童からお主らにも花を背けてしんぜよう。四人とも、今までの自分達の人生を振り返り嘆こうぞ。そして、もう一度生まれ変わろうと努力するのじゃ」

お狐様が残りの三人に向けて眩しいくらいのパワーを照らし浴びせた。

「あぁぁー・・」

今まで真っ暗だった無の世界が真っ白に明るくなり、眩き光のなか一瞬微かに見えた表情は安らかで穏やかに映った。

「四人とも成仏して消えて行きましたね。ありがとうございました氏神様」

西園寺と妙子はお狐様に礼を言った。お狐様という名の氏神は微笑ましい顔で山へと帰って行った。その後を追う様に、神主の光明寺先生と巫女の黒木先輩も何処かへ消えて行った。

「ホント。こんなに手間の焼ける子達は初めてだったわぁ」

西園寺は、ほっとした顔になった。

「それじゃ、私達も行きましょうか」

輔清を抱いた妙子が言ってきた。

「漢字が違うんじゃない?“行く”じゃなくて、“逝く”でしょ。私達の役目も、もう終わりよね」

そうして・・、二人と一匹もゆっくりと遠い彼方に消えていった。

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