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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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オカ研より愛をこめて。・第三幕・セカンドステージ突入

四人は山の麓の小高い丘に立っていた。そこから見下ろす景色は眩しい程のオレンジ色の秋の夕日をバックに、背の高い一本杉とそのすぐ横の右手には同じ高さはあると思われる五重塔が並んで建っている。しかし、その背景は夕日が逆行になっているため影となっており細かい縁取りまでは認識出来ない。

「本当になんて奇麗な夕日なの」

沙織はその絶景な光景に感動していた。

「今までの苦労が吹き飛ぶわ」

翠も安堵な表情を浮かべている。

「あの五重塔と大きな樹が目印なのね」

由香も少しの安らぎを覚えている。

「ようやく此処まで来たのね。もう一息よ」

綾乃はもうひと頑張りの気合を入れ直した。


そこは消毒用のアルコールや、きついアンモニア臭が漂う薄暗い部屋だった。だだっ広いテーブルには三角フラスコやビーカーなど実験用器具が置かれアルコールランプの炎が微かに灯り、人体標本を不気味に照らしていた。

「どうやら此処は理科研究部の部室らしいわね」

翠が周りを見渡した。

「また振出しに戻っちゃったみたいだけど、私達の部屋に戻らず何故?此処に帰ったのかしら?」

綾乃が魔法使いの杖を振り回した。

「どうせエラーになったんじゃない。それより沙織がまだいないわよ」

由香は、まだ小佐井先輩との写真の事がショックで治まっていないようだ。

「ねぇ!これを見て!すっごっいもの見つけた!」

翠が誇張した声を張り上げ皆を呼んだ。

「何これっ!すんっごぉぉいぃ!」

綾乃も由香も誇張して叫んだ。

「これこそ名前の通り“お金の生る木”よ!理研やるじゃない。兼ねてから夢だった錬金術が成功したのね!」

そう言った翠の前には無数の枝から金、銀、銅のコイン状の実が生った樹が、小さな植木鉢に盆栽の様に活けられていた。


“お金の生る木を手に入れた”

皆が着けているゴーグルに表示が流れた。


「このアイテムは何の役に立つんでしょ?」

そう綾乃が言うと、“お金の生る木”は紫色の煙になり持っていた魔法使いの杖に吸い込まれていった。

「ちょっと~、ゴソゴソとその辺から物音が聞こえない?」

首を項垂れ落ち込んでいる由香を宥めながら、翠が異様な周りの様子に気が付いた。すると・・部屋の至る所から青白い顔の学生達が立ち上がってきた。

「こわっ!なにっこの子達!今まで皆倒れ込んでいたの!」

綾乃が魔法使いの杖を構えた。

「理研部員のようね。錬金術が成功した代償で、たぶん皆ゾンビになっちゃたのよ!」

翠が適当に言った。

「なんで成功してゾンビになっちゃうのよ!」

由香は落ち込んで項垂れたまま気だるく言った。

「ゲームならではのお決まりのパターンね!でも、こんなカッコいい戦闘服を着ているのに・・攻撃する武器は全く持って無いのよ!」

翠が手ぶらな自分にいまっ!気が付いた。

「今先っきの“お金の生る木”のアイテムは効くかしら?」

綾乃が今までの口調に一瞬戻った。

「たぶん・・・?効かないわ・・。それより一番効く方法があるわ。全速力で此処から逃げるのよ!」

翠に抱えられた由香が気だるくぼそぼそと言った。ゾンビになった理研部員がゆっくり、そして、ふらふらぼちぼちと集まって来るなか、三人は思いっきり強く蹴散らして走り出した。

「理研の皆さん、ごめんなさいぃ~」

翠が振り返りながらバタバタと倒れ込んでいく理研ゾンビ達を見ながら、三人の足跡が付くぐらい踏み越えて理研部室から飛び出していった。息が切れるまで走り、ようやく女子トイレ前でぜいぜいと息の上がった呼吸を整えながら、密着した戦闘服に蒸せていた。

「ねぇ、なに・・ところで私に嚙みついているの?」

翠の腕にしがむ様に甘噛みしている由香がいた。

「えへぇ~感染しちゃったぁ~」

由香が青白い顔を上げにこやかに微笑んだ。

「えぇー!」

翠のレベルゲージが急速に減っていっている。由香は既に0%で点滅している。

「なんで私までぇー!」

綾乃のレベルゲージまであっという間に0%になり、三人とも体が透けていった。


気が付けば沙織を含んだ四人が散らかったアジト・・、部室の中にいた。今回はエラーはせずにセーブ機能が働いたようだ。

「なかなか前に進まないわね」

沙織はモンスターフラワーの餌になっていたが、へっちゃらである。

「文化祭まで辿り着かないと、何が原因なのかも分からないわ」

今回の翠は常に被害者である。

「もうちょっと別のアイテムを集めないといけないのかしら」

由香も失恋してもゾンビになっても回復が早い。

「攻略本が必要だわ」

綾乃の意気込みは止まらない。

そこへ扉を開く大きな音がして西園寺が入って来た。


“ラスボス西園寺が現れた”

皆のゴーグルにはその様に表示された。


「いよいよラストステージね!」

沙織が気合を入れ直した。西園寺がゆっくり迫るなか四人はそれぞれの戦闘ポーズで構えた。

「あなた達は何時まで経っても分からないようね!このままずぅ~っと待っていても文化祭はやって来ないわよ。あなた達にとって文化祭は夢のまた夢よ!」

西園寺はそう言いいながら迫って来た。その威圧感は一歩一歩四人に近づく度にレベルゲージは四人に影響を与え、見る見るうちに急速に体力を減らしていった。

「流石にラスボス西園寺ね。ダメージが凄いわ」

翠の体が点滅してきた。

「このままじゃ回復も出来ないかもしれないわ」

由香の体も激しく点滅している。

「“お金の生る木”は使えるかしら」

綾乃が魔法使いの杖を振った。

「何それっ!他に何かいい攻撃は無いのかしら」

沙織の存在が消えかかっている。

「誰か私達を守って!」

綾乃は最後の力を振るって、もう一度杖を振り上げた。すると・・、

「お主ら、童の存在を忘れてはおらぬか・・」


“救世主お狐様が登場した”


「助けてぇぇ~、お狐様ぁ~」

四人は透けていく体のなか、お狐様に縋った。

「よしよし・・皆の者。永遠に休みなされい・・」

お狐様は集まる四人に大きく手を広げ抱き寄せた。

「えっっ!」

四人の体はあっという間に透明感が溢れ出し、うっすらと消えていった。

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