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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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時空を超えた遺言状・第三幕・消えていくクラスメイト

長い時間を費やし過酷な練習を積みようやく芝居の形が見えてこようとした最中、奇妙な噂話が学校内に立ち込めた。

「ねぇねぇ、知っている。いい役に付いてたあの子・・、学校に来ていないみたいよ・・」

「それで代わりに別の子が主役張っているんでしょ・・」

「あれだけドヤサレテいたら寝込んでしまうわ・・」

「体調が悪くなって休んでいるとは聞いたけど・・」

「それが何だか違うみたいなのよ・・。家にも居なくて行方不明らしいわよ・・」

「お芝居が下手だったりすると百発百中に消えるみたいよ・・」

「あの先生が気に食わない子を消しているじゃない・・」

「まっさか~・・。何処いちゃたんでしょ・・?」

女生徒達の根も葉もない立ち話は瞬く間に学校中に広まっていった。四人もそんな噂話を耳にはしていたが、セリフも無いエキストラの自分達には縁もゆかりも無い事と気にはしていなかった。しかし、妙子からこんな話を聞いてオカルト心に火が付いた。


「この前・・、私のグループの稽古の日があったでしょ。あなた達が稽古をすっぽかしたあの日よ・・。私のお芝居は何とかクリアしたんだけど、やっぱり私の読みの通り一緒に出てた同じの場面の売り子役の女子が極度の人見知りであがちゃって、あたま真っ白でセリフが出てこなくなっちゃったのよ。それでご想像通りあの大先生から大きな雷が落ちたのよ。あの日の稽古はボロボロだったわ。そして次の日から噂どおりその女子は行方知れずよ・・」


それを聞いた四人は日ごろのお芝居の練習に磨きを掛けていった。体育館で体操着の格好をして四人揃って振舞っていた。

「台本をもう一度一通り読み返してみて何処かで聞いた事ある話だなぁ。・・と、頭に引っ掛かっていて気が付いたのよ」

綾乃が片足を上げバレエの様に踊り立ち止まった。そして続けて話し出した。

「歴史の本に書いてあったんだけど、中世の時代のある小さな国で王室を巻き込む戦争が起こったの。けど隣国通しのぺイソン家の王子とレーモン家の王女の結婚を機に一旦戦争は沈静化したの。しかし、そのあと王女は亡くなり王子は行方不明。その息子の皇太子がその後、争いを沈めたんだけど・・」

「説明が長いわねっ!このお芝居はその歴史ある出来事をモチーフにアレンジしたものね。・・で、結局何なの・・?」

翠はヨガのポーズを決め込んでいる。

「その歴史物語は研究者も頭を悩ます余り知られていない謎の多い出来事なの。なぜそれを時代の当事者の様に、こんなに細かい描写の演技指導が出来るのか?それにぺイソンって、珍しい苗字じゃない。気になって大先生と同じ苗字の王族のぺイソン一族を調べてみると、行方不明になったその王子の肖像画を見つけたの。すると!あの大先生と瓜二つなのよ!そして息子の子孫を辿って近年の写真の記録を見るとまたそこに王子・・?えっ・・、違う・・?あの先生・・?・・が何枚も写っているのよ!」

綾乃は言葉の区切り、区切りに表情を変え、手を広げ爪先立ちでバレエを踊り始めた。

「♪それでもって結論は~?」

沙織は足を組み名作映画のシーンのごとくギターを奏でて歌いだした。

「だからぁ~。私が思うにあのお偉い大先生はぁ~。タイムトラベラーに違いないと思うわっ!」

綾乃は一生懸命ゆっくりと歪んだ表情になりながら両足を広げ床に着いた。

「あっ!言い切りましたねぇ~」

由香は新体操のバトンを持ち出し踊っている。

「♪決めつけちゃって~なんか発想が大胆ね~」

沙織は名作映画のヒロイン張りだ。

「それにちょっと露骨すぎない。世界的超有名人の大先生よ。時間を駆け抜けている旅人には思えないわ」

翠は座禅を組み深呼吸した。

「私もそこがちょっと気掛かりなのよね。あり得ないかも知れないけど、もしかしたらあの大先生・・。本物の中世時代の王子かも知れないわ」

綾乃は深く息を吐きながら体勢を床一杯に前へ伸ばした。

「それじゃ・・、そんな大昔から今も永遠に生き続けているの!」

由香は旨い具合にバトンを回し操っている。

「あの大先生が、もし本当に中世の王子だとしたら化け物か、不老不死の薬を飲んでいるかに違いないわ!」

沙織はそう言った後ギターの演奏を急にジャジャジャン♪で区切りをつけた。

「こう考えてみて。この時代に同一人物が二人いて一人はタイムトラベラー、もう一人はドッペルゲンガーよ。よく噂話でもう一人の自分に出会うと死んじゃうって言うでしょ。そのもう一人の自分と言うのが四次元世界に迷った別の世界の自分だとしたら・・。だから四次元世界に入ったらもう一人の自分に会っちゃいけないという、暗黙のルールを知っていて遭遇しない様に気を遣っている訳よ。あくまでも“四次元世界の不思議大百科”を参照したままだけどね・・」

本好きならではの綾乃の独自の独特な見解である。

「私たちの住んでる世界は何次元?」

沙織の頭が混乱してきた。

「四次元の世界っていうのは、異世界とはまた別で何処に通じているか分からない場所なの。私の予測だけど、その世界は夢を見ている様な感覚で実感がないのよね。世界中でも有名な四次元への入り口というのはあるけど、出口って聞いた事ないでしょ。だから普通迷い込んだらもう二度と戻ることは出来ないわ」

綾乃はゆっくり脚を縮めていきバランスを取りながら立ち上がった。

「それがタイムトラベラーである大先生には出たり、入ったり出来るのね」

由香のバトン捌きは曲芸並みに仕上がって来た。

「それで行方不明の皆は四次元の世界へ消えちゃった・・!?」

沙織は名作映画もギターも飽きたようだ。

「これは探ってみる価値はありそうよ!」

翠は両手を組みヨガの特殊な呼吸法をしながら言った。

「珍しくお芝居の練習かと思いきや、また無駄口ばかり叩いてるのね!残念でした・・。その花屋の娘の役は私が貰うわ!」

体育館に入って来た西園寺が立ちはだかった。

「そんなこと聞いてないわよ!誰に言ってんのよ。あなたにはぴったりの意地悪なお手伝いさんの役があったんじゃないの」

由香がバトンを持ち上げ気だるく言った。

「そんな脇役は私に合わないわ。他の子と交代してやったのよ。やっぱり私の存在はメインの役でないと引き立たないじゃな~い。それじゃ今から稽古だから。まったねぇ~」

西園寺は嫌味っぽく、しかも嬉しそうに手を振り立ち去った。

「不貞腐れるわね!生徒会長の立場を利用して職権乱用だわ!」

翠は西園寺に向かっていつも牙を剥いている。


皆が帰ったその日の夜・・。誰も居ない真っ暗なオカルト研究会アジト・・、部室に忍び込む一つの影があった。ロゼット・ぺイソンである。ゆっくりとドアを開け周りを伺い始めた。すると突然、映写機が動き出し壁にスクリーンを照らし出した。

「お主は何者じゃ。童とは少し類が違う様に見えるが・・」

新入部員のお狐様が現れた。お狐様と言っても名付け親は翠の方で、古いデザインのセーラー服を着たおかっぱ頭の女の子である。新入部員でありながら言わば実は大先輩である。

「私と同じ気配を感じると思えば、そういう事かぁ~」

いきなりぺイソンの声が女性の声色に変わった。

「帥の様な者と同等にされたくはないわ!」

お狐様は部室に住み込みなので警備は万全である。

「気の食わない相手が傍にいると何だか気が散るのよねぇ~」

女性の声になったぺイソンは今度は挑発的な口調を取ってきた。

「お主はこの世に未練が残り彷徨っているのよのぉ」

お狐様は主に夜行性で夜は得意である。

「頭に来るわねぇ!やっぱり気に入らないわ!彼と私との間を邪魔するものは許せない!このお芝居が完成するまで少し消えていなさい!」

「彼!?」

ぺイソンの女性の声は威嚇する口調に変わりお狐様を睨みつけた。すると映写機は火花を上げ、お狐様は灯と一緒に悲鳴を上げ消えていった。再び真っ暗な部屋に戻りぺイソンはゆっくりと部室を後にした。

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