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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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また一年が始まる・・ 第四章・本当の自分はどこにいる?

どれくらいの時間が経過したのだろうか。正直、案外短かったのかもしれないが、その極度の緊張に達した体では、かなり長かった様にも感じる。両耳を力一杯塞いでいる綾乃の目に周囲の変化があった。天井を見上げていたクラスメイト達が顔をゆっくりと下げ、各々行動をし始めた。黒板に落書きを書き出す者。窓から外の風景を眺める者。またボードゲームの続きをやり始める者と、みな他の者の行動に関心を持たず好き勝手に自分のしたい事だけをしている。綾乃はゆっくりと力強く塞いでいた耳を開放して耳栓も外した。

「先輩、もう蝉の鳴き声は治まっていますよ」

そう言って綾乃は黒木先輩の方に目を向けた。すると、黒木先輩の耳は市松人形の小さな手で塞ぎ、市松人形の耳は黒木先輩が互いに塞ぎ合っていた。

「あのぉ~おじゃまですかぁ~」

綾乃はその仲の良さに気を遣った。

「あら、もう大丈夫!!」

綾乃と目が合った二人はびっくりした顔になり、互いの耳を塞いでいたため大音量で返事した。

「沙織がふらふらと教室を出て行きます!」

綾乃が沙織に視線を向け二人に言った。自由行動をしているクラスメイトの教室で三人は廊下を出て行く沙織の後を気付かれない様に追って行った。

「これで分かったでしょ。みんな誰かに操られている意志を持たないロボットに入れ替わったのよ」

沙織にばれない様に三人は物陰に隠れながら、黒木先輩が綾乃に小声で言った。

「お主も既にロボットかもしれんぞ!」

次に市松人形が綾乃に甲高く言ってきた。

「シーッ!沙織にばれちゃうでしょ!なんで私がロボットなのよ!」

綾乃は咄嗟に“静かに”のポーズを決めた。

「だけど常日頃から自分が誰だか考えた事ある?」

黒木先輩が疑問を投げ掛けてきた。

「そんなこと全く考えた事ありませーん」

綾乃だけではなく他の者も大概そうであろう。

「他の人達も自分がロボットだなんて一切思って無いでしょうね。もしかしたら私もそうだわ・・。だって自覚症状が無いのよ。そう思わない綾乃ちゃん」

黒木先輩が優しく尚且つ冷静に言ってきた。

「綾乃ちゃん・・」

黒木先輩の“ちゃん”付けに不意を突かれ綾乃は今日一の悪寒を感じた。

「なんだ!なんだ!其方おもいっきり鳥肌が立っておるぞ!」

市松人形が綾乃の体から盛大に立っている鳥肌を見て驚いている。

「あなたは生身の人間らしいわね」

黒木先輩は優しそうにニコッと笑った。

「そう言えば私達、翠たちがおかしくなった原因を突き止めに“迷いの森”とやらに行った様な覚えがあるんですけど・・これも蝉の所為ですかね?」

綾乃が夢の続きを話しているかの様に語り出した。

「確かに私も行った様な覚えがあるわ・・。だけど・・それも幻覚ね。いい今からは自分が目にする背景、風景、景色すべてもろもろは信用しないで!」

黒木先輩が隠れもって、前をふらふら歩く沙織を見ながら静かに呟いた。

「えっ!どうゆう事です!今のこの状況もですかっ!」

綾乃は驚いて訳が分からない。

「私も何処から何処までが現実で幻覚なのかは分からないわ。しかしロボットの皆はその幻覚を共有しているから、同じ物が見えて雪が降っているなかでも花見が出来るのよ」

黒木先輩は冷静に淡々と説明した。

「えぇー、黒木先輩この寒い中でお花見してたんですかぁー!」

綾乃は直感で言い当てた。

「私はこの子に付き合っただけの事よ」

黒木先輩は笑ってごまかした。

「えへへへへー-」

市松人形も笑ってごまかしている。

「ところで沙織さん。このままだと屋上に上がっていくわね」

黒木先輩が腰を屈め、階段を昇りつめながら言った。

「まさか飛び降りようとは思って無いでしょうね!」

綾乃が慌てふためいた。

「その時は全力で止めればいいのじゃ。とにかく行ってみるぞよ」

市松人形が綾乃に振り向き言った。

沙織が屋上のドアを開き入った瞬間!三人は急ぎ足で階段を駆け上がり思いっきりドアを押し開けた。そこには・・、

祭り太鼓が打ち鳴らされ、提灯が列を連れて飾られ、登り台を囲み輪になって浴衣姿で盆踊りをしている大勢の学生達がいた。

「ひゃー!雪が吹雪いているなか、そんな寒そうな格好でよく楽しそうにやっているわね!なんて常識外れなのよ!」

綾乃が鳥肌全開で悲鳴を上げた。

「そう言えばお花見している皆はどうしておるだろう?」

市松人形がいま思い出したかの様に言った。

「普通なら考えられない常識が非常識になったデタラメな世界になっているわ。ところで私達も参加してみない?」

黒木先輩がニンマリ不気味に笑った。

「黒木先輩!あなたもロボットなんですか!こんなに寒ければロボットでも凍ってしまいますよ!」

綾乃は寒くてジタバタ小刻みに動き回っている。

「冗談よ。早く沙織さんをアジトに連れて行きましょう」

黒木先輩は際立って上手に踊っている沙織を指差した。綾乃と市松人形が沙織の手を持ち踊りの輪から引っ張りだした。

「まったくいつの間に浴衣に着替えたのよ!」

綾乃が疑問に思いながらも屋上から連れ出し、融通の利かない沙織の背中を押しながら階段を下りて行った。

「やっぱりお花見の皆は雪だるまになっておるな・・」

アジトがある体育館に向かう最中、窓から見える無数の雪だるまを見て市松人形が言った。

「あれも幻覚であってほしいわ・・」

黒木先輩が不憫な顔をして言った。

ようやくアジト・・、部室に着いた三人はほっとして扉を開けた。そこには奇麗に掃除され着飾った、見た事も無い部屋が広がっていた。

「まるでお姫様の部屋ね」

黒木先輩の滅多に見ない唖然になった顔をした。

「メリークリスマス!」

突然、翠と由香そして西園寺が飛び出してきてクラッカーを鳴らした。

「なんで西園寺が仲良くいるのよ!非常識だわ!」

紙テープを浴びて頭から垂らしている綾乃が思った。

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