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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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また一年が始まる・・ 第三章・入れ替わったクラスメイト達

「綾乃ちゃん、綾乃ちゃん・・」

綾乃は怖い夢を見ているのか、うなされながら目を覚ました。

「綾乃ちゃん!」

目を覚ました綾乃の目の前には市松人形が大きく覗き込んでいた。

「げっ!」

綾乃はまだ夢の続きと思い込みたい。

「歩きながら寝ている場合じゃないわよ!私たち変な処に迷い込んじゃったみたいなのよ」

市松人形が血相を掻いて喚いている。三人は翠たちのおかしくなった原因を突き止めるべく山道を歩いていたのだが、ひょんな事から道を反れ迷い込んでしまった。そこは鬱蒼と大樹が生い茂る深い森で、それぞれの木の幹には無数の藁人形が五寸釘によって打ち尽くされていた。

「ここはなにっ!不気味な場所ね!」

綾乃はその何とも言えぬ光景に叩き起こされたかのようにはっきりと目が覚めた。

「ちょっと油断していたら別の道に反れちゃったみたい」

黒木先輩がおっとりと言った。

「そう言えば私も此処まで歩いて来た記憶が無いんですぅ~」

綾乃はまだ寝ぼけている。

「不思議ね。まるで断片的に夢の中を彷徨っているみたいね」

黒木先輩がまたおっとりと言った。

「こんな処で途方に暮れている場合では無いぞ!道なき道を進んで行こうぞ!」

市松人形が掛け声を上げた。

「えいえい!おぉー!」

みんなそれぞれが空元気を上げた。空元気を振り絞り道なき道を歩いて行くと、少し開けた所に一軒の古びた小屋が見えて来た。

「たのもー!たのもー!」

市松人形がぬけぬけと遠慮もせず大きな音を立て扉を叩いた。

「どうした旅の者・・」

少し時間をおいて重そうな扉がゆっくり開いた。そこから顔を覗かしたのは如何にも魔法使いの様なおばあさんだった。

「どうやら道に迷ってしまって・・。少し休ませて貰えればと思っております」

顔を見るなり市松人形は謙虚な言葉遣いに変わった。

「いま咄嗟に言葉遣いが変わりおったな。まぁ疲れたであろう・・、よかろう、お入りなされい」

市松人形の行動を読み取ったのか、その魔法使いのおばあさんは突然の来訪者を躊躇なく家に向かい入れた。

「あんた!ドンドン扉を叩いたの私達の所為にしようと思ったんでしょ!」

綾乃が市松人形に睨みを利かせた。

魔法使いのおばあさんは椅子を人数分用意して、テーブルの上に紅茶とパンも人数分置いてくれた。

「このばあさん私も数に入れてくれているじゃない」

市松人形がご機嫌になった。

「いただきまぁーす」

三人は一斉に声を上げた。よっぽどお腹が空いていたのであろう。

「それで私たち初詣に行く神社に向かっていたのですが、気が付けばこの場所に来ていて・・。この個性的なこの森は一体何なんですか?」

綾乃が言葉遣いを気にしつつ切り出した。

「此処は誰が言ったか迷いの森と昔から言われていて、俗に言う隠れ里じゃよ」

魔法使いのおばあさんは熱い紅茶のコップを両手でしっかり握りしめ、その温かみを感じながらゆっくりと話し出した。

「お前たちだけじゃなく誰しもがこの森に迷い込んでおる。心に迷い事が無い者は森が帰り路を用意して素直に出してくれる。しかし、それ以外の者は森が路を閉ざすのじゃ。それか、その者が自ずから帰らず止まるのかもしれんがね・・」

魔法使いのおばあさんは思いに吹けながら紅茶を一口飲んだ。

「おばあさんは何で一人でこの家に住んでいるんですか?」

綾乃が入らぬお世話と思いながら聞いてみた。

「わしも迷い事があってなぁ・・。苺大福を餡子と皮を先に食べて苺を後の楽しみにして食べるか、一口で丸ごと食べるか、いつも迷っておったのじゃ。それで此処に迷い込み止まる事に自ら決めたのじゃ」

魔法使いのおばあさんはまた一口紅茶を飲んだ。

「はぁ・・なるほど・・」

綾乃は無理やり納得した。

「・・冗談じゃよ」

魔法使いのおばあさんは得意稀な顔になりぼそっと呟いた。

「なんじゃそりゃ!」

市松人形が飲んでいた紅茶を吐き出した。

「それでお前たちは迷い込んだお連れの者を探しに来たのかのぉ」

魔法使いのおばあさんは改めて強引に話を戻した。

「そうじゃないんですが・・、学校の仲間がお正月の間におかしくなって人が変わちゃったんです。それが此処に原因があるじゃないかと思って・・」

綾乃がしどろもどろで喋った。

「わしには分からんが・・、。此処に原因があれば何かあるはずじゃ!さぁ旅人よ!ボヤボヤせずに冒険の旅に出発なされい!」

そう言うと魔法使いのおばあさんは、そそくさと三人を家から追い出した。

「別に旅人でも冒険している訳でもないんですけどぉ」

家から追い出された綾乃がぽつんと言った。

「仕方がないわ。美味しい紅茶も頂いた事だし冒険しに行きましょ!」

黒木先輩がおっとりした口調で言った。三人は何処に向かうという訳でもなく歩いていると、遠くから聞き慣れた声が響いて来た。

「翠たちじゃない!なんで此処で迷ってんの!」

綾乃がびっくりして大声で呼んだ。

「おっ!綾乃ー!いい所に来たっー!手伝ってくれっー」

翠が大声で手を振り呼んでいる。綾乃は黒木先輩と市松人形を置いて急いで駆け寄った。そこでは沙織と由香も一緒に屈んで何かを引っこ抜こうとしていた。

「珍しくマンドラゴラの花を見つけたのよ!持って帰って研究課題にしようと思っているの!」

翠が飛び跳ねて嬉しそうに言った。

「今は駄目よ!準備してから引っ張り出さなくちゃ・・」

綾乃が咄嗟に止めに入ったが沙織と由香が力一杯引っ張った。拍子に“それ”はスポンっと、勢いよく出て来た。

“ぎゃぁぁぁぁー---”

地響きがする程の大きな唸りごえとも悲鳴とも言えぬ、全身を震わすどよめきが起こった。

「言わぬこっちゃない!だから言ったのにぃぃー-!」

綾乃が思いっきり耳を塞いで叫んだが、それを上回る叫び声に掻き消され意識も記憶も掻き消されていった。


「綾乃・・なにやってんのよ・・」

意識が戻るとそこには沙織が立っていた。

「なんだか・・随分楽しそうねぇ~」

沙織は自分を見つめ何だか冷たい視線だ。我に返ると机の上に足を広げ立ち、夢中になっていたボードゲームのカードを握り締めご満悦状態のポーズをしていた。

「あら・・、私。何しているのかしら・・」

綾乃は素面に返った。

「そんなくだらないゲームにのめり込むのもいいけど勉強しなさい」

沙織の口からは絶対出ない言葉が飛び出した。

「沙織・・、熱はない・・」

綾乃は心配そうに言った。

「昔から一年の計は元旦にあり!時は金なり!って言うでしょ。今からちゃんとしておかなきゃろくな人生送れないわよ!」

やっぱり沙織はお熱があるようだ。

「やっぱりどうなっているのよぉー!」

綾乃の頭の中は混乱して訳が分からなくなった。

「しっかりするのよ綾乃さん!」

扉を叩き壊す勢いで勢いよく開け、黒木先輩と市松人形が入ってきた。

「あらっ黒木先輩!」

髪を乱した綾乃が振り向いた。

「みんな別人に入れ替わっているの!それはあなたが知っている沙織さんじゃないわ!」

黒木先輩は全てお見通しの様に確信を突いて言い切った。

「それじゃクラスメイトの皆も別の人なの?!」

綾乃が周りを見渡した。そのとき何所とはなく蝉の鳴き声が聞こえてきた。

「早くこの耳栓をして耳を塞ぎなさい!」

市松人形が特殊な耳栓を渡してきた。三人は耳を塞ぎ周りの様子を伺った。すると沙織を始めボードゲームをしていたクラスメイトの全員が天井を見上げ棒立ちになっている。どうやらこのうるさく鳴き響く蝉の鳴き声は教室のスピーカーから流れてきているらしい。

「この蝉も何か関係があるみたいね」

黒木先輩が綾乃に問い掛けた。

「きこえませーんっ!なに言ってるんですかぁー!」

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