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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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また一年が始まる・・ 第一幕・年の初めのためしとて

「あけましておめでとう!」

今年の抱負は百冊以上本を読むという栗須川綾乃が、大きな声で前を歩くオカ研メンバーに走り寄りながら元気に声を掛けた。今日は寒いというより冷たい空気が、乾燥した肌に痛みを感じさせる新学期の始業式の朝の通学中の出来事である。

「おめでとう・・」

今年の抱負は黒魔術の習得という鷹塚翠が、活きの無い顔で言った。

「どうしちゃったの?浮かない顔して!」

綾乃は逆に声を張り上げて言った。

「綾乃ちゃんは今年も元気ねぇ・・」

今年の抱負は小佐井先輩に胸の内を告白という飾磨由香が、元気の無い気だるさで言ってきた。

「綾乃ちゃん・・!」

言われた事も無いちゃん付けに、綾乃は今日の寒さより一層寒気を覚えた。

「憂鬱だわ、今日からまた学校が始まるんだよ・・」

今年の抱負はネッシーと一緒に泳ぐという早乙女沙織が、虚ろな目線で言った。

「新年早々みんな元気ないじゃん!」

綾乃はゾンビの様になっている皆の様子に驚いた。

「今日からまた、新しい一年の活動開始だよ!元気出して!」

綾乃は皆の体を一人ずつ揺さぶり元気付けた。

「新しい年が始まってぇ~、また春が来てぇ~、夏が来てぇ~、冬が来るでしょ・・いつもと同じ繰り返しじゃん・・」

翠がうんざりした顔で言った。

「私の好きな秋の季節が抜けているわよ!そんなの常識でしょ!」

綾乃は当たり前の事にうんざりした。

「私達の活動より学問が大事だわ・・」

沙織が、らしく無い言葉を言った。

「その場しのぎで生きている沙織しては、有るまじき発言ね!」

綾乃が背筋に悪寒を走らせながら、“しっかりしてよぉ”って顔になった。

「だるいけど・・学校に行きましょう・・足が重いわ・・」

由香がより一層いつもより気だるい声で言った。

「みんなどうしちゃったのよぉー!」

綾乃が大きな声で叫んでいるのを尻目に三人はとぼとぼと歩いて行った。訳も分からずぼんやりと三人の姿が遠くなるまで立ち尽くしていたが、やがて我に返り周りを見渡すと、同じく学校へ向かう他の生徒達も魂が抜けた様にふらふらと歩いている。

「これはお正月の間に何かあったに違いないわ!」

綾乃は確信した様にゾンビのごとく歩く生徒達を擦り抜け、学校へ向かって走って行った。学校へ着くや否や自分たちのアジト・・、部室へ駆け込んだ。しかし、いつもなら一時限目の授業が始まるまでたむろしているはずの仲間の姿が無い。綾乃は新年一発目からの三人の不審な行動に嫌な予感を感じた。

「綾乃ちゃんもそう思う・・」

「綾乃ちゃん・・!」

綾乃は鳥肌を立てながら、またもや自分をちゃん付けをする声の方向を見た。そこには机の角から覗いている市松人形の顔があった。

「えっ!」

綾乃はゾクッと身の毛がよだち、より一層鳥肌を立てた。

「お久しぶり私よ」

次に顔を覗かしたのは、今年の抱負はいつもと変わらずという黒木美紗先輩だった。

「みんな変わっちゃったわね」

黒木先輩が持つ市松人形が喋った。

「先輩もそう思いますよね!これは何かあったんですよ!」

綾乃は黒木先輩に向かって言った。

「私が言ったのよ!こっち向いて喋りなさい!それにしても綾乃ちゃん。寂しそう・・」

市松人形が悲しそうな表情を浮かべ喋っている。

「は・・、はいぃぃ」

綾乃の鳥肌は止まらず、市松人形に向かい何とも言えない表情になった。

「あなたは何ともないの?」

今度は黒木先輩が喋りかけてきた。

「別に異常は無いです。たぶんお正月の間に何か途轍もない事が皆に起こったんだと思います」

綾乃は緊張しながら市松人形に喋りかけている。

「あなたはお正月、何をしていたの?」

また黒木先輩が喋った。

「私は家族と一緒に大晦日から外国旅行に出掛けていました」

綾乃はまだ市松人形に喋りかけている。

「優雅な暮らしよねぇ」

今度こそ市松人形が喋ってきた。

「お正月は南国で過ごそうと、執事の琴原も連れて行ったもので・・」

綾乃は黒木先輩に目を合わせ言った。

「私が喋っているって言っているでしょ!」

市松人形が血相を変えて言ってきた。

「そうよねぇ・・あの三人だけなら未だしも全校生徒がゾンビになっちゃっているのが気掛かりね・・冬休みの間にああなっちゃたんじゃないの?」

黒木先輩が頭を傾げた。

「去年の冬休みの間は一緒に雪男を探しに、吹雪のなか裏山に昇ってたから皆は変にはなっていませんでした」

綾乃は焦って、もうどっちに喋っていいのか分からなくなってきた。

「それじゃやっぱりお正月かぁ?」

先輩か人形かどちらかが喋った。

「それではやはり、お正月に何かあったのであろうなぁ」

今度は映写機が動き出しお狐様が現れた。

「おっと!お狐様。明けましておめでとうございます」

今回は喋っている矛先がお狐様だけだった為、ほっと綾乃は安心した。

「皆が揃ってお正月に行く場所といえば何処じゃ?」

お狐様が質問をしてきた。

「なぞなぞですね!それは~温泉!」

綾乃は張り切って答えた。

「なぞなぞでもなんでもなかろう!ただ自分が行きたいだけだろう!」

後ろから市松人形の野次が飛んで来た。

「正解は言わずと知れた初詣に行く神社じゃ。しかし神社ではそんな不吉な事は決して起こらぬ!」

お狐様は見抜いている様に言った。

「それじゃ神社に行くまでか、その帰りね」

黒木先輩が読みを固めてきた。

「何が起こったのか?それは手っ取り早く阿奴らに聞いた方が早かろう」

お狐様さえも何が起こったのか分からないようだ。

「みんな何だかやる気が無さそうだし素直に教えてくれるでしょうか?」

綾乃は不安がっている。

「これは正しく一大事よ!原因を探っていきましょう」

黒木先輩が掛け声を上げた。

「そうよ三人で調べましょう!」

綾乃も元気に言った。

「もしかして・・私の事忘れているわよね!」

市松人形が不貞腐れた顔を出した。

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