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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クリスマスはあなたの傍で、・第五幕・迷走!メビウスリング

町はずれのブランコと砂場だけがある、ほんのちょっとだけの小さな公園で子供の頃の松子、竹子、梅子と陽子がたまっていた。

「さぁ、何して遊びましょうか?」

幼き竹子が皆に聞いている。

「じゃ、かくれんぼでもしましょう。陽子が鬼ね」

幼き松子が真っ先に言い出した。

「私はおはじきがしたいわ」

幼き陽子が反発して色鮮やかなおはじきを出した。

「それじゃ、鬼ごっこにしましょう。陽子が鬼ね」

幼き松子は意地を張っている。

「ゴム飛びでもいいわよ」

幼き陽子は言葉を付きかえしてカラフルな色の長いゴムを出した。

「ここは仲を取り持って砂遊びをしましょうよ」

幼き梅子が仲裁役に入った。そして松子、竹子、梅子の三人は陽子を残し砂場に走って行った。

「先っきから見ていると二人かなり相性が悪いわねぇ」

草むらに隠れ見ている輔清の由香が松子鼠に言った。

「そうよ!なぜか陽子の顔を見ていると虫唾が走るのよ!」

松子鼠が吐き捨てた口調で言った。

「私達も松子ほどじゃないけど陽子だけは苦手なのよ」

竹子鼠、梅子鼠も同意見だ。

「まるでイジメじゃない!そんなの駄目よ!」

輔清の由香が三匹に叱った。

「だけど仕方が無いけど人間がいる限りイジメと差別は無くならないわ」

梅子鼠が悲しい目で言ってきた。

「そう言えば、ずっと一緒にいる陽子って子は同じ幼馴染みじゃないの?」

輔清の由香が牙を剥けよだれを垂らし振り向いて聞いてきた。

「そんな恐い顔してこっちを向かないでよ!知らないわ気付いたら傍にいたのよ」

松子鼠が体を震わせながら言った。

「そうなの・・。まぁいいわ、ちょうどいい感じで幼いあなた達だけが砂場で遊んでいるわ。子供のうちに性格を変えたかったんでしょ。今がチャンスよ!行ってらっしゃい!」

輔清の由香は何かを感じ取ったのか納得して三匹を後押しした。

「分かった行って来るわ!」

「応援しててね!」

「今までありがとう!」

松子、竹子、梅子の三匹の鼠たちは・・、

「ハムスターだと言っているでしょ!!」

松子鼠が諄い様に言ってきたので・・、三匹のハムスターたちは子供の頃の自分達に素早く駆け寄って行き、性格を変えようと未来へと旅立って行った。

「これで三匹も居なくなって私の狩りの本能も治まったわ。これであの三人の未来もいいように変わってくれればいいんだけど・・」

ほっとしたのか輔清の由香はようやく愛くるしい穏やかな顔に戻った。何気に視線を向けると、独りブランコに乗る幼き自分の姿があった。見た途端にすぐさま反射的に駆け出していった。

「ニャオォォーン」

「今さっきの猫ちゃん」

幼き由香は足でブランコを揺らしながら輔清の由香を抱きかかえた。

「そう、あの頃の私はいつも独りぼっちで寂しかったわ。こんな性格だから友達をつくる事も出来なかったのよ・・。だけどあの三人の様に私は悔いはしないわ。あの頃の性格の私がいて、現在いまの自分がいるんだから。そして仲の良いあの三人に出会ったんですもの!」

輔清の由香は幼き由香の体に顔を埋めながら翠、沙織、綾乃の顔を思い浮かべた。

「そうだ!今日からお前は私の友達よ!名前は・・、よしっ!輔清よ!」

幼き由香は輔清という名前に決めつけ引っ張り込んだ。

「懐かしいわぁ~ここから私との出会いが始まったのね。あら、あの三人もう戻って来ているわ。早いわねぇ~」

輔清の由香は幼き由香に抱かれながら、柔らかい体の首を捻じ曲げ砂場を覗き込んだ。松子、竹子、梅子は子供の頃の自分達と共に元気なくしゃがみ込んでいた。

「どうしたのよぉ~元気ないじゃない」

輔清の由香は抱かれていた幼き由香の胸を本能的に飛び出し三匹に駆け寄ってきた。

「猫だぁ~!猫だぁ~!」

幼き松子が騒ぎ出した。

「捕まえたぁ~」

幼き梅子が後ろから抱きかかえた。

「ニャーニャー」

輔清の由香が悲鳴をあげて三匹に助けを求めた。

「テレパシーを使って、何とか子供の頃の私達を説得させたとこまではよかったのよ・・」

輔清の由香の助けをよそ見に松子鼠が喋り出した。

「そしたら子供の松子が“私達をペットにする”って言い出したの」

梅子鼠は輔清の由香の悲鳴も聞く耳を持たない。

「そこまでは別によかったんだけど、気が付けば私立に進学した私達がいるところまで来たの」

竹子鼠が幼き自分達に弄ばれられる輔清の由香を眺めながら言った。

「そしたらまた!あの疫病神の陽子がいたのよ!それでまた言いがかりを付けてきたのよ!」

突然、松子鼠の声が裏返った。

「それで現在いまの学校に逆戻りよ!」

竹子鼠がガッカリきている。

「でも、私立に入った私達はそこでも愚痴っていたんだけどね・・」

梅子鼠は開き直った。

「これで説明が付いたわ!どれだけ表面的な性格を変えたところで、あなた達の根本的な優柔不断な性格は治らないのよ!」

幼き三人にかき回されている輔清の由香は四つ足をバタつかせながら騒いだ。

「だから、どんな未来になろうが知識と経験がない限り愚痴を言ってしまう自分の繰り返しなのよ!」

なんとか輔清の由香は体をひらりと交わした。

「私はこんな性格だけど嫌だとは思った事はないわ。過去の自分をどうこう言うより、これからの未来の自分をどうしていくかっ!て言うのが大切なのよ!」

そこには三人に弄ばれていた輔清の由香を抱きかかえる幼き由香の姿があった。

「この子!?どうして私達が喋っている事が分かるの!?」

松子鼠は驚きのあまり後ろ足で立ち上がった。その時・・、空中に時空の歪みの渦が巻き起こった。

「みんなあの渦巻の中に飛び込むのよ!」

輔清の由香が前足を出して三匹の鼠・・、ハムスターに言った。

「だけど・・、どうして・・」

松子鼠がたじろいでいる。

「野生本能が“飛び込め!”って言っているのよ!」

そう言って輔清の由香は幼き由香の体を飛び出し三匹をまた背中に乗せ、時空の渦の中に飛び込んで行った。


「こちらA部隊!敵の陣地はほとんど占領しました!」

ここは温泉地の銭湯のなか。翠たちは西園寺を敵にまわし銭湯・・戦闘・・を起こしている。

目標ターゲットはサウナに入った模様!次の攻撃に移れ!」

翠たちは体じゅう汗をたっぷり掻きながら楽しんでいる。

「もの影はするし、人の気配はするし、変な物音も聞こえるけど・・、どうせどれも気の所為ね。いまはこの贅沢を堪能しなくちゃ勿体ないわ」

西園寺はサウナのなかで気持ち良さそうに横になって寝ている。

「西園寺がサウナに入っている今のうちよ!沙織、準備は出来た?」

翠は映写機を持ってきた沙織に号令した。

「こちら準備完了!いつでもOKよ!」

沙織も合図した。

「こっちも準備万端よ!」

綾乃のサインを出した。

「あぁっー!気持ち良かったわぁ~。身体じゅうのストレスが出て行ったっ!てっ感じねぇ~」

西園寺が体を伸ばしながらサウナから出てきた。そこには今まで通り濃い湯気が立ち込んだお風呂場だったが、少し違うのは大入道が目の前を塞いでいたという事だけだった。

「キャァァーー」

恐る恐る目を上に上げていった西園寺が、その大入道と目が合った。

“ざっぶーーんーー!”

その時・・、波しぶきと一緒に浴場に何かが飛び込むドでかい音がした。

「なにっ!いまの音!みな状況を報告して!」

翠は慌てて連絡を送った。

「何かが浴槽に落ちたみたい!」

「私はそんな仕掛けしてないわよ!」

沙織も綾乃も慌てている。三人は現場に急行した。そこには目を回した西園寺が横たわっていた。

「思いっきりのぼせちゃったのね」

綾乃が手を合わせて拝んだ。

「さぞかし驚きが半端じゃなかったようね。今まで怖いのを我慢していたみたい」

沙織も憐れそうに眺めている。

「それより!今さっきの飛び込んだ様な音は何だったの!」

翠は西園寺の残骸には興味はない。

「うわぁー!ここはどこぉぉー!」

聞き覚えのある由香の気だるい声が大きな浴場に反響した。

「由香ぁー!おかえりなさいっ!あなた真っ裸でなにしてたのっ!」

同じ真っ裸の沙織が由香に飛び付いた。

「話せば長くなるからまた後で。お探しのお三人さんも一緒よ!」

由香の横には一緒に温泉に飛び込んだ同じく真っ裸の松子、竹子、梅子の現在いまの姿があった。

「あなた達を探していた陽子さんも来ているわよ」

沙織が由香とゆっくり足元から屈みながら温泉に浸かった。

「陽子・・」

松子が不機嫌な顔をした。

「あらっ、そう言えばどこに行ったのかしら?」

翠と綾乃が首を傾げた。

「私なら目の前にいるわよ!」

陽子の声が大きく響いたかと思えば大入道になった姿で現れた。

「えっ!映写機で大きく映し出されたのは、お狐様じゃなかったのっ!!」

沙織がまさかの顔になった。

「みんな一緒に私を邪魔者扱いして!悔しかったわ!」

陽子の顔が鬼の形相に変わり怒りのエネルギーが濃い湯気と共に立ち込めた。

「うわぁー!体が引き裂きそうよ!」

その場に居た全員が藻掻いた。

「邪気退散!!」

これまた盛大な声が喝を入れ、一面に広がる濃い湯気と怒りのエネルギーを吹き払った。

「おっ!待ってました!狐様ぁ~!」

翠の掛け声と共に現れたのは巨大化なされたお狐様だった。立ち込んでいた湯気がなくなると今までの陽子がバスタオル姿で倒れ込んでいた。

「この者は三人の性格に付け込み、心の中に入り込んだ天邪鬼よろ」

巨大化なされたお狐様が憐みの眼差しで言った。

「天邪鬼ぅ~!妖怪だったのっ!」

沙織が立ちあがり陽子を覗き込んだ。

「そもそも初っ端のお披露目から、私はうすうす怪しく思ってたのよ!だって思い出してもごらんなさいよ!開いた扉の隙間から顔が真横で覗いたのよ!」

翠は陽子の一番最初の真横になった顔の登場シーンを思い浮かべた。

「ホントかなぁ~?」

他の三人が一斉に声を上げた。

「この者は、そのお三方を羨ましく思ったのであろうな。しかし性格がひねくれた妖怪じゃから本能的に他人ひとの人生も歪めてしまったのじゃろう」

お狐様は気を失っている天邪鬼から憑りついた邪気を追い払った。

「それじゃ、ご丁寧な言葉使いは裏かえして言えば端から私達を馬鹿にした口調で喋っていたのね!」

沙織は目を見開いていつもは使わない舌を噛みそうなご丁寧口調をしていた自分を嘆いた。

「私達も・・、この妖怪もすべて性格がネックになっているわね・・」

松子、竹子、梅子は陽子に当たっていた事を後悔した。

「本能的に・・。だけど悪気があってやったわけじゃないのね・・」

由香はなんだか天邪鬼の気持ちが分かる気がした。

「人を鬼に変える様に嫉妬の心が妖怪までも鬼に変えてしまったのね」

綾乃が陽子という天邪鬼を憐みの目で見つめた。

「ところでお狐様。クイズの正解、結局温泉じゃなかったじゃない」

沙織が巨大化なされたお狐様を見上げて言った。

「何十年ぶりに温泉に癒されるものもいいものじゃのぉぉ」

ただ温泉に浸りかったお狐様だった。


それから帰って来てアジト・・、部室のなか。

「あれから三人はどうなちゃたのかしら」

綾乃が何時もの様にお茶会の準備をしている。

「陽子という名前の天邪鬼と一緒にご希望の学校に転入していったみたいよ」

翠がクッキーを口に銜えて言った。

「今度は仲良くして悔いのない人生を送れればいいのに」

沙織も一枚銜えて言った。

「翠も西園寺と仲良くすれば人生変わるかもよ」

由香が笑いながら気だるく言ってきた。

「そうなるくらいなら私はこのままで充分だわ!」

翠は音を立ててむさぼり食べた。

「もったいないわねぇ。ポロポロ落ちているわよ」

綾乃が翠の品の無い食べ方に文句を言った。

「世の中もったいない事は多いけど人生に無駄は無いわ。それはすべて経験という世界でただ一つの自分の宝物に変わるからよ!」

翠は口の中一杯にクッキーを頬張って力強く良い事を言った。

「自ずと道は開けるかぁ~。季節の移り変わりの様に人生メビウスリングねぇ~」

今度は沙織が哲学を語る様に言葉を被せた。

「おまたせぇ~。生クリームのデコレーションよぉ~」

綾乃が紅茶を配りケーキを机の真ん中に置いた。

「口が溶けちゃうほどパンチのある甘ったるいぃ~の大好きぃー!」

翠は我慢できない勢いの口調で言った。

「ご多分に洩れず!かく言う私も甘党でねぇ~」

沙織もよだれを垂らしている。

「ところで結局、何で真っ裸で時間を超えちゃったのかしら?」

由香がフォークを片手に気だるく聞いてきた。

「猫や鼠はそもそも裸だからじゃない?だけどそれは永遠に未解決よ。何はともあれメリークリスマス!」

翠の掛け声で四人のクリスマスパーティーは始まった。


想像して欲しい・・。例えば十年後の未来の自分が現在いまの自分の姿を見た時にどう思うだろうか・・?その時の未来の自分は現在いまの自分を見て情けなく思ったり、悔やんだりしてはいないだろうか?そんなあなたの傍にいる動物達や人の姿をした妖怪もきっとあなたの将来を応援している・・。



※今回のウィキペディアで検索してみよう!※

●モスキートーン

●猿の手

●バミューダトライアングル

●桃源郷

●大入道

●メビウスリング

●天邪鬼

●第九話・クリスマスはあなたの傍で、(全五幕)


●出演者


オカルト研究会メンバー

早乙女沙織、鷹塚翠、飾磨由香、栗須川綾乃


●ゲスト出演者


新入部員・お狐様

生徒会会長・西園寺公佳

陽子

松子、竹子、梅子



※この物語はオカルト研究会の四人組のドタバタコメディのフィクションであり実在の個人名、団体名、建物名、本のタイトルなど一切関係はございません。


次話は元旦。

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